
畏れ多いお題(笑)
これは私の思う本当の演技というお話です。
私のお教えする演劇教室、演劇講座、ワークショップを初めて受講されると、演劇のイメージがガラッと変わるという風に言われる人が殆どです。
それだけ、私の演劇論はかなり変です(笑)
ですが、この考えは今まで実戦の経験から申し上げたものですので、私自身はそれを指針にこれまで30年以上やって参りました。
個々の本質的な部分は見極められるようにはと、それなりの自信を持ってお伝えしております。
勿論だからと言って、今のこの私の演劇論は正解だと思ってもいませんし、これからもっと探求して行けば、また新たな感覚に到達できるのではないかと心底思ってます。
何故そう思うのかというと、そこが私の一番ラッキーなところでもあるし、ある種の強みでもあるのですが、それは海外での演劇活動経験が大きかったからなのです。
狭い環境では見えなかったと気がつかされることが私の人生であまりに多かった。
なんて自分はちっぽけなんだと思う経験を幾度もしてきました。
その度に、自分を省み悔しい経験もたくさんしてきたつもりでございます。
私の演劇の師からよくこのように言われました。
知らないことは恥だと思え
と。私はこの言葉を肝に銘じ、知ったかぶりにならないように、不器用なりにも身体で知ろうと経験を積んでまいりました。
ここでは恥ずかしくて言えない失敗談も数々あり、講座ではそれが私の笑いのネタになっていることもあり、それが面白さのエッセンスになっていると思います。
ですが、不器用な人間だったからこそ、その視点から今演劇をお教えするのは私の最大の武器になっているように思います。
ですので、私の演劇論はどうか画一的なものに捕らわれずに、向き不向きもこだわらずに、ただひたすらに物事を続ける努力をしていければ、災い転じて福となるという怪現象を必ず経験できるので、それを今学んでいる方々に信じていただきたいのです。
欠点が最大の武器になるということは本当にあるのです。
そういう思いで、これからも現場指導ではどんどん失敗談をお話しさせていただこうかなと思います。
ですが、この話ばかりになると、リスペクトが得られなくなることもあるので、ほどほどにはしないといけませんが、自分の自尊心が傷つかない程度、つまり中庸を心掛けております。
さて、今回の表題の本題ですが、
本当の演技とは・・・・・・
ということ。
これはどのようなものか。
ここの話になるのですが、これはあくまでも私の一意見です。
ですが、これについても私は本質的なものの見方が出来ている自信がありますので、是非参考にしていただければと思います。
本当の演技とは、「人の心を動かす術」ではないかと思ってます。
それは、観客だけではなく、共に作っている仲間であったり、共演者であったり、自分であったり。
これはおそらく、どなたも思われていることかもしれませんが、実際の行動的な部分において、例えばこの中で、自分の心を動かす技術を駆使している人・・・・・・、これは少ないと感じたのです。
外的作用に感化されて自分の心が動く。
これは自分の頭の中では殆どの方が分かっていることだと思うのです。
では、その具体的にどのように自分の心を動かせるのかという技術には、あまり触れていないように思うのです。
どこか感覚だけで演技している。
そのように捉えている演者が多いように思います。
ですが、これですと、実は演技術にはなりえません。
何故なら感覚だけで処理してしまうと、環境が変わるとその感覚が生かせないこともあるからです。
ましてや、劇場の舞台で演じるということは、普通の感覚で舞台に立つことの方が難しく、そのような状況で自分の感覚を合わせるということは、レーシングカーの中で針に糸を通すようなものだと思います。
心拍数も上がるので、当然平静ではありません。
その中で演技をするということはとても難しいことなのです。
ですから多くの方が、普段通りに芝居が出来ないのです。
よく本番に強いという人もいますが、それは経験不足の方がよく言われることで、経験を積んでいくと、本当に舞台ではありえないことが本当に起きるので、それを経験してしまうと、本番に強いと言っている自分が今まではたまたまうまくいっていたということに気がつくことになるのです。
つまり、どんな状況でも、良いパフォーマンスを出すというのは、普段の練習の取組みが何よりも大切で、その備えがあるからこそ、どんな時に対応し得るものだということを理解しなければならないのです。
おごりが舞台の最大の敵だと思って丁度良いと思います。
ですので、その時々の感覚に任せて表現するのは実は演技でも何でもなく、ただ単に演じているだけということに、本当の演技を身につければ気がつくようになるのです。
ではどうすればこの『本当の演技』を身につけれることが出来るのかということですが、この説明は物凄く簡単です。
例えば、自分の心を動かせる技術の場合だと、
感情を誘発させるメカニズムを自分の中で構築
