
俳優養成講座や演劇ワークショップでかなりの時間をかけて台本の読み方を研究しています。ですが、ここにご参加している方にはご理解いただけているかと思いますが、周りの演劇をされている方々には、正直ここだけの話、なかなかご理解いただけないんです。ここまで台本を研究することに。そこまでしてやらないといけないんですかって感じです。演出時に、こういう風に動いてこういう風に考えてという指示している。でも実はそれ全部役者の仕事なんですよね。私たちは舞台に上がる前に、しっかりと準備した役者の仕事が出来ているのかと問われると、難しいところがあるように思います。
台本を読んでしっかりと演技プランを立てて、稽古に臨む。こういう創作活動は物凄く時間とエネルギーが消費します。役者それぞれの演技プランを演出一人でやれば、3カ月休みなしでも時間は全く足りませんし、とてもやないですけど、体がもちません。そこをもう少しご理解いただければと密かに、また切に願っているところでございます(笑)
だから、一人前に台本を読んで演技プランを身につけることが急務なのです。(私の健康上😂)
演出はそういう仕事では本来ありません。演出というのは、次元の違う情報をしっかりと汲み取って、より抽象度を上げたモノに昇華させ調和を図ることが本来の仕事ですので、演技プランという比較的具体的なモノを考えることに目が行くと、本来の抽象度を上げたものが見えなくなる恐れがあるのです。何故なら、演技プランというのは戦術(タクティス)なので、具体的にどのように表現するかということになるので、抽象度を上げる戦略(ストラテジー)的な戦略へとは逆向きのベクトルになるからです。本来は、さらに戦略から抽象度を上げて、どのように多くの方々に作品の共通部分を見出せるかというのが演出の仕事です。こういった束論で物事を考えれば、共通項が増えるのですね。例えば、柴犬、マルチーズ、ラブラドールレトリバーと言われれば、犬の詳しい方は当たり前のように知っているかもしれませんが、詳しくない方も当然います。この場合、一つ上に抽象度を上げて、犬と一括りにすれば、詳しくない方でも認識は出来るといったことです。こういったように誰もが連想しやすいように抽象度を上げたモノの考え方で、表現を構築するのが演出の本来の役目なのです。この仕事は役者に負けないほどのエネルギーがいるので、演出が役者の仕事にまで顔を突っ込んでしまうと、こういった芸術性が失われる可能性もあるのです。
さらにさらに言うと、素晴らしい俳優の演技を観ると演出はかなりインスパイアされますので、本来はこういった芸術家同士で戦いたいのですね。ですから役者の台本を読む技術はどうしても必要になるのです。
この台本の読み方を教えるのに、一作品で8カ月かけました。
台本を読むだけで8カ月????
有り得ないと思われるかもしれません。ですが、もしそう思われるのであれば、役者の台本の読む技術を甘く見ていると言わざるを得ません。私が演出する時に、演技プランにまで指導することはよくあることですが、この時に、私の演技プランの方向性に納得されない役者さんはほぼいません。何故なら、万人が納得する演技プランを指し示しているからです。自慢のように聞こえましたらすみません💦ですが、これは思って言うよりも難しく、何故難しいかというと、役者の演技の方向性については色々なものがあるからです。それに役者であれば、こういう風に演じてみたいというプランも当然あります。そういった中で演技プランを指し示すということは、意見がぶつかることも当然あるからです。ですが、私の場合、その意見のぶつかりはあったとしても、最後は納得いただけるものを提示しているのです。何故それが出来るのかと言えば、それはとても簡単で、台本を読む技術を使っているからなのです。
台本を読む技術の中には、大きく分けて3つの分類があって、
一つ目は劇的な要素を踏まえたセオリーで演技プランを作るということ
二つ目は人の心を動かす技術を駆使する演技プランを作ること
そして三つ目がホスピタリティーのある演技プランにすること
これは、近江商人の三方良しの考え方と同じなのです。
つまり、 共演者良し、自分良し、演出家良し になるのです。
一つ目は演出家良しの視点で台本を見て演技を作り話の展開をしっかりと踏襲した見せ方で演出のイメージを促進させるということ。二つ目は自分視点で台本を見て演技を作り、如何にやりやすい演技プランにするかということ。そして三つ目は、共演者視点で台本を見て演技を作り如何にお相手が演技しやすいように演技プランを立てるのかということなのです。そして三つ目はさらに相乗効果があり、相手が芝居がしやすくなると、自分も芝居がしやすくなるという意味合いも出てきます。
つまり、演技の組み立ては、お相手が芝居がしやすくなると自動的に自分も楽しくなるということなのです。ここが分かって芝居ができると本当に面白くなります。この三方よしの考え方で演技プランを提示すると、殆どの方が納得できるのです。
勿論、ただ正論を伝えるということはしてはいけません。私の場合は、まず役者にプランがある場合はその役者の意図通りにしてもらうことを心掛けています。そこで、上手くいったかどうかを問うのです。上手くいったというのであれば、共演者はどうですか。そして最後に演出である自分の意見を伝える。もしこの中で一人でも違和感があるなら、その時に初めて私の提案する三方良しの演技プランを提示するのです。こうすることで、指摘ではなく、自らで気付いていただくことをしています。
ただ、こういう稽古でのたねあかしをすると次回からは、私の手の内が読めて、やりにくくなるかもしれませんが……😂
ですが、これが一番役者をリスペクトした稽古の進め方だと思うので、今後も徹底します(笑)
こういうことを言うと、とても偉そうに聞こえるかもしれませんが、でも実際にこうしてお芝居を作ると上手くいくのです。ですが、この三方よしの演技プランになかなか価値を見出してはいただけないのも現状で、そこが非常に辛いところでもあります(笑)
役者は自分の生きる世界を面白く表現する所までが仕事。ここをこれからの若い俳優陣にお伝えしたいところなのですね。ですが、こういう台本を読む技術というのは、とても年月がかかります。再三いうようですが、私は10年かかりました。ですがこの技術を修得すれば、必ず自分に良い役が付くようになります。場と作る役者こそが主役に相応しいので、それは当然のことです。ですので、常に主人公をとお考えの俳優はこの事を是非知っていただければと思います。
私自身はこの台本を読む技術がとても過小評価されているように思います。この技術がもしも凄いと思える人が増えれば、私の生活水準も少しは普通の人と同じレベルになるのかもしれません(アルバイトもできるし)ので、頑張ります😂まぁ、演劇人はみんな苦労してるか……😋

さいとうつかさ
劇団ブルア 代表
劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。
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