お金よりも大切な言葉が頂けた

私はプロの俳優であるならば、お客さんを味方につける技術は必要だと思っています。世の中は、平等ではありません。可愛がられる人と可愛がられない人は確実にいます(笑) だから、俳優は可愛がられなければお客さんを味方につけること出来ないので、可愛がられないと舞台上ではとても不利になるのです。

私が、日本各地の学校を回る公演をしていた時の話をさせて頂きます。子どもたちは演劇を心待ちにしていますというのであればとっても嬉しいことなのですが必ずしもそうとは限りません。観たいわけではないという状況もよくありました。

以前Twiitterでも書いた学校巡業公演の内容を。

この話、実は子供の心に響く話をしているのですね。

「子供であってもリスペクトをもって取り組む姿勢」が生徒さんの心に沁みたのだと思います。これは師匠贔屓の言い方にはなりますが、「懐の深さ」を表した会話術で、このことにより生徒さんたちを敵から味方に一気に引き寄せた荒業だと言えます(笑)

お客さんが味方に付くと、これほど心強いものはなく、間違いなく、舞台は成功します。劇場空間が一体になるカタルシスというような現象が起きて演劇のエネルギーの凄さを目の当たりにすることになったりするのです。終演後にロビーで見知らぬお客さまに握手を求められたり、日本であるのに、ハグされることもしばしばあるのです(笑)

こうして、みんなで舞台の空間を作り上げたという快感は心の安定をもたらし素直な気持ちで過ごすことが出来るので精神状態が最も良い状態だともいえます。こういう風に非現実的な体験をしていただき、共感を頂くことが私たちの仕事でとても崇高な行動だと思っているのですね。

私たち俳優はこのような崇高な仕事をしてるのだと勉強会の俳優陣に分かっていただきたかった

その一念がありました。

飽くまでも成果は勉強会に参加する俳優たちのためであってほしいと

だから、発表会として無料にしたわけなのです。公演ではなく発表会として無料にした訳は、

お客さんを味方についていただくため

だったのです。観てくれた方々は、皆さん感想を述べて下さいました。私たちの打ち上げにも参加されて、一人一人に感想を言う方もいらっしゃいました。劇場が一体になり、そのエネルギーから生まれたお客さんの惜しみのない賛辞に、俳優陣は感動していました。お客さんはお金を払っていないので、何かしてあげたいという気持ちになって色々と賛辞を送って下さったのです。これはお金ではないのですよね。気持ちなのですよね。

私たちは、お客さんに良い芝居を作って納得していただくのではなく、快経験をしていただける環境を提供して満足していただけることが真の目的だと思うのです。

私たちは、お金を頂かずして俳優の崇高な仕事を経験することが出来たのです。これほど、必要とされて、認めて下されば、さらなる技術の向上は自ずと始めることになるのはむしろ自然なことです。自然な方向で進めていけば、必ずお客さんからだけではなく、世間からもきっと『良』としていただけるのだと思います。自然な流れで私たちはこれからも活動したい。

お金を頂くこと。素敵な劇場で公演が出来ること。これらは当たり前ではありません。とっても有り難いことなのです。その意識がもう少しあれば、今の演劇はもっと社会に受け入れられたものになっているかと思えてなりません。

段々と、私たちの環境が狭められている。そういう観も否めませんが…

私たちがいるからこそ、社会が潤うんだと言えるような活動を目指したい。そのためには、公演ありきではなく必要とされているところで勝負しているかということを念頭に置きたい。今の演劇の現状をそのように感じております。このような主観、主張は、時に、何かの対象に批判しているように聞こえるかもしれませんが、これは何かを、または誰かを批判しようというものでは決してありません。この話に少しでも共感いただける人と共に仕事がしたい。その一念で記させていただきました。

いつもはこの場で世界観を語ることはないのですが、この場を通じて私たちと演劇活動を共に、または協力しあえる仲間が出来ればと思い、思い切って発信してみました。

最後までご覧くださいましてありがとうございます。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

LINEで送る
Pocket
このエントリーを Google ブックマーク に追加
LinkedIn にシェア

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です