観客の心を動かすためにどうすれば良いのでしょうか?

俳優である限りこれは至上命題だと思います。

世間では人の心は動かせないと言いますが、お芝居の世界ではそれは通用しません。

人の心を動かさなければお金を頂いてはいけない

ですから、人の心を動かす演技術を学びたいところです。

しかしながら、昨今の演劇事情を見ると、感情を表現すれば演技は出来るという帰来があり、

お客様に伝えようとする表現が多いように思います。

つまり俳優の心構えである「伝わる演技」、

自分の表現によってお客様がどうお感じなるかというところにまで責任を持つ

ということが出来ていないように思えるのです。

ということで、問題提起した形になりましたが、今回は知って得する「伝わる演技」のお話をさせて頂きます。

伝わる演技とはどういうものか?

「伝える演技」と「伝わる演技」

あなたならどちらの演技を習得したいですか?

答えは簡単ですよね。「伝わる演技」の方が絶対に良いと思いますよね(笑)

「伝える演技」とは演技者が演じることで「伝えた」というだけであって、お客様に伝わったかどうかまでは考えていませんよね。

一方、「伝わる演技」というのは、演技者が演じることで「伝え」、お客様にどのように「伝わったか」までを考えているということです。

つまり、これを定義すると、

「伝える演技」というのは演技ではない

と言えます(笑)

つまり、演じているだけなのです。

演じるだけであれば、・・・誰でもできますね(笑)

つまり、感情を表現するにとどまる演技は演技とは言えず、ただ単に演じているだけで、もしかしたらお金を払って観る価値のないものになっているのかもしれないのです。

とっても厳しいことを申し上げて大変恐縮ですが、そのように考えております。

つまり「伝える演技」が蔓延ると、供給側が需要側のニーズに応えていない図が出来上がってしまうのです。

これは商売であれば勿論成立はしません。

世間ではどのように見られているかよく分かってはおりませんが、私個人の意見ですと、演劇は

芝居したい人 > 芝居観たい人

の印象がありますので、どうも現状の演劇は需給が成り立っていないと感じるのです。

勿論、素敵な作品を作ってらっしゃるところもあるのですが、先ほども申し上げたように、感情を表現すれば成立するような演劇が多いことを考えるとやはりここが問題なのかなと言わざるを得ません。

特に「伝える演劇」は、「私は演じてます!」というのが色濃く出るので、そういうのを見ると「わ~、お芝居してるな~」と逆に冷めてしまい、純粋に作品の世界に入り込めないのはどうしても否めません。

俳優は作品の中にお客様を誘うのが仕事ですから、そのためには「伝わる演技」、つまり本当の演技術を知る必要があるのです。

感情を表現しそれを伝えるだけでは演技とは言えない。
自分の表現がどのように伝わるかまで考えられたものが演技となる。

この凄く当たり前のことのようですが、これが出来ていないように思えるのです。

ですから、まず、このような演技に対しての誤解を解くために、

「伝わる演技術」を知る必要があるという訳なのです。

ここからは技術的な話になりますが、これは普段のコミュニケーションにも生かせることですので、是非最後までお付き合い下さい。

まず、演技表現は大きく二つに分けられます。

台詞表現と動作表現

こうして分けるのは説明がしやすいから分けているだけなのですが、

「伝わる表現」はこの二つの内、どちらがそれにあたるかというと

動作表現の方になります。

これは理由がとっても簡単です。

台詞表現は、セリフを話した時にその内容をお客様が聞くと、その聞いた通りのことを理解し判断できるのですが、

動作表現は、いくら正確に表現をしたとしてもお客様がそれを見て、理解は出来ても判断までは出来ないのです。

つまり、動作の場合は、どれだけ分かりやすい表現になっていたとしても、

「きっと、そういうことが言いたいんだろうな…」

と理解はできるけど・・・、判断までには・・・至らないのです。

つまり、動作による表現はどこまでいってもお客様が判断に至らないので、

お客様は自ら判断するためにたくさんの情報を手に入れようとする

つまり、お客様自身が能動的にお芝居の展開を見るようになるのです。

面白いでしょ(笑)

つまり(つまりが多くてすみません)、伝わる表現というのは、お客様が見ようと能動的になっているから伝わりやすくなっているということが言えるのです。

もう一つ、面白いことを言うと、

お客様は一度物事を判断してしまうと、その判断した時点から後は、しっかりと話は聞けなくなるのです。聞けなくなるばかりか、その後の話は、「早くこの話終わらないかな・・・」という、待ち時間となってしまうのです。

これがお客様にお芝居を長く感じさせる原因になっているのですよ。

あっという間のお芝居というのは、簡単に言うと、話の展開を常に予想してもらうために、演技一つ一つに想像の余地を入れて、お客様に物語の意図を汲み取っていただくことをしてもらうのです。

