1.作品を劇的化させる明確なプロの台本の読み方や意図をお教えしてお互いの理想の共有をしながら稽古を進めて参ります
プロの演劇人は台本をこう読む
「台本初見はお客様と同感覚」
「台本は逆さから読む」
「劇的ということ」
「2時間うちの20秒の話」2.役の人物を介して自分を表現する取り組みで自分を信じる作業をしてより自信を深める取り組みをします
役の人物を介して自分を表現する
「違う人になろうとしない」
「舞台で生き抜く演技とは」
「反復練習は他力が働く」3.稽古環境を楽しくするノウハウで劇場を一体化させる相乗効果のある創作活動を支援し大きな力へと変えます
稽古環境を良くするノウハウ
「ホスピタリティのある空間」
「バトンを繋ぐ創作活動」
自分を変えるのではなく、自分を探し出す作業をすれば、きっと演劇活動は楽しくなる‼
私さいとうつかさは今から30年前に神戸のプロ劇団で演劇活動をスタートさせました。当時の演技の指導はとても厳しく今の自分では人様に自分を披露するのは難しいと考える日々を過ごしていました。
どうしてそうなったかというと、それは稽古中に飛んでくる「ダメ出し」です。時には心無い言葉もありました。
こういう厳しい稽古をくぐり抜けたから今があるとは思うのですが、同時に失うものもありました。演劇を志す仲間も徐々に離れていき、残れる人だけがいる厳しい世界でもあったのです。
これは少し前の時代であれば誰もが経験していたことだと思います。しかし、私の中で一番大切なものを失ってしまったようなものがある・・・それは『自信』です。
多くの俳優が「ダメ出し」を受け入れすぎて自分のデフォルトが「今の自分ではいけない」という心の中にアラートが常にあったように思うのです。
こうすることで自分の技術を向上させていったのは事実です。
しかし、心の中ではいつも「しなければいけない」「するべきだ」というような命令調のモノばかりで、それが出来なければ「自分はダメな奴だ」というレッテルを貼るようなことをしていたのです。
稽古は楽しいと思ったことはなく、何のために芝居をしてるのか路頭に迷うこともありました。しかし、そんな私も色々と演劇の友人が増え、色々なアドバイスをいただきました。
日本だけではなく海外の友人も増え、貴重な経験をさせていただくうちに、海外の友人から一つの衝撃的な言葉が飛び込んできたのです。さいとうはどうして俳優をしているのですか?私は今が一番幸せだと感じるから芝居している
その海外の俳優の純粋な言葉は私の心に刺さりました。
海外の友人の演技を見ると、揺るぎない自信に満ち溢れた圧倒的な演技で、同じ年の俳優とは思えないほどの成熟した演技をしていました。
どうしてここまで大人の芝居が出来るのだろうか・・・今までは才能や素質だけで片付けていましたが、一人の人間のその純粋な心の吐露を聞いた時に、同じ人間なのだということに気づかされ衝撃が走ったのです。どうして同じ人間なのに、こうも自信のある人とない人がいるのだろう・・・
そして、自信のある演技が如何に素晴らしいもので、これ以上自分を表現しえないほどの充実感を体現している。何と素晴らしい人生を送っているのだろうとも感じた。
自信ある人間になることが私たちの目的であって、芝居が上手くなるのが生きる目的ではない
そこに気がつかされたのです。自分を否定して技術を手に入れることよりも、はるかに自分を肯定して技術を吸収している方が良いのだと。
そこには、日本と海外との演劇の環境の差が大きく立ちはだかっていたのでした。日本で演劇を作っている環境は海外の環境とは違います。
私自身も聞く話が殆どでしたが、何度か海外のお芝居のメイキングを拝見したことがあり、そこでも違いは一言で言うと『みんなが楽しんで作品を作っている』でした。どうしてこんなに楽しく作れるのだろうか・・・そこからは海外の友人との会話で段々と見えてきたのです。
海外の俳優の友人の言葉の多くは「want to」だった
そこに「have to」のような言葉はなかった。ここが私と大きく違う点だということが見えたのです。海外の友人は全て自分の動機が「したい」なのです。
では、私はどうすれば「しなければいけない」を『したい』に替えれるのか・・・? この問題が私の演出の原点になったのです。そして行きついた答えが、
『ダメ出し』ではなく『褒め出し』
だったというわけです。
自分を認めて進む人の言葉は「したい」が多く、自分を否定して常に戦い挑む人の言葉は「しなければいけない」が多いのです。
挑むことは、日本の美学でも言われてますが、これは同時に、自分を阻む隠れ要素にもなっているのです。
一番良いのは、自分を認めつつも常に戦いを挑める人が良いのであって、誰もが通用する考え方ではないのです。私が見た感想では、日本での演劇作品を作る現場を回ると、多くのところが・・・というよりもその殆どが、楽しそうにお芝居を作っているという環境ではないと感じました。
どちらかというと「苦しんでいる人の方が多いのかも」と思ったほどです。もし今の演劇界に問題があるのだとしたら、私がこの環境こそが一番の問題と考えました。ですから、その環境を替えて、もっと楽しい環境づくりを演出側から創出させたい。
それが演出の道を志した一番の理由になったわけでございます。
自分を変える作業は「しなければならない」ことが増え、本来の自分を見つける作業は「したい」が増える
このようにキャストさんとスタッフさんと調和を図りながらお芝居を作っていく信条で取り組んでまいりたいと思う次第でございます。
創作演劇のノウハウや演技スキルだけではなく一人一人の自分を見つめ直す生き方についても、何かのヒントになるかと思われます。きっと今までとは違った新しい演劇の扉を開けていただけます。
最後になりますが、今の私があるということは、前所属の劇団の厳しい環境があったからこそのものであってどれ一つ欠けてはいけない貴重な経験をさせていただけたと思います。
その大きな経験は今の私の大きな財産になっております。感謝の気持ちでいっぱいでございます。また数多く海外での公演経験もさせていただき、普通では絶対に成し得ない貴重な経験をさせていただきました。
私の多くの演劇経験の殆どが前に所属しておりました劇団でのことです。あらためて感謝申し上げます。私の演劇人生は本当に幸せだなと感じております。
演出家
さいとうつかさ神戸の劇団道化座に13年間所属し日本全国、海外で公演。現在は役者の勉強会「いわゆるえんげきの会」と劇団ブルアの代表を務めております。ステージ出演回数は400回以上と実践で培った演技指導が強み。劇団以外でも、演技指導、演劇ワークショップを行なう。スタニスラフスキーシステムを独自にアレンジした実践型メゾッド『ゆるえんメソッド』は今までにはない演技練習法として支持を得ております。特長は「ダメ出しではなく褒め出し」「自分を変えないで本来の自分をみつける」という考えで、演技向上だけではなく「自信を深める」演出を行なっております。