私は演劇の公演で過去中国に4度訪れたことがあります。
最初の訪中公演は今から30年ほど前。
上海の空港に下りた時は中国の独特の香りがあって、「あゝ、外国へ来たんだな」と感じました。たった3~4時間ほどで行けるところなのですがね。
空港から上海中心部に向っていると前日の大雨で途中から洪水状態で車がゆっくりゆっくり走っていたのを今でもよく覚えています。当時の上海は高層ビルの建設ラッシュ。建設中のビルの足場は竹だったのは衝撃的でした。
また交差点での交通トラブルによる喧嘩が至る所でされていて、タクシーの運転手が上海の日常と笑って言ってたのもよく覚えています。またそのタクシーの運転手も殆ど乗ってる間は警笛を鳴らし続けているので、車のホーンもかなり疲れてて音が小さくなってるのが面白かった。
警笛を鳴らしてもビックリするレベルではなく「車通るからどいてね~」という合図のような感じで、警笛はどちらかというと親切で鳴らしている感じなのですね(笑)
ここまで違うか!
外国へ来たな~
当時の上海は本当にそう思いました。
今は、もうほぼ日本と同じ感じですけどね。というか、向こうの方がもう大都会ですよね。
そのように海外へ行って、日本とは全然違うところを数々見ることが出来たのですが、
一番驚くのは、やっぱり「国民性」。
初日は何と歓迎パーティーが6回。数多くの団体が「熱烈歓迎!」であまりの料理の多さに、堪えました(笑)
この歓迎パーティーでまず衝撃を受けたのが今回の話なのです。
何台もある円卓を囲んで1人ずつスピーチするのですが、みんな、本当に楽しく話しているのです。周りからは頻繁に笑いが起きてて、「面白いことを今言ってるんだろうな」と何となく分かるのですが話し終わった後の拍手も凄まじいのです。
何か、一種の感動があったのか、とっても興奮して拍手される方も中にはいて、終始圧倒されました。
「みんな、スピーチしたくてうずうずしている」
そんな雰囲気もありました。
日本では考えられない光景(笑)
日本では結婚式のスピーチで、ものすごく緊張してお酒飲んで酔っ払ってしまう人もいるのに、この国は老若男女全ての人がそれこそ「流暢」に身体を大きく使って話している。
しかも、声がでかい(笑)
この国民性の違いに一番の衝撃を受けたのです。
緊張しないのかな???
通訳の方にお話を伺うと、普段からこういう習慣みたいなものがあり、人前で話すことはさほど抵抗はないというのです。
特に面白いのは年配の方々のスピーチ。
「中国にはこういう諺があります」から朗々と話す方が多く、孔子や孟子、孫子の兵法なども飛び出して、とっても内容が面白い。
とっても勉強になりますし(笑)
今のことと昔の言葉を照らし合わせて、私たちの心を大きく動かせてくださいました。
ここに倣うのは
という気持ちの問題です。
私たちをとても歓迎してくれていることが、このスピーチで伝わって、感動させれたのです。
逆に私たちが日本でお迎えする時、ここまでのことが出来ないなと思えるほど、本当に素晴らしい歓迎を受けたので、今でも鮮明に覚えています。
「心に残る話が出来ますか?」
人前で鮮やかに話すことも大事ですが、一番はやっぱり人の心を動かせる気持ちです。
彼らの心の動かし方は、とってもシンプルです。
「私はあなた方を受け入れます。来てくれてありがとう。」
という明確な気持ちが込められているのです。
そしてこんなにストレートに気持ちを込められるのは、自信をもって私たちに自分の気持ちを伝えているからなのです。
こう思われたらどうしよう??
そんな内向きな心は微塵もありません(笑)
自分の好意を隠すことなくすべて出すことが出来ている。
私は、そこに彼らの魅力を感じました。
自分の思ったことを自分の言葉で良いのです。堂々と話すことで、相手の心を動かしてみませんか。
それが出来れば、あなたは人の動かせることが出来る人間になれたのだと思います。
そういう魅力的な人がたくさん増えればいいですね。
ありがとうございます。
さいとうつかさ
劇団ブルア 代表
劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。