演技の答えは台本にはない。

答えは自分の心の中にある。

今回はこういうお話です。

このお話は、今の現代に生きていく上でとても重要なスキルだと私は思っています。

昨今では、たくさんの情報が溢れております。テレビの他にもネットなどでも情報が簡単に手に入る時代です。

情報が多いことは良いことではありますが、その反面、間違った情報もかなりあるので、それを鵜呑みにすると大変なことになることも……。

しかもこの頃のメディアの報道も、どこか偏っていて、同じように思わせる意図が感じ取れるくらいにまでになっております。それが露骨にお感じなられる方も多いのではないのでしょうか。

ですので、どういう情報かは自分でよく考えて判断しなければならないような時代になっていると思います。

そこで、今回のこの俳優の演技プランの技術が前述の時代を読み解くお手伝いが出来るかと私は思っております。

先ほども述べましたが、演技の答えは台本にはありません。自分の中にあるのです。

これは台本を読んで、自分がどう感じたかというところが非常にポイントになってくるのです。

【超簡単】演劇レッスン①でも申し上げましたが、台本を初見で読む時が、一番観客のご覧になられる感覚と似ていると申し上げました。

その一番最初に飛び込んできた情報が、自分の頭の中で処理されて、イメージが膨らみ、そのイメージが形作られたものが、演技の答えとなるということです。

少し分かり難いですかね。

では、ゲシュタルトの話をここでさせていただきます。

ゲシュタルトとは心理学で、全体をみて、部分の寄せ集めとして捉えるのではなく、ひとまとまりとしてとらえた形態のことを指します。

例えば、木だと認識している形態は、一つ一つの葉っぱや枝や幹で構成されている訳ですがそれらを見ている訳ではなく、木(全体)として見ているのですね。

つまり、見ている対象物は、自分の中で形態として構築されたものとして捉えているのです。

私たちの頭の中では、想像することができます。

例えば、「赤い」という情報と「車」という情報があるとします。この情報を元に想像してくださいと言えば、ある人は「消防車」と言ったり、「フェラーリ」と言ったり、「ポルシェ」……「山口百恵」と言ったりする人も中には入るかもしれません(笑)

このように一人一人想像するものは違うかもしれませんが、頭の中では情報から簡単に構造されたものが出来ている訳ですね。

私たちのブルアメソッドでは、これらのことを「ゲシュタルトの構築」と言っています。

そしてこのゲシュタルトの構築が、演技の答えになるということなのです。

例えば、一つのセリフを見た時に、「どうしてこの登場人物がこんなことを言っているのだろうか?」と疑問が出来たとします。

すると、台本を読む技術認識のない方は、台本のセリフやト書きの中で答えを見つけようとします。

しかし、台本を読む技術を持っている熟練の俳優は、セリフやト書きの情報から自分の頭の中で答えを探すのです。

例えば、「笑っている」という表情のト書きで、「怒っている」セリフがあったりします。

そうすると、こういうふうにイメージを構築することは出来ませんか……?

「こんなことで、怒ってるなんてみっともないから、怒ってないようにわざと余裕も見せて笑って見せている」

というようなイメージに繋がるかと思います。

そうすると、怒るのを我慢して、わざと平静を装おうとするが、怒りが込み上げてどうしようもないという、少し複雑な表現へとシフトすることができるのですね。

まぁ、こういう簡単なことであれば、考えなくとも直ぐに想像出来得るものかもしれませんが、説明するために敢えて簡単な例を挙げてみました。

このように、ゲシュタルトの構築をしていくうちに、連想することに繋がるのです。

これは台本には書いていない部分まで想像を膨らませることだってできるのです。

人間関係がもともとこういう感じだったから、今のこういう状況になったんだとか、それこそ想像にはきりがありません。

このように、情報を取って、思いを馳せるということが俳優の演技プランではとても重要になるのですね。

そして、これが今回最も言いたいことですが、

一方向だけの情報に頼らないということが肝心

です。

例えば、AさんとBさんがケンカしていて、その仲裁にあなたが入ったとします。

この時、Aさんの言い分だけを聞いては、仲裁にはなりませんよね(笑)

