ここでは演技のお話をさせていただきます。
世に出ている会話スキルを上げるノウハウコンテンツは、主に話し方がメインですが、私たち演劇の世界では、聞き方の方が重要です。
よく言われますよね。
コミュニケーションの上手い人は「聞き上手」ということ。
コミュニケーションは聞くだけで成立するのですが、この聞き方をあまり教えていたり、またそのノウハウも少ないですね。
ですので、今回、ちょっと変わったその聞き方の演技法を公開します。
名付けて
『聞いているだけなのに心が伝わる会話法』
とでも言うことにします(笑)
聞く時の姿勢であったり、目線であったりするのは、ビジネスコミュニケーションでも色々と教えているところはありますよね。
これはとても大事です。
ただ、その動き方は意図も見えやすいという弱点があります。慣れている相手でしたら型としてみてしまう場合が・・・
「聞いている時は人の目を見て聞くことを教わってきたんだな」と、話の内容よりも聞き慣れていない言われたとおりにしている聞き方をしていると感じて意図とは違う印象を持たれてることがあったりするのですね。
「本当に聞いてる?」
って感じの人、意外に多いですもんね(笑)
ですので、大抵の人が喜ぶテクニックをお教えします。
- 話の内容が分かっている時は、相手の目を見て、分かりますと念じながらゆっくり頷く。
- 話している内容に理解することに努めている時は目を逸らして一点を見つめ息を止める。
- 理解した時は、相手の目を見て口から息を吸う。(マスクをしている場合は、これプラス状態を正すようにしてそらすと、尚良い)
- 理解できない時は、笑顔を作って息を口から吸い、別の切り口で説明してもらうようにお願いする。
他にも、手の動きや上半身の動かし方など色々あるのですが、上記4つは思っている以上に実際にやってみると難しいですよ(笑)
これを簡単に解説すると・・・
1.は丁寧な聞き方の印象を与えます。そして、このゆっくりと頷く行為は、餅つきの『つき手』と『合いの手』で相手の話し手が『杵をもって餅をついているつき手』、聞いている自分は『お餅をついている間にこねる合いの手』になるわけです。ここで即興のチークワークを育てるのです。
2.は真剣に聞いているという表現になっています。誰でも自分の言うことを真剣に聞く人は嬉しくなるものです。それと息を止めて聞くと不思議なことに頭にその内容が入りやすいという事もあります。身体から自然な思考回路に導かせる方法です。
3.理解した時に大きなリアクションをすると、相手は分かってくれたという達成感を感じます。これは特にやられると嬉しいのです。
4.これは、一見ネガティブに見えるかも知れませんが、何回も説明していただけると、御礼を言う回数が当然増えます。相手はいわれのない御礼は受けられませんが、何回も助けたとなれば受けとってくれるものです。別名『手を焼く人ほどかわいい戦法』
このように、こういう説明をすると凄く戦力的な感じの印象に持たれるかもしれませんが、会話というのは、内容伝達だけではなく、人との人間関係を構築する大切な機会もであると思うのです。
その機会を大切にするのであれば、相手の喜ぶテクニックは絶対に覚えておいた方が良いですよね。
それとこのテクニックは、実は全部、自分のためになっているという点もお話します。
1.外からの事象や人物を受け入れる姿勢になって学んでいるということ
2.相手のために早く理解するための理解できる状態を作っているということ
3.相手の好意を大きくありがとうという気持ちで迎え入れているということ
4.相手の熱意を感じ取ることが出来て、自分もこの人の役に立てるようなことがしたいと思えること
これらの方法は全て、自分主導のところからスタートしているので、調和のとれた関係性が構築されます。決して相手を変えようという意図ではないのです。自分を変えて相手を感動させる、つまりこれがギフトになるのです。
演劇のテクニックは人の心を動かし客席と舞台が一つになる空間を築き上げていきます。
みんなが一つになる瞬間です。
この時の調和が何よりも幸せなひととき。
これは普段の人間関係でも築き上げることが出来ます。
素晴らしい人との出会いを大切に。
どうも有り難うございました。
※次回は自分から話しかけて楽しい人間関係を作ろうという話をします。
さいとうつかさ
劇団ブルア 代表
劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。