「ちょっと待って!今なんて言ったの?・・・そうか、そういうことか。え!待って待って!…今のはどうなったの?え?どうしてそうなったの…?ああ!なるほど」という感じに(笑)

展開が速くてお客様がギリギリ追いつく感じの方が「あっという間の2時間」となるわけですね(笑)

このお客様の行動は、とてもクリエイティブに物語の情報を取っていますから集中し充実しているのですね。しかもそれが面白いのですね。

このように、お客様に想像していただける表現になることが「伝わる演技」となるわけです。

さて実際に、どうすれば伝わる表現になるのか、普段の会話でも使える動作表現をご紹介します。

人の話を聞いて理解した時に、大きく息を吸ってその後、大きく頷いてみて下さい。

そうすると、話し手は自分の話を理解してくれたと大満足になるでしょう。これは、相手へのホスピタリティです。

これだけで聞き上手になります(笑)

よく、リアクションの大きい人がいますよね?

それは、一つ一つの感情が大きく現れているのですが、あれが「オーバーでわざとらしいという人」と「そういう人なんだなと許せる人」と二通りあるのですが、その違いは、

お相手の話に如何に驚いているか?の差なのです。

人間は情動が働く前に「驚く」という動作があります。喜怒哀楽、全てにの情動の前に驚くという動作があるのです。

そして人間、驚く時は息を吸うという無意識の動作をします。そして、この動作が大きければ大きいほど、情動は働きやすくなるのです。

ここで、オーバーではなく大きな感情を出したいのであれば、この無意識に起こす『息を吸う』という動作を意識的に大きく動作すると驚く効果が発揮されます。

つまり、この大きく息を吸うという身体動作が感情を誘発させるトリガーとなり、自分が思っている以上の感情が表れるのです。

これを私たちは、「身体動作で感情を誘発させる演技法」と言います。

これは非常に高度な演技術で、自分の感覚にまで落とし込む作業が必要なので、反復練習が伴います。

しかし、この息は比較的直ぐに感情を誘発させるトリガー動作になるので、是非是非お試し下さいね。

ビックリするくらい、相手は喜んでいただけますよ。そして、自分もびっくりしますよ(笑)

「こんな感情が出てきたわ!」って(笑)

一方、オーバーなリアクションをする人は、このトリガーで動いたものではないから、感情が動かないのです。

「感情が動いていないから、無理に動かそうとする」

そうすると、その「動かそうとする動機」が無意識に相手に見えてしまい、それがオーバーに感じてしまう訳なのです。

奥が深いでしょ(笑)

人間って感覚が鋭くなると、相手の動機が手に取るように分かるのです。ですからこの感覚を常に磨く練習が俳優には必要ですね。

よく、相手の気持ちが見えて怖いという人がいますが、それはそれを自分の強みとして考えていないからです。

欠点は、考えようによって個性になる。つまり、これを自分の長所として考える方が良いのです。

相手の動機が見えると、コミュニケーションは後出しジャンケンになります。

どういう事かというと、

相手が何を出すのかが分かれば、コミュニケーションをコントロールすることが出来るからです。

そして、大事なことはですね。

相手の出す手が分かっているなら、それに負けてあげることなのです。

わざと負けるなんて…と思われるかもしれませんが、

花を持たせてあげることをしてあげれば、相手もいつか自分に花を持たせてくれるようになるのです。

こういう関係が作られると、とっても高度な人間関係が構築されます。

相手の喜ぶことをしてあげることが自分の幸せになるのでしたら、これほど素晴らしいことはないのではと私は思っています。

人間は感情で動くことの方が多いのです。そういう懐の深いところを見せて、相手の支えになることは人間関係において重要なことです。

それでも、相手に嘘をついているようだとお感じになられるならば、この方法は無縁かもしれませんね。

それも立派な対応だと思いますから。

どちらが正しいとかという話ではないので、こういう人もいるんだなと思っていただければ…(笑)

最後までご覧いただきましてありがとうございました。

劇団Blue Earth Theater Company代表

さいとうつかさ

劇団道化座に14年間所属し日本全国、海外で公演。現在は役者の勉強会「いわゆるえんげきの会」と当劇団の代表を務めております。ステージ出演回数は400回以上と実践で培った演技指導が強み。劇団以外でも、演技指導、演劇ワークショップを行なう。スタニスラフスキーシステムを独自にアレンジした実践型メゾッド『ゆるえんメソッド』は今までにはない演技練習法として支持を得ております。特長は「ダメ出しではなく褒め出し」「自分を変えないで本来の自分をみつける」という考えで、演技向上だけではなく「自信を深める」演技レッスンを行なっております。

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