台本の写真

台本の読み方は読解力ではありません。

台本の読み方には技術がいるのです。

当ブログでは何回か取り上げてきましたが、それでも難しいというお声がまだまだ多いので、一つずつお話しして、何回かに分けようかと思います。

ただ、最初に注意事項だけ申し上げます。

台本を読む技術は、年月を要します。ですので、最初から分からないからといって諦めないで下さいね。

私はこの技術の取得に10年かかりました

それくらい難しい技術です。ですので、最初は出来ないで当たり前という気持ちで軽く考えていただければと思います。

さて、今回は台本を読もうという表題。

最初は、初見がとても大事ですよというお話です。

これは、以前のBlogでもたくさんご説明しておりますので、ご存知の方も多いかと思いますが、復習のつもりでご覧いただければ幸いです。

台本は初見が命

ですから、とっても大切にして欲しいのです。

私は一番最初に台本を読む時、必ず台本の横にノートを置きます。

何をノートするのかというと……

自分の気になった点や、分からなくなった点、後は気がついた点など、一番最初に読んだ時に感じたことを余すことなく書きます。

何故こうするのかということですが、これはとてもシンプルな考えです。

初見で台本を読む感覚と実際にこの作品をご覧になられる観客の感覚が似ているから

です。初見で台本を読んだ時、次の展開がどうなるかが分かりません。これは観客と同じ視点で作品に対峙しているのですね。

ですので、初見に感じた疑問や、感動をより濃く鮮明に覚えていると、観客がどのようにご覧下さっているのかが分かりやすくなるのです。

では実際にどんなことをノートに書きだすのか……?

いくつか例を挙げてみます。

1⃣ ト書きを読んだ時の最初のイメージを書く。

2⃣ 登場人物がどの人か分からなくなった時、どこで分からなくなったのかページと行をチェックして、ここで分からなくなったと記す。

3⃣ この話がどういう意味かがよく分からないなと思ったところの業をチェックして、ここでまた物語に入っていけないと記す。

4⃣ また逆に物語の意味が分かった時、どこの行で分かったかをチェックして、それが明確に分かったのかおぼろげに分かったのかその時の感覚を記す。

など、こんな感じで、気になることがあれば片っ端からノートに記してその感じたことや物語についての疑問を記録しておくのです。

こうすることにより、初見で読んだ感覚を忘れないようにすることが大切なのです。

この作業は、私が始めた時は2週間ほどかかりました。

台本を一回読むのに2週間をかけるって凄いでしょ(笑)

しかも、毎日数時間読んで、これくらいかかりました。

台本を普通に読むなら、大体は3時間ほどで読み終えるとは思いますが。感覚を記憶するためにはこれ組題の時間がを要したのです。

今では、2日ほどで出来るようになりましたが、不条理や史実ものの作品であれば、一週間ほどは要します。

凄いでしょ!こんなことを俳優はしているんですよ。

ではどうして、初見の読んだ感覚を大切にするのかという説明を最後にします。

これは、お芝居作りの宿命というものです。

稽古をすればするほど鮮度が失われる

これに尽きます。

台本を何回も何回も読んでいくと、最初に読んだ感覚は奇麗さっぱり忘れてしまうのです。

つまり、稽古をすればするほど、観客の感覚を忘れさられてしまうということなのです。

これは仕方のないことです。

人間の脳は一度何かを経験すると、再び同じ行動を繰り返す時、同じ感覚にはさせてくれないということなのです。

繰り返せば繰り返すほど盲点が増えて、最後の方には何も見えていないような状態になったりもするのです。

例えは、最初に相手とのセリフのやり取りに、違和感があったとします。

この最初の時んその違和感を解決していれば問題はないのですが、違和感が残ったまま稽古を続けていくと、演技者はお互いに違和感が無くなって、逆にそれが当たり前になってしまうのです。

これは本当に怖いことで、もしここを気がつかないでそのまま本番を迎えると、観客は間違いなく違和感のあるセリフのやり取りを目の当たりにすることになるのです。

ですので、初見に感じたこと。これが全てなのです。

最初は、ノートに気になったことを書くことが難しいかも知れません。

何を書いて良いか分からないし、全然普通に読めて引っ掛かりもしないので、よく分からないということもあるでしょう。

しかし、これを続けていくことで、少しずつ分かってくるようになります。

技術というのは、何回も同じことを繰り返すと、答えがフッと降りてきて作業を効率良くしてくれるものなのです。

ですから、台本を読むのは読解力がいるという風に考えているようでは甘いのです。

台本を読むには技術がいるのです。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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