私もそんなに偉そうなことを言える立場ではございませんが……。
先生方から教わった技術を今、私自身が後輩さんたちにお教えしています。
勿論、私の覚えた技術もどこまで本物なのかは分かりませんが、一応はこれで通用している部分もあり、その技術を指導している次第でございます。
ただ、技術を教える前に、高い意識でもって学ぶことが何よりも大切で、演技指導する上で、いつもお伝えしているところであります。
意識が高くないと、何故いけないのか?……
その答えはとても簡単で、
自分が必要だと思うものとそうでないものを教わる人が勝手に取捨選択してはいけない
からなのですね。
教わる人間が、今教えてもらってることは、それほど大事だとは思えないと自分が思ってしまうと、その内容を習得することはまず難しいでしょう。
そして、これが最も今回申し上げたいことなのですが、成功の種は自分の目の向けたくないところにあるもので、実は、自分が大切でないと思えるような内容こそが、成長を促進させる鍵になることが本当に多いのですね。教えてもらったことを選り好みをして学ぶ人は、直接的な展望で習得を目指しているので、ピンポイントでは習得できたかのように思われるのですが、その後はどうも応用が効かずに結局は何回も何回も同じ内容のことを指摘され教わる羽目になったりすることが私の今までの経験上、本当に多いのです。
どうしてこういうことが起きるのかというと、それも簡単なことで、技術を習得した時と、技術の習得する前とは視野の広さが全く違うからのなのです。
もっと簡単に言うと、少し考えれば分かるようなことでも視野が狭いために浅はかな考えで技術習得することになるからです。
少しきつい表現になってなってしまって申し訳ありませんが、何事も技術を習得するためには、今の考えでは通用しないという思いで臨まないと身体に沁み込まないのです。
練習していく内に発見することで、技術を習得していくのです。
ですので教わったことを選り好みしている時点で、この人分かってないな~って教える人は感じるのですね。
ですから、出来るだけ何でも吸収するぞ!っていう覚悟で習得することが演技習得の近道なのです。
この何でも吸収するぞっ!っていう気持ちは相当意識が高くなければ、自分の頭で紐づけることが出来ないので、ある意味大変ではありますが、常に自分の心の中で、素晴らしい自分の理想の俳優として自分がなっていることを思い浮かべていれば、行動は後からついてきます。
つまり、苦労せずとも、技術習得が普通の感覚になるのです。
ですから、意識を高く持ちなさいと後輩さんたちにお伝えしている訳です。
そしてここからは少し怖いことを言いますが、意識の高さは、普段の態度にも現れます。
そして、指導者はそういうところもしっかりと観ています。
というか、そういうところが指針になっていたりするのです。
指導者はただ単に、技術をお教えしているのではありません。意識の低い人に、高度な技術を教えても、身につかないことをよく知っています。
ですので、意識の低い人に対してオーダーは当然少なくなります。
この人ならここまではしてくれるだろうというギリギリのところでお教えしているのです。
教える人も勝負しているのですね。
このように、教わる人も戦っていますが、教える人も実は戦っているのです。
ですから、教わる人は自分の為にお相手して下さっているというリスペクトをしっかりと持つこと。
そうするためには、
常に頭の中で自分が素晴らしい俳優になっていることを思い描くこと
なのです。
そうすれば、教えてもらっている状態であっても、教えていただいてる人の気持ちが手に取るように分かってくる。
教える方の意図が分かれば、何故いま自分にこういうことを伝えているのだろうということも分かるんです。
だから今、大切なことを教わっているって毎回気がつけるんですよ。
嘘みたいな話ですが……(笑)
さいとうつかさ
劇団ブルア 代表
劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。さらに、自身のBlog『さいとうつかさの演技力会話力Blog』は1000万PVを超え、多くの方々から支持を得ております。