出来れば良いのです。
そして、その構築は無意識にまで落とし込むことが求めらます。
車の運転でもそうですが、慣れてくれば、まっすぐ走っている時にハンドルを意識して動かしている人はほぼいませんよね。
そうするとほど自動的にハンドルを握ってるわけですけど、それはもう無意識に動かしている訳です。
無意識に動かすことが出来るから、運転が慣れている人は初心者の方よりも様々な危険予知に対応できたりするのです。
助手席の人との会話も楽しめますよね。
そのように感情を誘発させるメカニズムを無意識の体の中に落とし込むことが出来れば、
感情を出す
という役者の動機も自然と消えるわけです。
ですが、今、感情を出して演じている役者が本当に多いように思います。
熱演のように感じますが、果たしてそれで本当に良いのでしょうか。
私はこのことにとても危機感を感じております。
感情を入れれば演技ができると思っている訳ではないとは思いますが、この感情を誘発させる演技法があまりに知られていない今の演劇の世界にとても違和感を感じるのです。
ですので、このことをまずこれから演劇を始める方々に出来るだけ多く知って欲しいと思い、講座、教室、ワークショップだけでなく、このようなインターネットとかでも発信している次第でございます。
そして実は、この演技を知って体得するだけでも、頭一つ抜き出た俳優になることも分かっています。
それは、ここではあまり深くは書きませんが、簡単に説明すると、リアリティーのある演技の方が、共鳴効果が働き、共感を得やすいからなのです。
人は共感する人に関心を寄せます。
ですから、そういうリアリティーのある演技をする人に見入ってしまうのです。
これは印象によっても変わります。
共感は心に響くので、観客は自分の心で感じた言葉で感想を述べます。
その時に、共感を得た俳優に関しては、作品の世界にはない言葉が出てきたりして、観客ご自身から新たな創造物がそこから生まれることもあるのです。
この想像エネルギーが連鎖反応として出てくる人は、元気をもらったという状態になるので、「ありがとう」と観客からお礼のお言葉をいただけるようになる。
このことはそういう流れが実はあるからなのです。
芸術はそういった意味で、心を豊かにして、生きる活力をみなぎらせる役割があります。
豊かな心が自分を動かすとより豊かなものを引き寄せます。
そういう意味でも技術は素晴らしいものだと思います。
その芸術性を磨くためにリアリティーのある演技を求めることが必須になるわけなのです。
抽象度の高い芸術の中に真実(リアリティー)がある。
そういう風にお感じいただけることが観客の皆様にとって至福の喜び。
何故ならその素晴らしい芸術家と抽象的な部分、つまり根本的な部分で一つになる、または同期できたような気分になり、自分を高みに上げるような、崇高な心にさせてくれるのです。
私たち俳優もそのようにありたいと考えるのであります。
ですからリアリティーのある演技はとても大切なのです。
先ほど取り上げました、感情を出すという表現はリアリティーではありません。
怒ろうとして怒る人はいませんし、泣こうとして泣いている人もいません。
本当ならば、自分の感情が湧き上がってくるのですが、それを必死にこらえることの方がリアリティーがあるのです。
また、演者が感情を出そうとすることは、自分の中でそういった本当の感情が湧き上がらないから、感情を出すという行為になっているので、自分に嘘をついている表現になっているのです。
演技は嘘ではありません。
演技しているというと嘘のイメージを持たれる方が多いと思いますが、決してそうではないのです。
本当の感情を湧き上がらせる。それが本当の演技なのです。
演技には色々な種類のものがありますが、全てにおいて、自分が真実だと思えるところまでに心をコントロールすることが本当の演技です。
こうすればこう見えますという人に見せる演技も当然あります。
しかし、その演技も、自分が納得していなければ、いくら精巧にマネできた表現であっても、その納得できていない心の内は、観客に見透かされるのです。
無意識のよる動作で、無意識に伝わるのはそういうことなのです。
ここをまず知ることからが俳優の最初の一歩になる。
私はそのように思っており、これからも発信デッキればと思います。
もしも、今の演劇に違和感があるとお感じになられましたら、当方の講座等で解決できるかと思いますので、是非お気軽にお問合せください。
本格的に演技を学ばれたい方はこちらの講座がお薦めです
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さいとうつかさ
劇団ブルア 代表
劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。さらに、自身のBlog『さいとうつかさの演技力会話力Blog』は1000万PVを超え、多くの方々から支持を得ております。