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以前大昔、外部の演出に行った時に、表題のことを尋ねられたことがありました。

その時、私は、

読み込むのではなくて思いを馳せる時間を増やして欲しい

とお伝えしたことがありました。

家に帰って、台本を見る習慣をつけて欲しいのですが、日ごろの忙しさにより、日によっては読めないということもあるでしょう。

それでも、寝る前に台本を横に置いて、考える時間だけでも作って欲しいのです。一行でも良いので、台本を眺め、そこから思いを馳せる。それでも良い。

それでも難しいなら、台本を枕元に置くだけでも良いんです(笑)

こんなことをして何になるんだと思われるかもしれません。

しかし、これが実はとんでもなく凄い結果を生むのです。

日ごろから、芝居のことを意識すると、ふとした時に必ず、アイデアが浮かんできます。

これは、おそらくその台本の内容に関する情報を無意識の中で集めているのだと思います。この無意識の中で作業させるには、上記のように、常に台本に関してのことを意識することが何より大切だと思っています。

こういう習慣がつきますと、自動的に、

どんな行動の際にも芝居と結びつけるように考える

ようになるのです。

いや、日ごろからしっかりと芝居のことを考えてますよ

そう思われる方も大勢おられると思います。

しかし、無意識ですよ。無意識だから無意識で芝居のことを考えていると誰が言いきれるでしょうか(笑)

この無意識で考えているかどうかは、実は結果によってわかるものなのですね。

例えば、今までと台本の見方が変わって見えたり、相手のセリフが妙に入ってきたり、または相手のセリフが全然入ってこなくなったり、急に稽古がつまらなくなったり、色々な今までとは違う現象が目の前で起きてくると、

無意識で台本のことを自分は考えてくれているのかな・・・?

っていうのがなんとなく分かるのです。

今までと違う現象が起きている……つまり、今まで見ていたモノのがさほど重要な情報ではなくなり、そのおかげで、今まで隠れていたモノの存在を知るようになるというような感じなのです。

この現象が見えてきた時に、自分の中で、変化を感じて、無限の可能性のようなものを感じるのです。

台本を枕もとに置くということは、台本のことを考えるのではなくて、台本を常に意識して、そこからくる連想、つまり思いを馳せることにより、より自分の中で意識を強めるという効果があるようなのです。

これがなれてくると、自分の頭の中で色々なアイデアが湧いてきて、そこから台本と照らし合わせて、そのアイデアの辻褄は合っているかどうかを確認したりするわけなのです。台本を観るとはそういうことなのです。

しかし、このことを分かっている人はそれほど多くはありません。

稽古場で受ける指摘する言葉の多くは、おそらく……

もっと台本を読んでくるように

ではないでしょうか。

しかし、もしそれを鵜呑みにして本当に台本をしっかりと読んできたならばどうなるというと、

固定観念がさらに固まって、さらに盲点を生み出す

ということに繋がるということを忘れてはいけません。

台本は、読み解くものではありせん。世界を広げるものです。

その世界に広げ方には方法があって、その方法が分からなければなかなか広い世界への扉は開かないのです。

ですから、台本を読むのは技術がいるのです。

お客様に何を伝えたいのですか……

これはとても単純な質問です。

自分が面白い、素晴らしいというものを何とか共感し、それを分かち合いたいということに尽きると思うのです。

その時に、重要なのが、

自分はこの作品を本当に面白いと思っているのか?

ということです。自分が面白い、楽しい絶対に素敵な作品だと思い込めているなら、その想いは必ずお芝居に反映されます。

でも、もし自分のこの気持ちに少しでも曇りがあれば……

その想いも必ずお芝居に反映されるのです。

そこまで読み込んでこなければならないのか?という問いは、自分が本当にその芝居を心底面白く感じ、どうしても伝えたいと思えているかを問う質問でもある。

私は、そう思っています。

人間の心を動かすことは本当に難しいのです。そして自分も人間なのです。だから自分の心を動かすことも難しいのです。

自分の心を動かせる術を知っている人が、俳優としてして素晴らしいのは、そういうことなのです。

自分の心を動かせる人が人の心を動かせる人

こう思って取り組んでおります。

ですから、もしも、誰かから「そこまで読み込んでくるものなんですか」と問われるようなことがあったら、

読み込んでは来てないだけど、気になることが多くて、それで台本を読んでるっていうことがあるかな…

という言葉が出ると最高ですね。

この問いは、自分からも毎回「問われている」ことにいち早く気がつくように。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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