
演技は表現するための技術だと思っている人が多いのではないでしょうか。ですが本当の演技というものは、
人の心を動かす技術
これはどういうことかと言いますと、演技というものは、
情動を表現するのではなく動機を表現するものだから
つまり自分の意図で動くものが動機であって、その意図が、
表現しようとする
といった動機が混在してしまうと、本来の役に生きる自分の役の動機が表わせなくなってしまうのです。
めっちゃ難しく申し上げていますね😂ややこしいのはよく分かります。ですので、そこでこういう風に私たちの講座では説明しているのです。役者は自分自身が商品です。その自分自身というのは、役の人物の動機でもって表現することが求められるのですが、その動機を操作している人も自分自身ですから、このような複雑な兼ね合いがあるということを頭に入れておかなければならないのです。
つまり自分自身には二つの動機が混在するということ。
「役の人物の動機」と「役者の動機」
「役の人物の動機」というのは、役者自身が役の人物を演じる時に役の人物ならどのような動機でこの物語を生きるのかということ。一方、「役者の動機」というのは、役の人物を演じようと操作する動機です。この二つの動機を演技者は常に持ち合わせているので、非常に特殊な状態だと言えるのですね。
本来、役の人物を演じる時は、役の人物の動機で演じなければなりません。
ですが、自分が表現する上で「こうしよう」「ああしよう」と考えれば、それは「役者の動機」になってしまう。ですから現場のプロの俳優は、「表現しようとするな」ということがよく言われているのです。
ですがこういったプロの俳優が段々と少なくなって、今やそれをお教えする指導者も少なくなってきている。だから、この事についての重要性が全く分からないまま現場でも「役者の動機」で演じることがまかり通っている。それほど、今や、ほとんどの役者が「表現しようとしている」。これはとても演劇界にとってはとても残念なことで、本物の演技という、それとはかけ離れたものとなっているのが現状だと言わざるを得ません。
大変偉そうなことを申し上げて、これをお読みになる方の中には、気分を害される方もおられるかもしれません。ですが、斯くいう私も、勿論、まだまだ未熟者で、本物の演技というのを追究している身ですから、私自身も本物の演技とは何たるやと公に申し上げることは畏れ多くて申し上げること自体、本当は、はばかります。ですがそれでも、今のところ、支持を得られているところを考えると現時点では自信を持って演技とは何たるものかということを門下生の方々には申し上げており、また、その門下生の方々も、結果を出していると自負しておりますので、畏れながら私自身のブログで申し上げている次第でございますのでご容赦願いたく存じます。
さて、良いお芝居を作るためには「役の人物の動機」で物語を生きることが先ほども申し上げた通り求められます。ですが、人間というのはどうしても無意識に動作する習慣を持っていますので、意識が行かないところ、つまり無意識の動作に「役者の動機」がどうしても現れてしまうのです。
役者の動機で動く主な例を申し上げると、
相手のセリフ終わりに合わせて息を吸いセリフを話すこと
悲しいシーンで涙を流す時に泣こうとすること
とっても苦しい状態なのに息をたっぷり使って話してしまうこと
とっても楽しい状態なのに目が笑ってないこと😂
実はこういう役者の動機から出てくる動作は挙げればきりがありません。こういう時はどうして良いのかよく分からないので、ついついこちらのような表現でやってしまうわけです。
ですがこの時に、こう思いませんか?
