芝居をして良かったなと思うことの一つに、演技練習をしている時の自分との会話があります。
演技練習はほぼ単調な反復練習をするのですが、何故それをするのかというと、無意識の動作を意識化して反復練習するためなのですが、この無意識の動作って実は、感情を誘発させやすいのですね。
一回や二回ではその誘発は起こりませんが、意識化して練習すると自分の中から色々な方法で感覚的なものが降りてきて、それが誘発されたような感覚になるのです。
この時に、自分に自信がない場合は、その降りてくる微弱な信号を受け取ることが出来ないのですが、色々と演技練習をしていく内に、この降りてくる感覚が確信めいたものになり、今やその感覚こそが私の演技の肝になっているのです。
つまり反復練習をしていく内に、自分の心の声が聞こえてくるというような体験が出来て良かったなと思うのです。
心の声をしっかりと聞き、その声の言葉を忠実に守る。
すると良いパフォーマンスが出来るようになった。
これはまさしく自分を信じる作業です。自分の内にうちに答えを見つけるということは、自分の中に全てあるという感覚にもなれる。
そうすると、自分に足りないという感覚も徐々に消えていきます。
さらに、周りと比較することもなくなります。
仮に誰かと比較して自分が何かに劣っていたとしても、それが私には足りないという思いではなく、そこに私はただ単に重要性を感じないというものの考え方が自然に出来ているように思います。
この考えが出来るようになってから、自分の必要と思うものが、段々と目の前に現れてくるような感覚になっているようにも思います。
それは対外的に現れてくるものなのですが、それを見つけられる能力が身に付いたというか、今までも本当は目の前にあったはずなのですが、たまたま見えていなかっただけというような・・・・・・。
つまり自分が選択して見ようとしなかっただけ。
本当は元からあったのに、それが欲しいという感覚がなかっただけなんだと思うようにもなれたのです。
つまり既にあるという観念で臨めば、必要なものが自然と見えてくるということだけなのかなと思うのです。
自分を信じるからこそ、自分の中に全てあるものの一つが浮かび上がるのかなと。
それには自問自答をすること、常に心の声に耳を傾けること。
ここに自信を身につける作業があることに気づけたのが芝居をしてて良かったことです。
反復練習はそういう意味ではとても大切
無意識の動作を模倣して、何回も何回も繰り返し練習します。
するとその体の動く感覚から自然と感情が誘発される。
嬉しいとなれば、心軽やかに、顔はほころぶと、通常ではこのような流れが、心が軽やかになったり顔がほころぶから嬉しくなるような感覚を手に入れることが演技練習で出来たということです。
つまり、鍛えれば感情は自分でコントロールできるようになるのです。
人間は出来るだけ多くの時間を良い感情で過ごしたいものですよね。
その良い感情は、実は自分にだけに作用するのではなく、周りにもとても影響するものです。周りに影響すれば、当然エネルギーは大きくなります。
このエネルギーを感じることが出来るから、自分にも幸せが帰ってきて仕合わせの共有に繋がるのです。
自分を信じ、自分の感情をコントロールして、周りに影響を与えることが出来たならば、それは更なる自信へと繋がります。
俳優は自信をもって、お客様に仕合わせになってもらうことを常から心掛け演技練習に励みたいものですね。
さいとうつかさ
劇団ブルア 代表
劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。さらに、自身のBlog『さいとうつかさの演技力会話力Blog』は1000万PVを超え、多くの方々から支持を得ております。