2.感情は湧き上がるもので出すものではない

演劇初心者の方はたいていこのように感情を出す演技をしてしまう傾向があります。「私は怒ってるんだぞ!」「私は悲しいんだぞ!」というようなお芝居。見る側からすれば、わざとらしく見えてしまうので、これは避けたいところですよね。例えば、「私は怒ってるんだぞ」というように怒っている人って普段お目にかかれないですよね(笑)「多分、怒ってるんだろうな」とか「だんだん腹立ててるよね」などと自然と湧き上がっている感覚が見て取れるかと思います。

怒って怒鳴るというのもありますが、これは爆発させるまでは怒りなのですが本来怒鳴るという行為は、「恫喝させる」であったり「自分の心を隠すため」といった相手との駆引きによる手段なので感情と一緒にしてはいけません。それに駆引きが出来るということは結構冷静に相手の出方を見てますので、相手の出方次第で、怒りを増幅させたり、それか駆引きとしてたたみかけたりするものなのです。

また悲しい表現も、現実では涙を堪えて耐えるている方が自然なのですが、舞台になると結構泣こうとしている人が多いのですね。

このように感情を作った表現をすると観客は、「私は悲しいからこういう表現してるんだよ」となんだか説明っぽくて、しかも押し付けられているような感覚になり、その結果、受け入れがたい表現になってしまうのですよね。ですので、感情は作るのではなく湧き上がらせるということが求められるのです。

では、感情を湧き上がらせるにはどうすれば良いのかというと、それは、

「感情を誘発させる技術」を使う

ということです。感情を誘発させる技術を使うと自然と湧き上がることになるので、とっても自然な表現となります。

この技術習得は実際に練習しないと得られないのですが簡単に説明すると、これも『息』がポイントなのです。人間の感情の前に、必ずあることは「驚く」という感情が誘発される前のポイントがあります。人は驚く場合、息を吸います。その息の吸い方で、色んな感情を誘発させる技術を養うのです。

そしてこの技術のもう一つモノ凄いところがありまして、それは、自分にだけに効果があるではなく、感情を誘発させた表現を見た人全員にも誘発されるという素晴らしいことが起きるのです。

人間は無意識に相手の動機を感じ取っています。本人は気がついていませんが、感覚として快不快を感じ取っているのです。感情を誘発させる演技は役の人物の心情から動いている動機なので、見ている人の心に無意識に自然と入ってくる。

これはいわば、

人間の本能部分を動かせる技術

でもあるというわけです。

感情を誘発させた相手のセリフは自然と心の中に入りますので、聞こうとする意識がなくても自然に聞けることが出来るのです。聞く芝居をしなくても良いという訳です。これでもうお分かりなられたかと思いますが、演出のよく言われる「セリフをもっと聞きなさい」というダメ出しは、実は聞く側に問題があるわけでもないということなのです。話す側も、感情を誘発させたものでなければ、セリフはセリフとして段取りめいたものにしか感じ取れないのです。それを汲み取ることでバランスは崩れるので、ここは演出の適切なご指摘が求められるのです。

感情を誘発させる技術は、

相手の心にも無意識に響かせる技術なのです

演技者としては是非覚えておきたい技術ですよね。今の演劇は、話し方の表現スキルで心情を表そうとする傾向があります。本当は、セリフよりも間の方が重要で、間を生かすためには相手のセリフをどのように聞き感情を誘発させるかという方がよっぽど大事なのです。また、観る人の心を動かせるのは、お客様とのコミュニケーションから考えたものでなければならず、「お客様を味方につける方法」を身につける意識を持たなければいけません。

余計なものを足すのではなく、

台詞を棒読みで勝負する

くらいの気持ちで臨むこと。これが真の伝わる演技なのです。ですから、『思えば伝わる』という究極の演技こそが、お客さんとの共感を得られる最高の瞬間だということを多くの若者に知っていただければと願います。そうすれば役者って凄いことしているんだと分かっていただけるのかと思います。

またこの方法は普段の会話でも十分に使えます。相手の本能に届けるテクニック。常に相手を尊重してさえいれば、相手も必ずあなたを尊重し、共感を得られる仲になります。人は共感を多く得られるほど幸せになります。ですので、このような取り組みを普段から心がけてしていただけると俳優の技術が色々なところで役立つことでしょう。

もしこの方法にご関心ありましたらコメントやTwitter等でお問合せ下さい。

最後までご覧くださいましてありがとうございます。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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