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2023年7月15日(土)と16日(日)に神戸の新開地アートひろば(旧名称:神戸アートビレッジセンター)で『大地のかぐや姫』を上演しました。今回の作品は私さいとうつかさのオリジナル作品で、ペンネームを「調 和葉」(しらべわっぱ)としました。名前の由来は一番大切にしてるのが「調和」であること。そして植物の葉が好きなこと。この二つを合体させてつけさせていただきました。

photographer:筒井俊博

みんなで台本を持って撮影してくださいました。

実は、この台本のご感想をまだ誰一人として聞けてないんです(笑)ですから、公演を終えて好評を得られることが出来た時、とっても嬉しかったのです。ただ、この台本が良かったのではなく、

出演者の皆様のお陰で良い作品に引き上げて下さった!

とこのように感じております。

実はこの作品、書き換え回数は13回(笑)・・・・・どれだけ書き換えるんだと突っ込みが来るくらい何回も書き終えて最終稿が出来たのは6月の上旬でした。書き換わる度に俳優の皆様にご迷惑をおかけしましたが、それでも、すぐに対応して下さって、書き換わった次の日の稽古ではもう台本を離すといった素晴らしい稽古をご披露くださいました。これは本当に嬉しく、感謝の気持ちでいっぱいです。それと、俳優の方々の本気度が日に日に増していってること、稽古中に涙するほどの演技をご披露して下さったこと。これは裏を返せば、この台本を評価して下さっているからのことだからと受け取ることもできるようになり、日に日に自信を持ってお届けする作品になれたと思います。

photographer:筒井俊博
photographer:筒井俊博
photographer:筒井俊博

一方、俳優陣からこういうこともよく言われました。

さいとうさんの演出ってあんまり言わないよね・・・・・もっと言ってくる人やと思ってた

これはなるほど納得のお言葉でして、私は俳優の時は結構色々と物申す俳優でして、かなり緻密に考えて演技を組み立てるので周りから

とっても細かい人

だと思われています。ですから、私が俳優として関わっている現場を知っている人からすれば、滅茶苦茶口出しする演出に違いないと思われても不思議ではないのです。では何故、演出の時はそんなにうるさくないのか(笑)というと、実はここに私なりの演劇のこだわりがあるのです(笑) それは・・・・・・

俳優という職業はとても崇高なもの

だからです。俳優って実はもの凄いことをしているんだ!っておもっていただき、舞台に上がってもらいたいからなのです。

photographer:筒井俊博

ブルアの稽古を知っている方はご存知だと思いますが、私は稽古を見る時、決して台本に目を落としたりはしません。一挙手一投足の動きを逃すまいとしていつも舞台を観ています。

photographer:筒井俊博
photographer:筒井俊博

ブルアの稽古ルールは一つだけ。

自分の出番でない時は、キャストもスタッフも前から稽古を見る

これは稽古が締まる魔法のルールです。これは知っておいた方がお得です(笑)

今、この時をみんなで大切にしている。つまり、時間空間をみんなで作り上げる行動になっているのです。これは一つのモノを作る時に絶対に不可欠なものだと思います。こうして一人一人の大切にしようという共感を得られて、それを舞台上に載せていく作業が私にとって理想なのです。

舞台の醍醐味は劇場を一体化させて浄化作用を引き起こすこと

このためには、お客様と舞台側の作り手の共感が必須で、その共感力を養うためには、我々作り手の中でも共感しあうことが大前提なので、この共感を得る行動を稽古で作ることが何より大切なのだと私は考えております。

ですから、俳優の方たちに私はこういうことを念じております。

私はあなたを観てますよっ!

って・・・・・(笑)

ただこれって俳優にとっては実は嬉しいことなのですよね。私も30年俳優をやってますが、自分が稽古で演じている時に、そっぽ向かれたり、雑談されたり、稽古を見ずに準備されてたり、もう稽古が終わるからって、片付けに入られたりしたら、悲しくなります(笑)

