自分の感情を誘発させるスイッチ

身体動作から感情を誘発させる演技法があるということを以前のブログでも何回かご紹介しています。その簡単な一例が『息』です。息を思いっきり吸うと情動が働きやすいのですが、実は今回の声でも自分の情動を働かせるスイッチになるのです。例えば、声を大きく高い声を出していると、段々と気分が上がってきます。逆に小さく低い声ですと気分が下がってきます。ですので、簡単に言うと、

小さくて低い声で普段話をしていると気分を下げる暗示をかけているような状態になる(笑)

ですので、大きな声で高い声で話した方が人生楽しいのですね(笑)

気分が下がると声が自動的に小さく低くなる

ので、感情表現をする時には、このように小さく低く話すようにすればそう見えるのです。身体動作から感情を誘発させるというのは、バイクを乗られる方ならばご存知だとは思うのですが、

押し掛け

という方法でエンジンを動かす方法と似ていて、セルスターターからエンジンを動かすのではなくて、低ギアに入れてクラッチを握り、エンジンのかかっていないバイクを押してある程度加速させ、クラッチを話すと駆動からエンジンをかけるというようなものでしょうか?それと似ているのですが、これはバイクを乗る人しか分からない説明ですね(笑)

要するに、情動は身体動作がトリガーになって働いていて、その感情が動くメカニズムを知っていれば、その動作を何回も模倣すれば、その感情が湧き起るような感覚が掴めるのですね。しかし、この感覚を掴む練習は結構根気がいるので、なかなかその技術の習得が難しく、このようなリアリティのある感情表現は実はとても高度な演技術なのです。ただ、よく説明している『息』と『声』は比較的直ぐに感覚が掴みやすいので、初心者の練習にはもってこいなのです。ですので、今回の説明で、自分の気分をコントロールしたいと思われるのでしたら、是非この練習をしてみては如何でしょうか。

では、早速声の出し方から説明します。まず、発声練習の時によく言われることですが、

胸式呼吸と腹式呼吸

というのがありまして、舞台では主に腹式呼吸で発声することが求められます。簡単に言うと腹式呼吸からの声の方が遠くまで声が届きやすいという利点があるからです。俗にいう「響く声」ですね。この響く声の持ち主は、相手にインパクトを与えやすいので、強印象を与える時は腹式呼吸でバンバン話せば、自信家に見えますし、自信家になります(笑)よく声の大きい人って言いますが、どちらかというと大きいというよりも響く人の方が相手に与える印象度が上がるように思います。

ですから、最強に良い印象度を与えるのは、小さな声でも響いている声が良かったりするのですね。

日本人のお好きな控えめでありつつも、安定、安心感、重厚感、力強さが全て備わっているから

この発声法で、高めの声を出すと、気分が上がり、低めの声を出すと気分が下がるのではなく、重要感が増すのです。これは、そう聞こえるというだけではなく、

自分もそのように感じてくる

ということが味噌なのです。これは本当に大切なことで、

自分がその気になるための必要アイテム

だと言えます。人間はその気になれば、その気の通りの人間になるのです。自信のある人のように振舞えば、自信のある人のようになると言いますが、これは小手先レベルではなかなか自信ある人には変わりません。ですが、情動レベルにまで落とし込むと、自信ある行動に段々とシフトするように思います。ですので、本当の自分のを見つけるためには、この身体動作から感情を誘発させる方法で、自分の情動をコントロールできると良いのかもしれませんね。

話は戻りますが、腹式呼吸での発声は胸式呼吸での発声よりも響くので、この腹式呼吸からの発声を学びましょう。

では、腹式呼吸での発声とはどのようなものか???ということですが、これも簡単に説明すると、普段の私たちの会話での発声は、胸式呼吸からによるもので、あまり大きな動作をせずとも話せるように省エネな話し方をしている訳です。ですから、普段の私たちの生活では横隔膜を縦に膨らませるような動かすような動作の大きい腹式呼吸で声を出すことはしません。腹式呼吸で声を出す時は、大きい声を出す時ぐらいだと思います。

それに、あまり大きな声を出さない人は、大きな声の出し方を忘れたかのように、胸式呼吸で大声を出そうとするから声が思いっきり出なくなるのです。そして無理をすると声帯を傷つけることにもなりかねないのですね。無理なく大きな声を出すのが基本ですので、そういう意味でも腹式呼吸は是非覚えておきたいところですね。

では、その腹式呼吸による発声の仕方を忘れた人に…

これ…何だか変な言い方ですよね。まるで、以前は知ってたかのように聞こえますね(笑) そうです。大昔に知っていたのです。無意識に!

それは、赤ちゃんの時なのです

赤ちゃんの泣き声は腹式呼吸によるものです。赤ちゃんの泣き声はよく響きますよね。赤ちゃんの時はみんなお腹から声を出していたのです。お腹から声を出すのはあれだけ小さな体でも大きな声を出している訳ですから、相当効率の良い声の出し方です。赤ちゃんはそれを生まれながらに持っていたのです(笑)

赤ちゃんは発声の天才(笑)

ということになります。先ほど効率のいい声の出し方と言いましたが、声の仕事をさせている方の共通点は、吐く時の息の少なさにあります。少ない息に声を乗せる技術があるのですね。この理屈が分かって練習すると習得が早いのですよ。ではどういう練習をすると効果的に響く声が手に入るかというと…とっても簡単です。今から申し上げることを意識するだけで良いのです。

大きく息を吸って普通の大きさで声を出します。一番分かりやすいのはハミングで声を出し続けることをしてみて下さい。そして『自分が声を出し続けるのが苦しい』と思った瞬間、声の調べが若干変わります。その声の変調した時からが腹式呼吸による発声に自動的になっているのです

この自動的に腹式呼吸による声の出し方になった時の身体の感覚を意識するだけで良いのです。そしてすぐに二回目、その体の感覚を意識して声を出すと驚くほど声が響くようになります。声を大きく出さなくても良いのです。声調べ程度でいける練習です。

※ただし、舞台で響く声を手に入れる場合は大きく声を出すことが求められますので専門家のもとで必ず練習して下さいね。(自己責任でお願いします)

これは私の講座の基礎練習でも毎回してますが、これで結構、すぐに響く声を得られるようになるのです。ただ、残念なことに、この響く声は常に練習をして身体にその形を覚え込ますことをしないと直ぐにその声の出した感覚は忘れます。だから赤ちゃんの時に出来ていたことも忘れてしまっているのです(笑) 如何でしょうか?これで響く声を是非マスターしてみて下さいね。

もう一度申し上げますが、響く声を手に入れると、相手だけではなく自分の心にもしっかりと響き、これを駆使すれば情動もある程度コントロールできるようになります。自分の心を動かす素敵アイテムなのです。自分の行動を「~しなければならない」としていませんか?それでは、自分の望む結果は得られません。自分の行動は常に「~したい」に限ります。したいからこそ、その先その先へと自動的に行くのですから。この「~したい」という心にさせるために、自分の情動をコントロールできれば「したい」ということが周りに増えていくのです。やる気とか、意志とか、そういう当てにならないものに頼らず、自分の身体動作から動かす情動コントロールで、

自分をいつもその気にさせてみませんか?

その気になれば、行動に迷いはなくなる。ただ、したいことをするのみです。自分に魔法をかけているようなものですね。

最後までご覧いただきましてありがとうございました。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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