舞台で演技する時に、押さえておきたいのが舞台での動き方です。

これは小さい劇場ですと、まだ普段の動きでも少しは対応できるのですが、

大きい舞台になると、普段の動きでは全く通用しません。

大きな劇場ですと、声も届かなくなるので声を張ることもしなければいけません。

こうなってくると、当然ですが舞台の演技技術が必要なのです。

ただこの演技技術の話をする前にこの話をまず頭に入れておかないといけないことがあります。

今回は、この話を。

気持ち悪いが丁度良い

これは仕方のないことかもしれませんが、日本人はあまり大きな動作をして話すことを普段はしませんよね。

ですから、大きな動作で話をすると

「大袈裟に感じる」

のですよね。

だからどうしても、心のストッパーが働いてしまうのです。

「動きを堂々と大きく手を思いっきり広げて!」

と言っても、俳優修業の方々は、思いっきり出来ない人が多いのです。

ですから、頭に入れていただきたいこと。それが…

気持ち悪いが丁度良い

ということなのです。

大きな舞台では自分が思っているほど大げさには見えないのです。

逆に小さくしてたら、何をしてるのか全く分からないので、

素人さんが立っている(笑)

ように見えてしまうのです。

ですから思い切って動くことがまず必要なのです。

次に、表現が大きい芝居は良くて、オーバーな表現はダメというお話を致します。

この線引きは難しいと考えている人も多いのですが、これは簡単に言えば、

想像させるような大きな動きは「大きな芝居」で説明っぽい大きな動きが「オーバーな芝居」

と定義します(笑)

よくコメディで大きな芝居をして笑いを誘うシーンがありますが、ウケる俳優とウケない俳優の差はここにあると思います。

また別の言い方をすると、ウケる俳優は、役の人物の動機で大きく動作しているのですが、ウケない俳優は、俳優(自分自身)の動機で大きく動作している。

つまり、大きな動作でもリアリティがないとウケないのです。

ここで、もう一度、先ほどの話を致しますね。

日本人は大きな動作をすると大げさに感じると申し上げましたが、これは「嘘っぽい」と自分で感じているのです。

だけども、「役の人物ならこれくらい大きな動作をしても当たり前でしょっ!」て考えていれば、それは限りなくリアルに見えるものなのです。

要するに、自分の表現に自信を持っているか否かで見え方が変わるのです。

人間の見る感覚というのはとても凄くて、無意識にその表現の奥にあるものを感じ取れるのですね。しかも観客は黙って冷静に見ることが出来ますので、無意識に取り入れる情報はとても多いのだと思うのです。

でも、無意識だから判断は出来ないのです。

「気のせいかな?」というレベルです。おかしな動機で演じていると、「なんか違和感があるな」という程度なのです。

ただこの場合では、大抵、周りの客席も黙ってご覧になられてますので「今のおかしいと思ったのは私だけみたいだな。私がおかしいのだな」という風に自分の問題にされる方もおられるのですが、私はそこに「いえ、そういう感覚の方が実は正しいのですよ」と密かに言いたいのです(笑)

お芝居はやはり、お客様に物語に入っていただくことがとても重要です。

ですので、

俳優はリアリティのある演技でお客様に臨場感を持っていただけるようにすることが仕事なのです。

お客様は目の前で見ていることをあるがままではなく常に想像をめぐらせながらご覧になられています。

その時にリアリティのある演技はその想像を膨らませることに繋げられますが、リアリティのない演技は逆に想像の妨げになるのです。

ではリアリティのある演技とリアリティのない演技とはどういうものか?

それは・・・

リアリティのある演技は簡単に言うと「役の人物の動機で動いている演技」で、

リアリティのない演技はこれも簡単に言うと「演じ手の動機で動いている演技」というわけです。

これを言いかえると、

「自分は全然気持ち悪くない」となれば役の人物の動機となるが「自分が気持ち悪い」と思えば演じ手の動機となる。

そう私は考えております。

私の初心者の頃ですが、同じ作品の公演を何百回としてまして、お客様の違いはもちろんあるのですけど、それでも共通する部分も多くありました。

その中で、共通のリアクション。つまりここは大抵「ウケる」というところがありまして、(いやらしい話ですけど…笑)

それでも、ウケる時とウケない時があったわけですね。

勿論、なんでだろう?って考えるのですが、なかなか分からなかったのです。

お客様も色々いるからな~と考えてましたので…

だから「もう分からないで良いや!」と思って開き直ってやってみたのです。「やけくそ」ですね(笑)

そうしましたら、その時が一番ウケたのです(笑)

この時に、私は「これだ」と思ったのです(笑)

つまり、今まで、なんでだろうって考えてた私の悩んでいる動機が演技に出てしまっていて、

役の人物の動機ではなかったということに気がついた経験が出来たのです。

今までウケていたのはお客様のご配慮の賜物で『たまたまウケていた』ことに気がついたのです(笑)

こうしてお客様に育てていただけるのだなとも思った瞬間でもありました。温かいご支援のお陰で今があります。

お客様に想像をめぐらせる演技をすればするほど、お客様は自分の座席に座っている感覚をなくし話の中に入っていただける。

そのためには、

リアリティのある演技を心掛ける

そのためには、

自分の演技に自信を持つ

ことが重要なのですね。

ですので、冒頭で言いました

「気持ち悪いが丁度良い」

という心がけで普段から大きく練習をすることがとってもとっても重要なのです!

そしてここからがとっても大切なお話だと思っています。

これは普段でもやっていただきたいことです。

それは、

普段から、大きな声で話す。

普段から、大きな動きをする。

自分に自信をつけたいならこれが一番の近道です。

『身体動作から感情を誘発させる』

ここでも出ました(笑)

普段から大きな声を出す。普段から大きな動きをするのは、スポーツであったりもできますが、

大きな声を出していくと、元気が湧いてくる。大きな動作をすると楽しくなる。

これが一番分かりやすく知る方法が演技なのです‼

喜怒哀楽を実際に表現してみれば、感情ってこういう仕組みで湧き上がるのだと分かってくるようになりますので、

感情のコントロールも少しずつ出来るようになります。

普段にも生かせるということがお分かりいただけましたでしょうか?

お分かりいただけましたら、

明日から、お近くの劇団にレッツゴーですよ(笑)

・・・そんなの無理だよ‼

という方のために(笑)

一つ普段の会話で大きな動作を使った

みんながハッピーになる会話での動作を最後にお教えいたします。

まず、相手をハッピーにさせるためには、相手の話に対して大きく反応してあげることです。

一番良いのは、どんな話でも「驚く」を入れてあげれば良いのです。

どんなに「しょーもない・・・」と思ってもです(笑)

といっても、殆どの人は、「驚く」動作をするとオーバーになります。

ですから、大きく動きますが決してオーバーに見えない方法です。

それは、

相手の話に反応した時に「思いっきり息を吸ってください」

そうすると相手は滅茶苦茶驚きます(笑)・・・

そして自分も驚きますよ。

そして次に、

「なんか・・・今から会話が弾むような予感がする・・・」

となります(笑)

こうして、身体動作を大きくすると、楽しくなるようになってるんですよね(笑)

是非お試し下さい。

最後までご覧いただきましてありがとうございました。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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