私たちの行っている役の人物を演じるための演技プラン。

まず、この演技プランという言葉あまり馴染みがないかも知れません。

これは私たちのワークショップでお教えしているところでよく出てくる造語です。

この演技プランは文字通り

演技計画

で、意図通りの演技を構築し、お客様へ正確に伝わる計画を立てるという定義で進めているものです。

ただ、ここでよく聞くのが、

お客様一人一人感じ方は変わるものだから、意図した表現をどのように汲み取っていただけるかなんて分からないと思われる方も多いかと思います。

そのように思われるのもごもっともですが、

私たちの表現がどのように伝わっているのかが分からなければ、それは演技、つまりお客様の心を動かせる技ではないと考え、そこで勝負しなければ俳優の演技術の向上は望めないと思えるのですね。

演技というものは

表現することでお客様がどうお感じになられるかまで責任を持つ

という意識で演技を磨いているのであります。

演技というのは「技」でありますから、

しかし、今の若い方を中心にした演劇にはそれが、生かされていないのでそれはとても残念なことだと率直に思うのです。

気持ちを入れれば芝居は出来るという単純な思いでされている訳ではないのでしょうが、

私たち経験者からすると、そういう技術があるということ自体を知らないのではないかと思うのです。

さらに言うと、今の演劇の多くは、見様見真似で作られている観がありまして、

これは、お客様がどう思うかまで責任を持つ演技術法を知らず、また教えてもらうところもなかったことが大きな原因ではないかと思えるのです。

教える側の立場の人も知らない演技術になっているのではと・・・

色々な事情を聞くと、演劇を教える専門学校の先生は、実際に舞台に立った経験が少ない方も大勢おられるとのことです。

となってきますと、基礎的な技術は教えられても、実践的な技術は当然ですが教えられるとはなりません。

技術職である俳優で年間数本の舞台経験。その経験数だけでお教えすることが出来るのは、この世界だけなのかもしれません。

他の技術職はあまりよく分かりませんが、少なくとも職業でされている場合が殆どだと思いますので、毎日技術と向き合う生活を送られているかと思います。

そう考えると年数回の舞台経験で、その間稽古を行っているとしても、毎日演技術を磨いている環境であるとはとても言えないのではないでしょうか。

厳しいことを申し上げて大変恐縮ですが、これは私自身も自戒の意味を込めてもおります。

この状況下が今日の世間様が抱く演劇への関心として反映されたものであることは否めません。

自分たちのしたい芝居をする

それは素晴らしいことではありますが、それに対する品質の向上はここ30年ほど演劇に関わらせていただいてますが、なされていないのが現状だと思います。

ですので、自分たちの芝居が世間の方々にどのように影響を及ぼすことが出来るのかということを考え、

お客様が見たいという芝居を作る

ことの方が今最も重要なのではないでしょうか。

そんなこと当たり前じゃないかと思われるかもしれませんが、その当然なことでも、私たちには出来ていないというのが今の課題のように思えてなりません。

こういうことを書いてしまうと一生懸命取り組まれてらっしゃる方の中には、気分を害される方もおられるかもしれません。

しかし、私は、誰かを否定しようとかそういうつもりで書いている気持ちは毛頭なく、今の環境を少しでも変えられたらという想いで書いているのであります。

そのため、私は今まで教わったことをこのブログでも余すことなくご紹介したい気持ちでいっぱいですし、この経験した話が少しでもこれからの方々のお役にたてばという想いで、日々記しております。

ただ、誤字脱字が多いのでお見苦しい点も多々あるかとは思いますが、隙間時間で書いている故、何卒ご容赦願いたく、また日々の習慣化して取り組むことが出来れば幾分かは読みやすいものとなると信じ精進して参りますので、引き続きお付き合い願えれば大変有り難く存じます。

話は元に戻りますが、

私はこの改善をどうすれば良いのだろうと考えた時に、私が若かりし頃のことを思い出してみるとこういうことが問題なのではないかと見えてきました。

それは、

演技術は、特殊なメガネをかけないと見えないということです。

特殊なメガネと言いましたが、これは簡単に言うと、

この中に必ず演技術が隠されているに違いない

という探る意識を持つことがこの特殊眼鏡に当たります。

普通に見ていては演技術は分かりません。しかも、名優と言われる方の演技では絶対に分かりません。

技術だと分からないようにするのが演技だからです。

ですので、ここに演技があるという意識で見るためには、穴が開くらいに観ることが肝心で、暗中模索で探ることが求められるのです。

今、演技をお教えてして一番多い質問が、

こういうのが演技だというのは分かります。しかし、では自分で他にここにこういう技術があると見つけるのはやはり難しく、ここがそうだと指摘してもらえないと分からないのです。そこで、どうやってそれが技術だと見破っているのかを教えていただけませんか?

