(上記の写真の撮影は高橋由一さん)
何をやっても続かない…
こういう相談をよく受けます。
私は、物事の継続は固い意志で臨んでいても難しいと思っています。
何故なら、人の考え方は移ろいやすいからです。
その時、絶対にやってみせると思っても、数週間経ってしまうとその熱は冷めて普通だと思うのです。
一番重要なのは行動する時に「よし!やろう!」という感じではなく、
「当たり前のようにやる」
ということの方がとても重要だと思うのです。
固い意志で動いているのは、今の自分を変えたいという欲求があって、そのために動くわけですから、当然かなりの負担があるのだと思うのです。
しかし、当たり前のようにやるということは、自分がこれをするのは当然だと思ってするので、負担にはならないのです。
これはおそらく考え方のベースが問題だと感じています。
つまり、固い意志で物事を臨む人は、
「今の自分を変えたい」
と考える人であって、
当たり前のようにやるという人は、
「現状の自分に満足だ」
と考えているのではないでしょうか。
これは私にとって天と地との差があると思っていて、
現状に満足していると考えることは継続においてとても重要な考え方だと思っています。
現状に不満があると、それを変えるために、かなり頑張ってしまうのです。
しかし、そうやって頑張っている人は出来たことに目を向けるのではなく
「出来ないところにフォーカスしている」
ことに気がつかなければいけないと思っているのです。
こういう風に考えると、今まで「したい」という思いがいつの間にか、
「しなければいけない」ということになってしまう
ことに繋がっていくのですね。
これが精神的な負担となって、やがて自分が疲れた時に挫折してしまう大きな要因だと思っています。
一方、現状に満足している人は、
「出来たことに目を向けます」
ですから、今日一日が終わって眠る時に、
「今日も自分のベストが出せたな」と満足して眠ることが出来るのです。
出来ないところに目を向けないのは、いつかできれば良いと思っていて、それよりも出来ることに楽しみを得ることの方がはるかに重要だと感じているのです。
ですから、心の中にしなければいけないはなく、出来たら良いなというくらいで物事に取り組めるのです。
こうなると、徐々に自分を変化しいているので、やがてできなかったこともいつの間にかできたということは、誰もが経験されていることだと思います。
固い意志でするとその反動は必ず来ます。
恒常性が人間にはあるので、無理していると感じたら、無理しない自分へと戻そうと働くのです。
だから、急にやる気が出て、今なら何でもできるような気がするということになっても、その気持ちは継続には何の役にも立たないのです。
それよりも、今自分の取り組んでいることがとても重要で、例え、前に進んでいようとしなくても、「大丈夫大丈夫!前に進んでいる」と言える心の持ち方の方が大切なのです。
前に進んでいると思うためには、出来たところに目を向ける人でないと実感が持てない
のでしょう。
ですから、現状に満足して元に戻そうとする恒常性を働かせないように、徐々に進化していくことがとても重要なのだと思います。
継続すれば、必ず技術は身につきます。
ですから、能力よりも継続できる力の方が大切なのです。
能力があっても、途中でやめていく人を今までたくさん見てきました。
私は本当にこれは大きな損失だと思っています。
私は自分の可能性を信じられる世界が今の世の中には絶対に必要だと思っておりますので、これからは継続できる人を育てていきたいのです。
ですから、常に思い描く未来のなりたい自分を想像して、それを思い続ける。そして今あることはその行動全てに、その理想に続く道に繋がると信じて進むことが大切だと思っているのです。
「今自分がしていることは、自分の理想に繋がっている」と。
このように思うと、今自分に無駄なことをしているとは思えなくなるのだと思うのです。
これが、日々満足して生きる方法で、継続できる方法でもあるのだと思います。
よく考えてみれば、最初は何でもそうだと思うのですが、簡単に上手くはいかないことの方が多いのだと思います。
上手くいかないことの方が当たり前だと考えれば継続することにそれほど負担はありませんよね。
それに、上手くいく道を知っている人はおそらく、上手くいかないことを経験として成功の種としているので、簡単だと思えてくるのだと思うのです。
簡単だとなれば、最初から上手くいくという考え方にもなるし、継続もしやすいのです。
技術を覚える俳優も目の前のことは難しいことばかりです。
でも、それを出来ないところにフォーカスするのではなく出来るところにフォーカスすることが出来れば、継続は容易になりますし、簡単に習得できるようになるでしょう。
現状に満足していることはとても大事です。出来るところに目を向けることが出来るからです。
これが継続の秘訣です。
現状に満足しつつも、欲を持って生きること
その欲が理想の自分になるということ。
理想の自分を思い描くこと。そして、出来たことに満足し、それが理想の自分に近づいていると常に言い聞かせること。
そうすれば、継続できる環境が周りから整ってくるようになりますし、自分にふさわしい人が次々に目の前に現れることになるでしょう。
気がつけば、ここまで来ていたというのが、実感ではないでしょうか。
演技の上達はそういう感じで得られると私は思っています。
継続していて良かったと思える時が必ず来ます。
最後までご覧いただきましてありがとうございました。
さいとうつかさ
劇団ブルア 代表
劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。