演技は冷静にすること。

このように言うと違和感を感じられる方もおられるかもしれませんね。

しかし、演劇でお客様からお金をいただくのでしたら、

冷静に芝居をする技術を身につけること

これをお薦めします。

芝居はお客様とのコミュニケーションが成立しないと成功しないものと思っています。

演技をしてても、コミュニケーションの相手はお客様。

ですから観られている前提で演技を組み立てなければいけません。

その演技の組み立てを私たちは

演技プランといます。

『どうすれば、お客様に物語の世界に入って頂けるのだろうか?』

から発想し、お客様の目線で考えて演技を組み立てるのです。

そして、この時に一番重要なのが、

お客様はどのようにお芝居を観るのか?ということをたくさん知っておかなければならない

のです。

これはお客さんのニーズとも言うべくものですので、

これを理解したうえでお客様のニーズに応えられている演技をすると当然ですが、

とても良い評価をいただけるのです。

ニーズに応えられる人はどの業界でも重宝されます。価値ある存在です。

ただ、ここにあまり価値を見出せていない人は多いのかなと思います。

考えようによっては、この知識を得ることで、頭一つ抜けた存在になれるのに…

と私は思ってます。

俳優であるならば、価値ある俳優になりたいと誰もが思っていると思います。

そして、その価値ある俳優になるために色々な方法を駆使して日々稽古に励んていることと思います。

しかし、

『その努力で見えなくなっているものはありませんか?』

という疑問を投じたいのです。

単刀直入に言うと、

『作り手の想いだけで作品を作っていませんか?』

ということ。

これが悪いというわけではありません。

自分たちの主張を掲げるにはこういう部分も必要だということは私もその通りだと思います。

しかし、その前にもっと大切なことは

『お客様からお金をいただいている』

ということ。

つまり、お客様のニーズに応えられなかった作品はお金をいただく価値がないというどころか、

最悪の場合、「もう二度とここの芝居は見ない」ともなり兼ねないのです。

作り手は芸術だと捉えても、観る側にその考えを押し付けてはいけません。

観客はお金を払う以上、「来て良かった!」と思いたいのです。

そのニーズには応えたいですよね(笑)

それならば、お客様はどのようにお芝居を観るのか?ということをたくさん知っておかなければならないというわけなのです。

そして、この「お客様はどのようにお芝居を観るのか?」という知識は、経験値の高い人でなければ分からず、

色んな経験を積まれた方の意見というのはとても貴重です。

私の場合は、有難いことに経験豊富な先生方、先輩方が周りにたくさんおられたので、色々と「お客様のニーズに応える演技術」を教わりました。

ですので、これから始められる若い方々にこういう演技もあるんですよという感じで、

その「お客様のニーズに応える演技術」を何点かご紹介して参ります。

目次
1.お客様が観る優先順位を知る
2.お客様を味方につける

1.お客様が観る優先順位を知る

とってもシンプルな助言で申し訳ないのですが、

これは、知ってる人に教わった方が絶対に良いです(笑)

演劇を始められる方は演技の練習法や指南本などやワークショップなどで教わる方が多いと思われますが、

今からいう演技術は実践で培ったものですので、

学校等では教わられない現場の技術です。

だから、教わるとすれば、

舞台を長年立ち続けておられる人の方が良いでしょう。

お客様が観る優先順位は

1.台詞を話している人

2.動いている人

大まかに言うとこういう感じです。

一番お客さんが注目するのは「セリフを話している人」になります。

これは皆様ご存知ですよね(笑)

どうして台詞を話している人を一番注目するかというと

話していることを聞いておかないと物語が理解できないからですよね。

ですので、台詞を話している人が一番注目されやすいのですね。

そして、この台詞は話し方によっても注目の度合いが変わります。

簡単に言うと、客席正面を見て台詞を話すのが一番注目度があり、後ろを向いて話すのが一番注目度が低いのです。

これは、本能と少しかかわりがあるように思います。

人間は相手の話している内容よりも相手の動機をみている

つまり話した内容よりも「どうしてこの話をしているのか?」というところにウェイトを置いているのです。

例えば、お店で商品を見ていると、店員さんが近寄ってきて話しかけることってありますよね。

その時、大半の人がその話しかけてくる店員さんに「私に商品を買ってもらおうとしてるな」と感じるわけじゃないですか(笑)

まぁ、このケースは動機が見え見えだから分かりやすいですけど(笑)

私たちの普段の会話でも、相手の動機を無意識の感じ取ってるのは、話している内容よりも相手の動機をみているからなのです。

そして、その情報をどこで見るかというと「顔の表情」と「身体動作」なのですが、顔の表情の方が動機を感じ取りやすいのですね。

だから、客席を正面に見て台詞を話している人の顔は無意識に観てしまうものなのです。

次に横を向いているとします。まぁ、誰かと話をしているとしましょう。

この時、客席の人はどこを見ると思いますか?