というものです。

私のお教えしているものは、

ここにはこういう演技が隠されています

とまずお教えして、

次に実際にお教えしている人の目の前で実演してみせて、意図通りにお感じになるかを実際に体感してもらう方法をとっています。

さらに、よくやりがちな間違った演技も見せて、どうしてそのように間違った方へ陥るのかという説明も続けます。

ここまでくると大抵の方が演技法についてはご納得をいただけるのですが、問題は、自分の表現シーンに全てそのような演技を駆使するために、それをどのように演じて良いのかが分からないという点と、色んな演技を見たところで、指摘されたところはなるほど分かりますが、それ以外のところは自分では見つけられないのだという点も問題なのです。

この時に私がご説明するのは、

技術は盗むもの

とお伝えしています。

これはどういうことかと言いますと、

自分が知りたくて知りたくて仕方がないという心で見れば見えてくるもの

ということです。

演技は簡単に分かるようなものでは面白くありません。ましてや、そんな簡単に分かるようなものであるような技術を覚えても価値はありません。

ですので、どうしても欲しいという目で実際に行動してみては如何ですかとお伝えしているのです。

これは、もうお分かりのことかと思われますが、教えられるようなものではないのです。

自分の意識の高さの違いで五感て感じる情報受信精度が左右されているからです。

私が教わった時代は、

教えてもらおうと思うな。ピッタリくっついてみとけ!

という感じでした。勿論自分の与えられた仕事もしながら見ている訳ですから、

お師匠さんの目を盗んでお師匠さんを観察しているのです

例えば、よく小さい子が、朝から晩まで新幹線を見ていられるということがありますよね。

あのレベルにまでもっていかないとダメなのです。

小さい子供は好奇心の天才です。

その好奇心が大人になるにつれ段々となくなっていって、物事の本質を見ないでも生きられる術を身につけるとなんでもほどほどになってしまうのでしょうね。

だから、一見賢くはなっているのでしょうけども、技術の世界で言うと大人になるにつれて

バカになっている(笑)

と言えます。

小さい子のように純粋な探求心を備えていれば、

そんなところまで見てるの?と驚くことばかりを発見できるのです。

そして、小さい子にはそこに時間の経過は存在しません。

見るもの見るものが新鮮過ぎて、どうして?どうして?が増大しているのです。

そこから絵本で、図鑑でと見る時に、常にその意識で見ているものですから、

信じられない情報の紐付けとかも出来るようになるのですね。

先ほどの新幹線を見た子供の例で言うと、空気力学なんか知らないはずなのに、この形だから早く走れるとか、動物もこういう風にしているから早く走れるんだという、大人でも知らないことを知ってる場合だってあるのです。

これは、見る意識が完全にそれを欲しているからです。

人間は願望入力すると願いは叶うと言います。

この子どものように、ひたすらそのことを考えることが出来れば、知りたい情報が思いもよらないところからくるのは、知りたいという気持ちから見つけ出させた人間の脳の素晴らしい能力だと思うのです。

私たちは大人になるにつれて、見えないものはないものと簡単に判断してしまいます。それは沢山の情報があると考えるべきことが疎かになるからかもしれません。そうすると余計な情報は要れないとなって、見ないようになっているように思えます。

実際に、演技でも舞台上にいるのにもかかわらず、お客様には見られていないという技があったりします。

それは、手品の原理と全く同じで、他のところに意識を持っていくことにより盲点を作るのです。

このような技術を使われたら、そこに技術があるということは分かりようもないのです。

ですので、まず、

「伝わる演技」を学ぶこと

が重要です。

この技術をたくさん持っていると何だか知らないけど、注目されるようになるのです。

それは、人間を無意識に行動させる技術なので、自然と目が行く絶対的な演技術なのです。

この技術を知れば、かなり魅力的な俳優になれるのです。

お相手の欲しいものは何かを知り、それを提供することが出来る人が何においても一番魅力的な人ですよね。

このように多くの人々に与えられる俳優になることが私たちの目指すところだと思っているところであります。

本当の演技とは、各々でお持ちになられている事とは思います。

ですので、こういう考え方もありますということでお読みいただけると有難く思います。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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