前回の演出ノートは俳優さんについて記させていただきました。このブログ演出ノート②は、照明さんについてお話しさせていただければと思います。

photographer:筒井俊博

福永雅子です。女優名では凛旺雅子です。

photographer:soichiro kishimoto
photographer:soichiro kishimoto

彼女は、今回の公演『大地のかぐや姫』では照明家と女優の二刀流で臨みました。

現場を知ってらっしゃる方がおられましたら、お分かりいただけるとは思いますが、これは結構難しいのですね。色々と沢山お助けいただきましたが、彼女は何とかやりきりました。というのも、スタッフさんのお仕事は現場に入ってからが勝負なので、短期間に練り上げたものをセッティングしなければならないので、当然ですが設営時間は筒いっぱいのなのです。つまり・・・

今回、女優としての準備時間が一切なかった‼

ということなのです。舞台仕込み時間は全て照明にかかり、音と灯りのセッティング作業の一つである「場当たり」作業も、女優ではなく照明家として立ち会っていて、自分の出番の時だけ、急いで舞台に駆け上がって灯りに当たるということを何度も何度もしていました。

photographer:soichiro kishimoto
photographer:筒井俊博
ちょけてるとらちゃん photographer:soichiro kishimoto

ブルアの場当たりは相当な緊張感が走っているのですが、時にはこんな感じの時もある・・・・・(笑) 

photographer:筒井俊博

稽古場でもキューシートでチェックして稽古を見ています。ここでも女優時間が削れているんですね。というように、彼女は今回二人分のお仕事をしていたことになるんですね。多分、演出の私さいとうは鬼のような人やなと周りから言われていることと思われます。

ただ、私には私なりに思うことがありまして・・・・・

この福永雅子の照明のお師匠さんは、私の古くからの友人で、関西でも指折りの照明家で、それでいて現場にも入りたがるバリバリの現場職人です。その友人のお弟子として入り、今は色々な現場で修業させてもらってます。その照明家である友人のところには、厳しい世界であるがゆえになかなか人材が揃わないという現状があるようで、その中で、彼女をその世界に送り込みました。

厳しい世界だから、すぐに諦めるのかな・・・と思ってたのですが、今で3年になりました。彼女のお師匠さんから漸く照明プランをしても良いというお許しを得たので、今回思い切って、照明家福永雅子をデビューさせた経緯がありました。今回色々な方にご迷惑をおかけしたことと思われますが、いつか立派になってそのご恩をお返しさせていただければと思います。

今回、照明家デビューしましたが、結果はいかがだったでしょうかね・・・・・?照明も奇麗だったというご感想も寄せていただけたので良かったです。

勿論、今回はベテランさんにサポートに回っていただき、オペもベテランさんにしていただいたので、その方のお力が大きかったとは思いますが、彼女的にはあまり人が経験したことがないことが出来たのではないなかなと思います。

彼女のお師匠さんである私の友人と、以前こんな話をしました。

バリバリの照明家の女優が現れたら、この世界が変わるかもね・・・・・

灯りを入れる立場が分かる女優って結構強みなのですよね。

今も昔も、若い時の俳優は、自分が演技をするので精一杯で、何故照明がここで灯りを入れているのかとか、どうしてここで音楽が入っているのかなんてなかなか分からないものなのです。でも早い段階でそれが分かるとなると、若いうちから共感力をつけることが出来るようになるのですよね。これは言い方を変えると影響力とも言えます。

もし、照明さんの意図を理解して演技をしていたならば・・・・・

この子は我々の意図をしっかりと酌んで舞台に立てくれている

ってなるんですよね。そうしたら、この子のためにもう少し良い灯りにしてあげようって考えるのが人情だと思うのです。個人個人で仕事していればいいってわけには、こういう総合芸術はいけないんですよね。

私が今お教えしている俳優養成講座では、演技プランについてこのように申し上げております。

自分の演技に自信を持つ条件として、

  1. 台本に答えはないので、自分が読んでどう感じたかという点を洗い出し、その点と点を結びつける作業を徹底し演技のアイデアを見つけること。
  2. その1でしたことは台本と照らし合わせて、そのアイデアが辻褄が合っているかどうかを考えるということ。
  3. その辻褄があったアイデアが、共演者にとっても面白いものであるかどうかということ。
  4. 演技者だけでなく、それが裏方スタッフさんにとってもそのアイデアが面白いものであるかどうかということ。

この4つを全てクリアすれば演技としては丸な場合が多いとお教えしています。これは演劇的調和の法則ですね。

台詞の話し方、動作、位置、間にこれをすべて反映させると良いのですが、この4番目の裏方さんにとってもその演技のアイデアが面白いかどうかは、一番難しいことなのです。何故なら、照明さんがどういうお仕事をしているのか、どういう理論や理念で灯りを当てているのかが俳優のみでしたら分からないのです。

例えば現場に来てサスペンションライトの灯りを見ると分かりやすいのですが、そのサスペンションライトの大きさで俳優が信用されているかどうかも分かったりするんです(笑)

サスペンションライトを浴びるということはそこに焦点を当てるというようなライトなので、そのライトに当たる地面は円となって現れます。その円が狭ければ狭いほど、信用された役者と言えるのですね。

この役者は必ずここに立ってくれる!

て感じです。でもその灯りの円が大きければ・・・・

仮にずれて立ったとしてもぎりぎりカバーできるだろう(笑)

ていう感じもあるのです。そういうように、照明家も色々な方がおられますので、その方の特長を掴む事は実は大切だったりするのです。それは素人なりでも最初は良いんです。こうじゃないかなという意識を持つことがやがて真理に繋がることだからです。こういう意識が共感を生むことに繋がるのだと思います。

さて、話は戻りますが、その照明家の意図を専門的に分かることで、彼女の芝居の幅が増えるのだと私は信じています。

ご本人は大変だったこととは思われますが、こういう未開の地に足を踏み入れたという経験は必ず自信になります。そうして、新たな道を切り開いていただければと切に願うのであります。照明家として第一歩、おめでとうございます。

photographer:soichiro kishimoto

楽しそうに演劇活動してますよね(笑)

これからも凛旺雅子(福永雅子)の応援よろしくお願いします!

これからも自分のしたいことを応援できる環境を作りたいです。そうしてここに共感できる人が集まれば良いなって思います。

最後までご覧くださいましてありがとうございました。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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