
俳優であるあなたは稽古で演出としっかりと向き合えていますか。
本日はこんなお話をさせていただきます。
そんなに難しいことではありません。
ですが、とっても重要なことと思ってます。
私たちが大昔に先生方から稽古をつけてもらった時、演出の先生の言うことは絶対でした。
ですが、歳を重ねていく内に、そうでもないなと思うようになりました。
演出も人間。絶対ということはない。
当たり前ですよね。
仮にいくら演出がしっかりと台本を捉えていたとしても、俳優や裏方の兼ね合いでどのような相乗効果が生まれるのか、また、当日の観客の皆さまとの一体感をどのように作っていくのかは、実際にやってみないと分からないことばかりなのです。
ですので、杓子定規では図れない。
他力の部分がどうしても必要になるのです。
他力とは阿弥陀如来のお力
芸術はこのような、謂わば、神秘的な力が働いてこそ魅力ある作品となるので、あらかじめ、計算された絵には魅力を感じられないように思います。
この他力のお話。例えば、演出の意図があったとしても、演出が俳優の演技に魅了されて、自分の演出意図を変えたくなるような思いになる。
すると、今まで見えなかった部分が次々と目の前に現れて、やがて目の前の調和を見ることがある。
まるでそれはジグソーパズルのピースが段々とはまっていくような爽快感さえある。
そのように、自分の凝り固まった考えから解放されて、新たな気づきの道へと誘われる感覚は、当に他力によるお導きのように感じるのです。
「全てがまる」こういう時に、他力は働く。
ですので、演出が絶対であってはならないのですね。
演出も、俳優も自分の役割があって、お互いに高め合うことが何よりも稽古では大切なことと、経験を通じて学びました。
最初に演出と向き合うと書きましたが、これは武道的な考えですが、相手と向き合うことにより己を知るという意味合いが強く、ある種の戦いではありますが、礼節をもって臨むこと。
これが本来の稽古だのだと思います。
ここでの戦いは演出の意図と、役者の意図のぶつかり合い。

その時に俳優は演出の意図をしっかりと理解した上で、そのさらに上のものを持ってくることが出来るのかということ。
稽古で、演出に凄いと思わせる。
そういう気迫で臨めるかということなのです。
綺麗ごとのように思うかもしれませんが、自分の演技に一片の迷いがあると、その時点で、真剣勝負にはなりません。
すでに戦いは負けている。
己に克つこと。
この克己心が今、俳優に必要な心のようにさえ思います。
演技に一片の迷いがないようにするためには、間違っていても良い。
自分が本当に納得したプランで演技すること。これに限ります。

その演技プランを作る方法が、
台本を読む技術
台本には読解力がいると一般には言われてますが、この読解力だけでは解決が出来ません。
寧ろ、この読解力は逆にスコトーマ(≒盲点)が出来る観念を作ってしまう恐れがあるので、私は読解力ではないと思っています。
台本上に演技の答えはなく、飽くまでも演技の答えは自分の初見に読んだ時の心の中にあると思っています。
私たちは俳優は台本を読むごとに、気づきとスコトーマを作っていきます。
何回も読んでいくと、分かってくることもありますが、何回も読んでいくと段々と見えなくなるものも確実に出来るのです。
分かろうとする心が却って逆に見えなくする。
初めて読んだ時の心の衝撃が、演技プランの基礎になることを知らなければならないのです。
何故なら、
俳優である自分が初めて台本を読んだ時、その時が最も観客の心と近いから
なのです。
お客様から共感を得る仕事である私たちは、まず、お客様の見方をしっかりと分かっておく必要がある。
だから台本の初見に見た時の自分の心がとても大切なのです。
分かりやすい例を出すと、自分が台本の初見で心に響いたところは、お客様の心にも響くところ。
台本の初見で見落とした点があれば、それはお客様も見落としがちなところと。
実はとてもシンプルなのです。
このような考えから演技を構築していくのです。
台本を読み方には技術がいる。
その技術を磨くことで、演技のこだわりが出せるのです。
台本の読み方をしっかりとマスターして演技を構築すれば、見ている人の心を動かすこともできる。
何故なら、自分がもし、台本を読む技術でもって作品に対峙すれば、新たな気づきを沢山得られることになり、自分自身が感動するからです。
「こういうことか!」と台本を読んだ時に自分の心から生まれた演技の答えは、もうご披露せずにはいられない。
居ても立ってもおられない衝動に駆られるからです。
台本を読む技術は自分の心を動かず技術でもある。
自分の心が動いた時、その時初めて周りの人の心も動くのです。
ここをこれから俳優を目指される方に是非知っていただきたい。
とはいえ、実際に、この台本の読む技術は、実践的に練習をしなければ、得られるものではありません。
今出来る演劇もある。
ですが、将来の輝かしい舞台に上がるステップとしてこういう何年もかかって修得する技術を出来るだけ早いうちに学んでみては如何でしょうか。

さいとうつかさ
劇団ブルア 代表
劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。