ですから、Aさんの言い分を聞いたら、次にBさんの言い分を聞きます。

すると、どうでしょう……

Aさんの言い分を聞いた時は、「そりゃ、Bさんが悪いわ!」と思っていても、

Bさんの話を聞いてみると、「そりゃ、Aさんが悪いわ!」ってなるかもしれません(笑)

っていうか、仲裁に入る方は、どちらの言い分も分かるのですね……

怒っている争点が違うと、どちらも正しいことを主張していることは、よくある話です。

ですから、お互いの情報を加味し、妥協案を模索するアイデアがいるのだ思います。

時間が解決しそうな場合でしたら、距離を取ってお互いを遠ざけることも必要かもしれません。

その時の判断は、二人とも頭を冷やせば、冷静になって、お互い「何でこんなことで怒ってるんだろうね」という二人の仲良くなる絵を仲裁者であるあなたが想像できたからかもしれないのです。

このように、自分がお互いの情報を取るということで、今までにはなかった、想像したものが浮かんでくるのです。

また、こういうことも言えます。

自分のいる環境での情報が偏ったものであればあるほど、あなたの環境下では、情報をコントロールされているということが容易に想像ができます。

しかし、ここに落とし穴があって、信頼をしている人であったり、著名人の言うことは、もっともらしいので、そこをすっ飛ばして、素直に情報を受け入れてしまう可能性があるのです。

昨今では、情報を自分で取りに行って、考えることをしなさいと啓発している方もたくさんおられます。

しかし、私は、その方々が仰っていることを実践するのは結構難しいのではないかと思うのです。

何故なら、人間の思考は、自分の目で見たものが全てであります。ただ、その目で見たものにフィルターがかかっていたら、情報自体が見えていないので、考える以前の問題となっているように思えるからです。

これは、演劇初心者の方でもよくあることですが、台本に書かれていることに疑いを持たず、そのままお読みになる方が殆どなのです。

私たち熟練者が、そのセリフは普通に読んだらおかしいよと指摘して、説明すれば、その演劇初心者の方も「なるほど!本当ですね!」と簡単に理解は出来ます。

ですが、問題は、普通に読んだらおかしいですよっていうフィルターがないので、他のところでおかしい箇所が何か所かがあっても、全く引っかからない状態で素通りしてしまうのです。

人間は、物事を見ていていても、フィルターがかかってしまってありのままが見えなくなっているのです

ですので、このフィルターを限りなく透明にしてありのままで見るようにしないとダメなのですが、この取り組みは自分の信念レベルから変えないといけないレベルですので、普段からの演劇の意識を高くする必要があります。

と毎日念じるレベルが必要です(笑)

こうすることで、意識を上げていってください。

ですが、それでは演劇の練習にはならないので、台本を読むときにはこうお教えしているのです。

それはとってもシンプルで、、、

台本は疑ってかかれ!

ってことです(笑)

こういう視点で考えてみて下さい。

お芝居の作品はですね……

平凡であってはいけないのです(笑)

絶対にとんでもないことがあって、人間の葛藤があって、それで劇的に変化するものです。

だから劇と言います(笑)

「今日は、朝起きて、ご飯を食べて、友達とキャッチボールして遊びました。」

というような、小学生の日記みたいな作品はまずありません(笑)

つまり、普通のことが起きないのが演劇作品なのです。

ですから、筋書きを段々と見ていると、

ふつうこの流れはおかしいだろ!

ってことが結構出てくるものなのです。

簡単に言いますと、読んでいる台本が悲劇だったとします。

結末は絶対に悲しいのです。

ここで劇的なスパイスを入れたいのであれば、こう考えると面白いのです。

最初は、幸せそのものを思いっきり表現すれば良い

こういう考えで、台本を読んでいけば、どうなるかと思いますか???

こういう「幸せを表現しよう」と目付をすると本当に目からウロコレベルで、台本のおかしなところが次々と見えてくるんです。

つまり視点が変わっているのです。

もっと言うと、この視点は……

限りなく、台本の作者の視点に近づいているということ

なのです。

台本を書いている作家は、自分の作品をどのように魅せるのかを当然考えています。その意図に近づくことができるという訳なのです。

台本は、表と裏がある。それがはっきりしている方が面白のかもしれません。

台本を読むときに、表ばかりを見ていると、俳優の素晴らしい技術に気づけないかもしれませんよ。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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