例えば、相手のセリフ終わりに合わせて息を吸うということは、相手のセリフがどこで終わるかということを役者は知ってるんですよね。ですが、役の人物は相手の言葉がどこで終わるかなんてわからないんですよ。
実はここに気がつけるかなんです。つまり、
役の人物はどこで息を吸って自分の言葉を発するのか?ということ🤔
なのです。ここを答えらえる役者でないと、リアリティーのある表現が出来ないのです。ですが、この答えは、とても簡単です。
自分の感情が動いた時に息を吸う
これが答えです。相手の話している言葉の一つがキッカケで感情が動くようにするということ。
例えば、私たちはよく相手の言動に腹を立てたと言いますが、役者的感覚で言うとこうなります。
相手の言動に対して自分がどう感じたかで腹を立てたということ
こういう感覚で物事を捉えることが出来ると、自分の感じ方で如何様にも表現が出来ることに気がつけるようになる。
つまり一人の人物であっても、ある一つの感じ方によって「異なった表現」出来るようになるのです。例えば「そんなことで普通怒るか?」という場面で怒る場合、ただ単に沸点の低い人という「性格」を表現できることであったり、心に余裕がないという「状況」を表現できたり、また、毎度同じことばかり言われるからといったような「関係性」を表現できたりと、自分の感じ方で色んな表現が出来ると考えれば表現の幅が広がりますよね。
このような目付で役の人物を考えることができたら、突き詰めて考えることをしなくても、自ずとこだわりたいから自然に表現の可能性を追い求めるようになるんですよね。ここに気がつかないから、いつまで経っても、芝居を面白く取り組めないでいる役者は実は多いのです。
こういった、道理を考えれば、自然と楽しくなるのがこの世界。ですからここを多くのこれからの希望の星(俳優)に知っていただきたいのです。分からん坊は損だと思います。若いうちは自分で情報を取りに行き、それを実践して、自分に合ったことをすれば良い。そうすれば、考える習慣が身につくので、是非とも色々な知識でもって取り組んでいただき、私のこの考えも選択の一つとして受け入れていただければと願います。
さて話を戻しますが、つまり、感情が動く時に息を吸うという動作があるのです。感情のメカニズムはまた後日の回でお話しすることにしますが、ここで今回の表題のテーマである「人の心を動かす技術」。
『身体動作から感情を誘発する』という演技法
があるのです。
先ほどの例をもう一つ取り上げると、「悲しいシーンで涙を流す時に泣こうとすること」というのは、裏を返せば泣けないからそうするのでしょということ😂
つまり役の人物の動機を表現するレベルでもないということ。
だって、役の人物ではないから実際に悲しいことであっても自分ことでないから泣けないじゃんって感じなんです。だから泣こうとしているわけです。その役の人物のことをまるで自分のことのように思って言っても限界がありますし、正直、人の苦しみを理解するためには、同じ境遇にならなければ分かりえないということもあるのです。そういったことを踏まえると、その人の心境になるのは無理だと思ってしまうものですが、演技という技術を使うと、これが出来るようになるのです。それが先ほど申し上げた『身体動作から感情を誘発する』という演技法。
人は、悲しくなる時に無意識に行う動作が実はあるんです。つまり涙腺が崩壊する動作メカニズムがある。この動作メカニズムを作動すれば、自然と涙があふれてくるのです。こういった感情を無理なく誘発させることで、初めて動機というのが表現ができるようになるのです。
本来であれば、人は悲しい時、悲しみに暮れて、涙が込み上げてくるものです。その時に人間の動機というものは、
涙を必死にこらえる
ということをするのです。だから動機を表わすのであれば「必死にこらえること」が正解であって、「泣こうとすること」というのは浅はかな表現で演技ではないのです。
昔はここで、観客の皆さまより絶対に先に涙を見せるなと言われたものです。それは、本来の役の人物は必死になって悲しみを堪えること。ここに美しさがあるからなのです。この身体動作から感情を誘発させるという無意識の動作を意識化してそれを磨くことにより、自然に感情を表出させれば、後は「役の人物の動機」を表現すれば良いだけで、「役者の動機」が現れることはありません。何故なら動機というものは、体の動きで自然と現れるものだからです。ですから、しっかりと本来の自分である役者の動機をしっかりと監視して出さないように、こういった自然に感情が表出する演技術を磨くことが求められるということなのです。
本当はですね。自分の心が動かなければ、演劇って全てにおいて上手くはいかないようになってるんです。自分の心が動くから共演者もスタッフも心が動く。そういうコレクティブパワーがやがては観客の心を動かすのです。
自分も人。そして一番心を動かすのが難しいのは自分自身なのです。何故なら、多くの方々が、環境が変わってから初めて心が動くという習慣を身につけているからです。
ですが、クリエイティブな世界は全てが逆向き。
自分から心が動けば、いずれは周りも変わるということを、これから俳優を目指す方々に是非知っていただきたいのです。役者の動機で動いてしまっている動作は全て自分の心が動いていないからこそ起きる動機なのだということを出来るだけ早く気がつきますように。

さいとうつかさ
劇団ブルア 代表
劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。
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