社会に寄り添う演劇を
演出 さいとうつかさ
この度は、当ホームページをご覧くださいまして誠に有難うございます。
突然ですが、皆様は今の演劇をどのようにお感じになられますでしょうか。
おそらく多くの方々は演劇をご覧になられる機会が少ないのであまり印象がないではと思われます。
演劇は今も娯楽として、世間の皆様の選択の一つにあれば良いのですが、現状ではあまりそうはなっていないようです。段々と俳優の活躍する場所が映像の方に変わってきている。
そういう時代の流れがあり、それで段々と演劇の存在が薄れてきたとお感じになる方も多いのではないかと思います。
今や演劇を観るのは、相当のお気に入り俳優の出演する舞台や人気のミュージカル、または知り合いに出演される方がおられるといった感じでしょうか。
そのように演劇はどちらかというとマイナーなジャンルになっているように感じております。
しかし昔は、大きな社会現象を引き起こすほどの非常に大きな影響力を持った演劇がたくさんありました。
多くの方が演劇に感化されて、それが社会全体を動かすようなこともあったと聞き及んでいます。
一昔前では、あまりに影響力があったために、検閲されて、政治がコントロールするといったこともあったそうなのです。
しかし時代は流れ、やがて演劇の影響力は小さくなっていった。世の中が演劇には関心も薄れてきた。これは時代の移り変わりで徐々に演劇の影響力は小さくなってしまったのでしょうか。
私は決してそうではないと思っております。今も昔も演劇に対する情熱は変わりはないと信じているところではありますが、その情熱を向ける先が、どうも今と昔とは違うように思えるからでございます。
社会が演劇に関心を寄せなくなったのではない。むしろ逆で、演劇が社会に関心を寄せることをしなくなってしまったことが一番の要因ではないかと思えるのです。
つまり演劇の影響力は時代の移り変わりが問題ではなく、演劇を作る側の意識がこの今の現状を作っているのではないかと思うのです。
今はただ何を取り組むのにしても、自分に目が行くようになっていて周りに目がいかないようになっているような感じがしてならないのです。
今と昔の違うところ・・・・・。
それは演劇に対する情熱が自分に向いているのか、それとも社会に向いているのか。ただそれだけのように感じるのです。
演劇がもっと社会に向いて共感を得るものになれば、演劇の素晴らしさはもっとより身近にお感じになられる方が増えるのではないかと、このように考えているのであります。
演劇は本当に素晴らしい芸術です。人の心を動かし、共感し、強大なエネルギーを発するものです。劇場での一体感が出た時のエネルギーは、強大な力が一つの方向に向かっているようにさえ感じるのです。
一つの力となって、一人一人の心の浄化作用が働く。何をやっても新鮮で、何でもできるような晴れやかなくもりのない気分になれる。
まるで赤ん坊のような好奇心で世の中を見ることが出来るような感覚。つまり本来の人間の生きる意味を無意識に示しだしているような感覚を演劇は引き起こしてくれるのだと感じるのです。
そのように演劇人は大いなる意図でもって大いなることを成し遂げようとしている自覚がもっともっと必要なのではないかと常に私自身は心に留めている次第でございます。
私たちの今生きている世の中に関心を示さないということは、自分が世の中でどのような役割を果たしているのかが分からないということ。実はこれが原因で日々苦悩されおられる方は多いではないかと思います。
自分だけが苦しいとなれば、誰しも不満や悲しみに包まれてしまいます。しかし、そんな中でも外に向ける目がもしできるのであれば、その苦しみの先に何があるのかという希望が見えてくるものではないでしょうか。
世の中の流れを見ていると、自分の今苦しんでいる現状が客観的に見えて、その行動が大きく改善される切欠になっているということは多くの方もご経験されていることだと思います。
私たちの周りには大きな問題がたくさんあります。しかしその問題が世の中にあまり知れ渡っていない現状があるのはどうしてでしょうか。
それは、今の暮らしの中で知らなくても良いようになっているからではないでしょうか。しかし、その問題が未来の暮らしでは大きく影響を及ぼすものだとしたらどうでしょう。しかもその未来が容易に想像できるものだとしたら・・・・・。
全てのことを知るのは実際に不可能なことかもしれません。ですが、全ては自らに通じていると考ることが出来れば、多くのことに思いを馳せられる人間になるのではないでしょうか。
この思いを馳せることが実はとても大切で、その先に何があるのかを考える人が、今この世の中には最も必要な人なのではないでしょうか。
世の中は、事を成すと賛成の人と反対の人が現れることがしばしばあり、これが多くの社会問題を引き起こしていると言えましょう。
ここをただ単に、賛成する反対するだけではなく、自分がこの問題に対してどのような行動を起こすのかが大切なことなのだと思います。それが主義主張として発信されるご活動でも良いと思います。反対の立場であっても、自分だけは賛成の人との調和を図る行動を取ることも立派な行動だと思います。
大事なことはみんなで問題を共有をしあって、解決しようとすれば、やがて相反する人の心情を酌むことも考えられはしないかということなのです。
そうやって丸く共存しあうことが社会では大切で、角々した中で生きるのは誰しも本意ではないはずなのだと信じております。
問題を共有することは、同時に、それに向かって頑張ってらっしゃる素晴らしい人の存在も知ることが出来ます。どうしてそのような方が献身的に活動をなさっておられるのか。そこに焦点を合わせる見方がもう少しあっても良いのではないかと思います。
私は、そうして問題に対峙している人間を演劇というツールを介して、皆様の前に生き生きとして再現させたい。そのように考えているのであります。
今回は、若者の生と死についてのテーマと、日本の未来に関わる農業のテーマを作品に入れました。その中で、今の日本ではこういうことが起きているのかということをお感じいただければ、それが一番嬉しいことでございます。
この話で、こういう風に思っていただきたいというような意図を入れるのではなく、その人なりを忠実に再現することが出来れば、きっと我々と同じ気持ちが伝わるものと確信し作品をお届けできればと思います。
本作品はそういう意味で人間の葛藤を描いたドラマであり、その背景にある社会問題はお一人お一人にお考えいただく一つの切欠になればと切に願っております。
もし、このことにご賛同いただけましたならば、私たちの活動と共に歩んでいただければとても有り難く存じます。さらに私たちの活動にご参加いただき、多くの方々に共感できるものを共に作りたいとお考えになられる方との交流も望んでおります。
その切欠になればと思い今回、クラウドファンディングというプロジェクトを作りました。この公演の支援、またこの劇団の未来に投資していただけるのであれば大変有り難く思っておりますが、これを機に色々な方々とご縁が出来ることを一番に願っております。
私たちは多くのジャンルの方々との交流がしたい。そのために私たちが演劇を通じて何かお手伝い出来ないか。
演劇の『伝わる』発信技術を大いに生かしていただいて、ともに社会を考えていけるパートナーとして私たちを選択の一つとしてお考えいただければ、この上ないことでございます。
今回の公演をご覧いただき私たちの本気度をお感じいただければ嬉しく存じます。この公演を切欠に、いつかは全国で公演が出来る劇団へと成長出来ればと思っております。
(外部リンク READYFOR)