ですから、あなたの稽古は私がしっかり観てます!って念じるのです。すると、どうなるかって言うと、俳優の真剣度はやはり変わりますし、共演者の方々もやがて真剣に見るようになっていく・・・・。そういった相乗効果が生まれるのを幾度も経験しました。

photographer:筒井俊博

環境が人を変えるではありませんが、俳優を尊重した環境は、俳優を輝かせる大切なことなのです。

こうして俳優の本来のお力を発揮していただくことが、私の演出スタイルなのです。

photographer:筒井俊博

みんなが俳優として楽しんで舞台に上がる。これが私の理想でした。

私の育った環境ではこれがなかった。ですから、ここにこだわりたいのです。

しなければならないではなく、したいにしないと芸術創造は働かない

photographer:soichiro kishimoto
photographer:筒井俊博
photographer:soichiro kishimoto
photographer:soichiro kishimoto
photographer:soichiro kishimoto
photographer:筒井俊博
photographer:筒井俊博
photographer:soichiro kishimoto
photographer:soichiro kishimoto

私は、本当は芝居の答えは自分の中にあると思っております。その自分の中であるのだけども、自分の価値観や固定観念などで、盲点となって見えないような状態なのではないかと思っています。この固定観念は、こうあるべきだとか、こうしなければならないという考えの足かせがあればあるほど、自由な発想から得られる表現を想像できないようにしていると思います。例えば、何かダメ出しをする。すると、そのダメ出しされた人は、こうしなきゃいけないという風になり、別視点でモノを考えることをその時点からしなくなるようになるのです。そうすると、しなければならないという演技が醸し出されてしまい、自由な思い切った表現とは程遠い、制限のあるつまらない演技になるのです。

では、ダメ出しはやらない方が良いのってことですが・・・・・そういう訳ではありません。簡単な話、俳優と話をする時に必ず、

リスペクトしている

こういう意識で臨めば、その気持ちが俳優にも必ず伝わります。そうなるとこういうことが起きるのです。

演出の言うことを汲み取ってあげたいな・・・・・

ここで、しなければならないからしたいに変わるのです。

最大限に尊重して、接すること。こうすることで、自分がもの凄いことをしていると実際に感じていただきたい。そういう演出をしたいのです。こうして俳優と演出の相互意見で作り上げるのが私の一番したいことなのです。

作品が一人歩きしている

今回の作品は自分で書いたものでありながら、最後の稽古の方では、私の作品ではないような感じになっていました。稽古が進むにつれて、演出から一観客という感じになっていった。それだけ、毎回稽古を見るのが楽しみで幸せでした。

photographer:soichiro kishimoto

私はただ、目の前の不思議な光景を見ているだけでした。自分の作った作品ではもうない。別作品である。そういう感覚でした。

私は俳優です。だから、俳優が最高にやりがいのある環境を作って、思いっきり取り組める環境を作りたかった。「これ以上出ません!」という状況になれる環境を。しかしこれは、言い方を変えればもうどこにも逃げられない自分との闘いでもあるわけです。この究極の状況を戦う時、しなければならないで戦うか、したいで戦うか。もうどちらが楽しいかは分かりますよね。こういった最後は全部自分にかかってくるという戦う楽しさは、経験した人にしか分かりません。これ以上に注目に値する環境はないからです。これこそ俳優冥利に尽きる環境ではないでしょうか。

こういった状況の中で最高のパフォーマンスをお見せしたいですよね。人間には欲がありますので、こう見せたいああ見せたいという欲に限りがありません。ですから、出来るだけ早い段階での稽古の内から、こういう環境を作り、出来るだけ多くの「したい演技」を作っていただきたいのです。

経験が少なければ、当然、知らない部分が多いので自分におけるタスクは少ない。だからそれほど緊張には至りませんが、熟練になると相当広範囲が見えるようになるので、その分当然タスクも増えます。そうなると緊張するのが当たり前なのですね。ですから、それを袖から見守ることもします。

photographer:soichiro kishimoto

こうして、次に出てくる人、次に出てくる人を送り出す。前に出ている人は次に出ていく人にバトンを渡す。こういう作業が、舞台裏では繰り広げられているのです。

頼んだよ‼

張り詰めた緊張感の中でそういう心の声が聞こえるのです。

こうした心の共感が私は最も大切なことだと思っています。

一人では力は小さいけれど、共感を得て、団結しあえれば大きな力になる。それが演劇です。

この大きな力を得ることは今の世の中のキーになることだと思います。

photographer:筒井俊博

演劇って本当に楽しいです。しかも大きな力も生む!

この言葉で締めくくらせていただきます。最後までご覧いただき誠にありがとうございます。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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