正解は、話している人と聞いている人の顔を見るです。

これも簡単な話ですが、

詳しく言うと、役の人物が台詞を話します。その台詞の内容を観客が理解出来たら、聞く人の顔を見ます。

これは、観客自身が、相手はそのセリフを聞いてどう反応するのかを見るというのと、本当に役の人物の台詞の言ったことを理解できたかを伺っているのですね。

だから、役の人物が難しい内容のことを話していたら、当然理解がその分難しくなるので、セカンドオピニオンとして、聞いている役の人の顔を見て、理解を深めようとしている訳です。

ここまでのお話をして何となくお分かりになられる方もおられるかもしれませんが、

これを応用すると、舞台で台詞を話している自分をしっかりと観てもらいたいと思った時は客席正面を見て話をすると注目度が上がる。台詞を話している時でも相手に注目が行って欲しい時は、聞き手の相手に目を向けて、観客に聞き手の顔も見てもらうということが出来るようになるのです。

しかしこれは実践にお見せしないとなかなか分からないかと思いますが、このような考えから、お客様に見ていただくために優しく誘導させる技術は実はたくさんあるのです。

そして最後の客席に背を向けて台詞を話すとお客様はどこを見ると思われますか?

この場合は、動機を読み取れるのは身体の動きだけになるので、最初は台詞を話している役の人物の後ろ姿を見ていますが、動きがなければ、客席に背を向けた役の人物の見てるであろうその先を眺めたり、違うところに情報はないだろうかと舞台全体を眺めたりする人が増え、その役の人物個人に注目する度合いは格段に下がるのですね。

しかし、これは裏を返すと、舞台の奥のセットを見てもらいたい時であったり、劇場全体を絵画として見てもらいたい時に効果的な台詞の発し方だとも言えるのです。

つまり、お客様にどこを見てもらいたいかという方向付けが演技で出来るということなのですね。

台詞の話し方だけでも、もっと細分化すればたくさんの見てもらう順番があります。これをたくさん知っていれば、お客さんに親切なお芝居が出来るというわけです。

昔、以前お世話になっていた劇団のお師匠さんと共演をしていた本番中、

とっても良いシーンに差しかかろうとした時に、

「さいとう、もうちょっと、台詞の声落とせ、響いて向こうに聞こえてへん」と

それとなく私に近づいて舞台上でご指摘をして下さいました。

声こそはトーンを落としてお話しされてましたが、

まぁ、芝居の内容とは全然関係のない話を本番の舞台上で話しかけられたことの衝撃は今でも忘れられません。

聞いたコチラが思わず素に戻りました(笑)

ああやって、舞台上にいても死角をつく意識があるのは凄いことだなと思います。

『ここはお客さんが見ていないと分かれば、舞台の上でも台本持って台詞繰っても分かれへん』

そんな冗談みたいな嘘か本当か分からない話もありますが、そういう感覚で芝居が出来るからこそ、魅せ方にこだわれるのだということを教わったように思います。

では次に、お客様が観る順位2番目の「動いている人」の説明を。

ですが、これは簡単にご説明すると、これも本能的に動くものを目で追うということが言えます。

お客様は台詞を話している人に注目していますが、内容が理解し、状況が判断できると違う情報に目が移ります。

その時に目がいきやすいのが、動作をしている人になるのです。

そしてこの動作の中にも細分化すれば色々あるのですが、

動作の中で、一番見られやすいのは、「動作が急に変化する」表現したものです。

例えば、

・『ずっと動いていた手が急に止まる』
・『足の歩みを止める』
・『息を止める』
・『止まっていたのが急に動く』

このように変化する。しかも急な方が見られやすいのですね。

この動作の表現は主に聞いている時の芝居にとても効果的で、

例えば、相手の役の人物の台詞で心動かされたという表現をするのでしたら、

・『ずっと動いていた手が急に止まる』
・『足の歩みを止める』
・『息を止める』
・『止まっていたのが急に動く』

の何れかをするとお客様に見ていただける確率が上がるのです。

しかも、この表現は相手の台詞の印象度を上げる狙いもあるので、

このような『聞くお芝居』というのはかなりお客様に伝わりやすくなる効果的な芝居の仕方でもあるのです。

こうして、観てもらう優先順位を知り効果的にお芝居を観てもらい、ドンピシャのタイミングで表現を披露できる演技者は

間の良い役者

として、お客様に少しずつ好感を持っていただけるようになるのです。

『お客様はどのようにお芝居を観るのか?』から考えたものは、表現の奥に隠されたホスピタリティを感じる素晴らしい演技を育てることに繋がっているのです。

このようにして、言葉での交流はありませんが、しっかりと客席と舞台のコミュニケーションを図って、良い関係づくりが出来ると、劇場全体が一つになっていく素晴らしい現象が起こるのですね。

では、客席と舞台のコミュニケーションが成立した舞台をどのように作っていくのかという話を次のページでお話しさせていただきます。

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