私たちの目指す最終テーマはこの「思えば伝わる」というものです。
このテレパシーのような超能力的なものが最終テーマになるわけですから、当然このテキストを受け取った方々は、
『変わっているを通り越して…おかしいよね……』(笑)
それでもこのおかしな団体は6年続いております(笑)
そんなところで意地を張らなくても良いのですが、
でも、このワークショップのテキストをご覧いただければ、そこに行くまでのプロセスは見えるかもしれませんね。
そこで、このワークショップのテキストの目次をご紹介します。
ワークショップ用テキスト「自己研鑽」
という内容で、最後になればなるほどより実践的なテーマになっているのです。
まず最初、
1.『自分を成長させる』は自己啓発的な内容で、先ほど申し上げた「決して自分を否定しないこと」はこちら項目の時にお話しいたします。
この話をすると、涙される人も多いので、
コミュニティの深い闇を感じる時も正直ありますね。
「出る杭は打たれる」「足を引っ張る」「妬む」「レッテルを張る」「同調圧力」
こういったものが自己肯定感を下げることになっているのは明らかですが、こういう中で自分を表現するということはとても難しいのですね。
お芝居の作り方でも、ダメ出しというものがあります。
これは、それ自体に問題はないのですが、そこに相手をコントロールしようというような動機が絡むとこれが厄介なことになるので、執拗なダメ出しにはかなりの抵抗が私にはあります。(皆様もそうですよね…)
こういう創造芸術での批判がどれだけの損失を及ぼすのかが分かっていないと、このような相手に変わってもらおうとするダメ出しが横行するのだと思います。
ただ、先ほども申しましたがダメ出し自体は悪い訳ではありません。
相手を上手くコントロールできる人であればダメ出しは大いにやっても構わないと思っています。
ただ、相手を上手くコントロールする方法を知っている人は、ダメ出しでは動かないという複雑な仕組みを理解していますので、コントロールできる人はなかなかダメ出しという手段は選ばないものなのですよね。
今までの相手を見てダメ出ししているようでは演出は務まらないのかも知れませんね。
まぁそんな暗い話は置いておきます(笑)
次に
稽古で表現している人に、
「私はあなたを見てますよ!」
というビームを送ってくださいというものです。
そうすると稽古が本番さながらの緊張感に包まれるので良いのと、
お互いの自己重要感を上げる行動にもなるので、実践してみたらお得ですよということです。詳しい説明はまたの機会に(笑)
この話も長くなりますので、また後日にお話ししますが、ざっくり一つだけ言いますと、
自分の感覚センサーを研ぎ澄まして、お客様が今どういう風にご覧になっているのかという受信力を磨く練習などを行っています。
そして最後に
この7の「思えば伝わる」は少しご説明すると、
まず、人間の動作はほぼ無意識に色々なことをしています。
息をするのも、瞬きをするのも、ご飯を食べるのも、飲み物を飲むのも
無意識でしている動作は本当に多いのです。
そして、この無意識の動作は、意識してやってみると意外に出来ないもので、
「普段私ってどういう風にご飯食べてるんだっけ?」と悩む人も続出するのです(笑)
例えば、ペットボトルの水を飲もうとする時、エアーで練習するのですが、蓋を10回くらい回してあけたりするのですね。
実際には2、3回で開いたりするのですけど、それだけしないと開けられないと勝手に思っているだけなのですよね。
このように、一つひとつの動きを模倣して体得していく。そしてそれを思っただけでその動きが自動化されるように反復する。
すると思っただけで自動的に身体が動き、その体の動きが実は「伝わる表現」となって自然に表れるという演技手法の練習をするのです。
人間は複数のことを同時にこなすこともできますので、一つ一つの動作を意識化させて体得し、反復して無意識化させる。こういう動作のレイヤーをたくさん作り、それを何層も重ねることによって、より複雑な表現を実現させるわけです。
こうすることで、直接的な表現ではなく、
より間接的な「垣間見れる表現」となり、お客様に観たくなる、または想像していただく楽しみを提供する
ことに繋げていくのです。
これが「思えば伝わる」のカラクリで、これをマスターすると、意図通りに感じていただけるという究極の演技法を獲得したとも言えるのですね。
こういう演技をするとですね。
余計な表現は一切必要なくすことも出来るのです。
台詞は棒読みでもお客様はちゃんとしっかりと汲み取ってくださいます。
こんな魔法のような演技が存在するのです。
「思えば伝わる」という演技法は、お客様を味方につけることが出来るので、
なんでも良いふうに物事を捉えてくださいます。
実際にあったお話をすると、
ただ単に台詞を忘れただけなのですが、その時のお客様の感想で、
「あの人が言葉を詰まらせた時が何ともやるせなく涙しました」
ということもあるのです。
何だか、ズルいですよね(笑)
ただですね。そこまでの演技を確立するには相当な道のりがあるということだけはご理解いただきたいのです。
苦労や努力だけでは行きつかない場所まで行った職人芸は、
お客様の喜びが自分の喜びと直結した考えのもとでの日々を送っているのですよね。
それは、意志とか根性とかそういう上辺な「思い」だけでは絶対に到達できない境地なのです。
信念に落とし込むレベルにまでの行動となっているのではないでしょうか。
私たちの目指す演技という道はそれだけ素晴らしいことを行っているのだということを自覚すれば、
素晴らしい俳優がもっとたくさん現れるように思います。
そして、このような素晴らしい俳優に誰もがなれると思っております。
それにはまず、俳優の素晴らしさを知ること必要なので、そこから始めてみませんか。
俳優を目指す全ての方々が、唯一無二の素晴らしい俳優になられることを切に願っております。
最後までご覧いただきましてありがとうございました。
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演劇ワークショップ『いわゆるえんげきの会』
さいとうつかさ
劇団ブルア 代表
劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。