今回は今の演劇についてお話しさせていただきたく思います。
とっても私の知っている狭い話かもしれませんが…(笑)
実は私、演劇の世界にプロとアマがあるいうのは少し違和感があります。いや、そういう区別はあっても良いとは思います。あっても良いんですけど、アマチュアを謳っている人は、お金を頂けるほどのクオリティはあるのかな?という素朴な疑問があります。
すみません。この疑問から今回、今の演劇について、自分なりに語らせていただこうと思っております。
私は7年前に俳優の技術向上を図りたいと勉強会を作りました。まだまだ、私未熟で若輩者ではありますが、プロの俳優の経験を多くの後進の俳優の方々に知ってもらうことと、自らも鍛錬しようとするという目的で、プロ、アマの垣根を取っ払って始めたのが切欠でした。
当時の勉強会は大阪からスタートして神戸、そして現在は西宮でやっております。大阪から姫路の劇団の方々、芸能事務所の俳優さん方が集まって、ただ演技の練習だけをしていました。
練習場所をお借りしているところからよく聞かれるのは、『この団体で公演されないんですか?』というご質問。私はその都度、
『俳優の演技向上を目的としてる団体ですから』(キリッ!)
と応えてました。中には、『それだけの目的で、よく人が集まりますね』と言われたこともありました(苦笑)そうするとやがて、
『自分たちの技術の向上を試す機会はやっぱり必要じゃない』
『公演を打つという目的で練習すればモチベーションも上がるだろうし』
と、このような意見が外からではなく内からも出てくるようになったのです。人数が増えていくにつれて、そういう意見が多くなりましたので、
『公演』という形ではなくて『発表会』でするならば…
という条件で神戸の劇場で開催をすることにしました。料金は無料。ですので費用は出演者と勉強会で負担しました。来ていただいたお客様にお足を運んでいただいただけでも有難いという思いでやりました。
その発表会…
殊の外好評で、お客様からも「料金を取ってもいいレベル」だったので良いお芝居が見られて得したいう評判もいただきました。小屋主の方にも
「どうして、これタダでしたの?お金いただけるレベルだと思うけどな」
とお褒めの言葉を頂きました。周りの人からすれば私の執った行動は堅物の変固親父に見えたことでしょう(笑) しかし、私は、それでも発表会で良かったと思っています(笑)
理由は一つ。
自分たちの課題を実際にやってみてそれをしっかりと披露できたのかというところにあったからです。つまり、その判断を観て下さったお客さんから教わることが真の目的だったのです。教わっているのにお金まで戴くというのはおかしいという理屈でもありますね。お金を頂くプロの俳優であるならば、
『自分の演技で、お客さんがどう感じるかまで責任を持つ』
ところにまで意識がいっているはず。その意識では未だ臨めていない状態なのですね。つまり、
『自分の演技でお客さんがどう感じるのかを見る段階ではお金を貰ってはいけない』
ということが言いたかったのです。見る人によって感じ方が違うから、そこに責任は持てませんというのは、プロとしては許されないのです。
それは、どんな商売をされている方もそうあるはずです。料理屋さんが人の味覚はそれぞれですから、美味しいと思ってもらえるところにまで責任は持てないと言っているようなものです(笑) 私は…「味に自信あり」というお店に行きたいです(笑)
演技は台本を読んで感情のまま演じるということではありません。
それは演技ではなくただ単に演じているだけなのです。
だから『伝わる演技』を約一年間お教えして、演技は感情のままにするのではなく、極めて冷静にすることを学んだと思うのです。
・台本を読むには技術がいる。
・体をこのように動かせば、こういう風に見ている人は感じていただける。
・台詞は自分の動機を隠すものでもあるので、お客さんに裏腹として想像の余地が生まれると関心を寄せて見ていただける。
・こうしてあげた方が相手の俳優の演技がしやすくなる。
・みんなで芝居を作っていることを常に感じて役割を終えたら気持ちのバトンタッチをする。
こういった技術をたった一年間でチャレンジしてみたのです。その言われた通りの技術を俳優陣が全部出来ましたかと言われたら、それは絶対に無理なのです。
プロの演技はそう簡単には出来ないもの
これが分かっただけでも成果なのですね。俳優がここまで考えて芝居をしているのかと分かっただけでも進歩なのです。それだけ、俳優は凄い仕事をしているのだと分かって頂けることがこの勉強会の目的でもあったのです。これが分かると、
日々の練習は絶対に必要
と感じるはずなのです。またこの発表会をして、おそらく出演者の方々が大事なことを知ったことと思います。それを次のページでお話しさせていただきます。