俳優のお仕事は感覚がとっても大切でして、

周りの目に流されずに自分の感覚を指針にして演技に取り組むことが求められます。

そのためには、「強い自分」がとても大切で、周りに影響されいるようでは自分の感覚を大切にしているとは言えません。

しかし昨今の演劇の創作活動では、演出の言うことが絶対なところもあり、演出の指針で自分の演技が決定されているという残念な風潮があります。

「もっと、演出と戦ってほしい」

そういう願いも今回込めようと思います。

まず、

このような疑問があるかもしれません。

「演出の言うことを聞かなければ纏まりのない作品になるから、演出の言うとおりにするのは当たり前でしょ?」

その通りでございます(笑)

最終的には演出の意向に沿わなければいけません。

ただ、演出はこういう風にも思ってます。

「そう来たか!!…有りだなそれ!!」

こういう感じで、演出の言うことを聞くだけではなく、提案する関係であれば良いなと思うのです。

君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず

ということで、演出の言うことを聞くだけでは、演出の意向に依存することになるので、あくまでも対等な立場で、意見を出し合いたいですよねというのが私の意見です。

でも、私の知るお芝居を作る現状では、

結構、

「演出が先生。俳優が生徒」

のようになってまして、

そうなれば、

先生の言うことを聞かない生徒は…なんだか口答えしているみたいで嫌ですよね(笑)

ですので、稽古で自分の意見をしっかり言えるようにするには、お互いが意見を言い合える環境が必要だと思います。

しかし、この環境が少ないのも事実です。

それは、環境を作る人の意識が「演劇を作るための要素」をよく理解されていないのが一因だと思えます。

また、俳優自身が、演出依存により創造することを放棄していることも一因にあると思っています。

では、

私の思う理想の作品の作り方はというと…

良いお芝居を作るには誰もが満足して誰もがやりたいと思えるようなものに作り上げることが理想です。そのためには全員が自分の感覚を大切にして自分の考えを作品に反映させる必要があるのです。

でもこれはとっても難しいことです。

これが出来たら「奇跡」だと思ってます(笑)

しかしこの奇跡がなければ、

作品に魂が入らず、良い作品とは成りえないというのが私の考えにはあります。

ですので、作品を作るには毎回「奇跡」が必要で、

毎回奇跡を起こすためにはどうすればいいかという問題に取り組んでいます。

毎回「とんでもないことを起こさないと」という想いですね(笑)

自分の実力で作り上げるという認識ではなく、みんなが一つになって奇跡を起こすんだという想いで創作活動していければと、そういつも願っています。

こういう経緯から、各々の感性を大切にという想いが生まれました。

みんなが意見を出し合って作り上げるためには、自分の感覚を主張することが大切です。

ですので、自分の感覚を大切にするためにはどうすれば良いのかを次に話してみます。

マヒした感覚を取り戻せ

私たちは常識だと思うとおかしなことが起きてても、気がつかないことが結構あったりしますよね。

私がおかしいなと思うことは…

「稽古中に寝るな」

という一般常識です(笑)

こんなことを書くと常識がないなと思われるかもしれませんが

私のへ理屈にもう少しお付き合いを(笑)

前から人の稽古を見てる状況で、コクリコクリと船を漕がれる人がおられます。

そうすると、

「あいつは稽古中に居眠りしやがってケシカラン!」とご立腹される人がおられるんです。

こう思われる方は多いかなと思うのですが、

これは、こういう雰囲気を作っている演出や役者にも問題があると私は思っています。

言わば「全員の問題」ということです。

何故なら、こういうことも言えるからです。

「眠たくなるような演技をする方の悪い」

「それを放任する演出も悪い」

「みんなの稽古に対する思いも悪い」

つまり全員悪いのです(笑)

私はしっかりと取り組んでますよという人もおられるかもしれませんが、

その場合は、しっかりと取り組んでいるという気概が周りに影響を及ぼしていないから悪い(笑)

「そんなの絶対無理じゃない!!」

そう思われますよね。

私もそう思います。無茶苦茶です(笑)

だから!!

『奇跡』が必要だと思ってるのです(笑)

話を元に戻しますが、

この「稽古中に寝てしまう感覚」

実はこれ侮れません。

恐らく、このような稽古を続けていると本番でも子守歌になって観客が眠ってしまうことに繋がりかねないからです。

ある劇場の話ですが、とっても座り心地の良い客席シートがありまして、上質空間を提供しているのですが、

ここのシートは別名…

「お休みシート」

でもあり、

よく眠れるんです(笑)

冗談で普段眠れない方にお薦めしてたくらいです(笑)

暗くて、座り心地の良いシートにいるとこういう明暗があります。

面白くて次の展開がどうなるかワクワクしていれば、他のことが気にならないくらい楽しい空間になるのですが、面白くないけど舞台を観なければいけないような集中状態になれば、やがて睡魔との戦いにあっさりと負けることになる(笑)

ですので、稽古での居眠りは眠気を誘う作品を作らないための警鐘でもあるのだという理屈です。

稽古は、絶対に付き合わせているような環境ではいけません。

つまらない演技をしている側に本来問題があるのに、そこを触れずに、ただ寝ている方を批判するのは少しおかしいという話です。

それに、このつまらなくて寝てしまうという感性はとっても素敵なことでもあります。自分の感性に忠実に従って行動している行為だと言えます。

ただ、これはなかなか理解できない考え方かもしれませんね。

変わった意見だとは思います。

しかし、このような考えを矯正をさせていくと、画一的な人間ばかりになり、これが今の演劇界の最大の問題ではないかと私は真剣に思っています。

個々の個性をぶつけ合って一つになる作品。

それがどれほど素晴らしいか、多くの人に感じていただい。

そのために演劇人は

君子和して同ぜず

を心掛けたいと思っています。

常識から見えなくなるものは、

抑え込まれた感覚で、

この感覚を大切にできないから、本気になれないのです。

好きなことをしているはずなのに、苦行をしている人は意外に多い。

最後までお読みくださいましてありがとうございました。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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