思考はエネルギーであると言われております。
自分が思ったことはエネルギーなのです。
自分の思ったことは感情となって周りに放出されている。
そしてそのエネルギーは波長のあうもの同士で共鳴し共感を得る。
今、科学の世界でこのようなことが言われております。
共感することで繋がる。
つまり自分の周りには自分と同じような波動を出している人が集まるということも言えます。
また自分の波動が強ければ、色々な人が集まるけれど、合わない人は徐々に離れていくようにもなっていると感じます。
人との繋がりはこうしたエネルギー要素がとても重要なのではないかと演劇人として思います。
舞台にお越しいただく時は、お客様にお時間を作っていただき、お金も頂いてるわけですから、当然のことながら、それ以上の価値を舞台人は提供しなければなりません。
この時に、どうすれば素晴らしい価値をお客様に提供できるのかと言いますと、観客お一人おひとりに楽しんでいただくことももちろん大事なことですが、「ここまで来て良かった!」と思えるような体験をしていただくことが一番の目的なのです。
楽しんでいただくだけであれば、ビデオなどの動画で好きな時にご覧いただけるサービスだけで良いのですが、生の舞台は、臨場感を楽しんでいただくことが最大の醍醐味で、その臨場感は心の浄化、つまりカタルシスを起こすためにあると言っても過言ではありません。
そのカタルシスってそんなに凄いことなの・・・・・・?
そのように思われる方もおられるでしょう。
ですので今回はここからお話しできればと思います。
先ほどの話に戻ります。
では、どうすれば心の浄化作用を引き起こせるのか。
実はここに演劇の面白さがあるのです。
演劇には色々な演出方法がありますが、オーソドックスな手法で言いますと、劇的手法を取り入れることなのです。
劇的手法とは、普通だったら起こらないことが何かの出来事で起きてしまうといった非日常的な要素を取り入れるということです。
そして、普通とは違った話の展開に持っていく。
いわば予想がつかない展開に持っていく手法を劇的手法とここでは言います。
次の展開がどうなるのか、そうしてお客様の関心を引き寄せるのですね。
さらに言うと、その展開は大きければ大きいほど、より劇的な印象が増すので、舞台の作り手はアッと驚くような展開を用意します。
例えば、戯曲作家であれば、誰もが話の展開を予期できないという結末を考えたストーリーを作り、役者はその展開をお客様に絶対に分からせないような技術で表現をする。
裏方も様々な表現でお客様にアシストしたり、または奇想天外な表現を用意したりと
作り手全体が劇的な要素を考えた上でお客様を作品の世界に誘う
ことをするのです。
ここで劇的なインパクトをつけるための簡単な考え方があって、例えば、悲劇であれば、物語の始まりはとても幸せなところから始まり、絶対に悲劇的な要素が起きないように仕上げるのがセオリーで、それでも、不運の契機を境に運命が急変してしまうという流れで作っていくのです。
上記のことは、このようにするとお客様が作品の中に入りやすいということです。
ですが、これだけでは臨場感が上がるだけ。
一番大切なものは、やはり役者の表現力になるのです
お芝居に一番大切なことは、劇的な出来事による主人公の心の葛藤をお客様が如何に共感できるかということにかかってきます。
そのためには、主人公は常にお客様と寄り添うような演技をしなければなりません。
この時に重要なのが、このように表現すればこうお感じになられるというものではなく、
思えば伝わる
という一念で舞台に立つということが大切なのです。
ここでこう動こうとか、ここでこういう言いかたをしようとか、そういうよこしまなものを一切取り除いて、飽くまでも役の人物の動機で動くにはこの思えば伝わるというところで勝負をしなければならないのです。
思えば伝わる……
これは究極の演技の一つ。
役の人物として生きるのであれば、自分を表現するなんてことは考えません。
ましてや、自分の役の人物の意識以外の部分もしっかりと表現するのは、意図的な表現だけでは絶対に現わせないのです。
舞台の上で、今まさに生きているという表現は今をしっかりと感じなければできない表現なのです。
役者は未来が分かって物語の世界にいます。
これは実はとても難しいことで、決められたレールをしっかりといけるかという不安が常に付きまとっている状況でもあるわけです。
「このセリフが出なければ、次の展開には進めない」というようなことはザラにあり、そういう決め事があるがゆえに、未来を憂い、今をしっかりと生きることが出来ないということは十分にあるからです。
また、一つのミスをして過去を省みて、今を生きることが出来ないこともある。
つまり役者が舞台の上で今を生きるということは余計なことを考えないようにすることがとても大事なのです。
気がついたらこう動いていたと、終演後に言えるような状態が一番良くて、上演中にあれこれ考えて動くことは舞台上で今を生きることを阻害してしまうことに繋がるのです。
ですから、役者は物語の中で常に今を生きているという表現が求められます。
そして、これが今回、最も言いたいことなのですが、
今を生きているという表現こそが、お客様にとって一番エネルギーが伝わりやすいということ
なのです。
お客様は今まさに自分のことのように感情移入し主人公を観ている。
この時、お客様は主人公のエネルギー(思考)をしっかり受け取ろうと心が開いた状態になっている。
だからその時の動きやセリフが心に飛び込みやすくなるのです。
思考が感情のエネルギーとなって心に入り、同じ波長に合わせたお客様が共振し、共感を得る。
ひいては共感したお客様が大多数ならば、劇場全体が強大なエネルギーとなり、その見えない強大なエネルギーを受け取ることで、そこにおられる方々の心の浄化が起こるのです。
素敵な舞台を観終わった後、すっきりした良い気分になって劇場を後にするということは当にそういうことで、さっきまで、涙をボロボロ流していたのに、劇場を出ると妙にテンションが高くなったり、元気が湧いてくるのはあるあるなのですね。
この時に意識して感じて欲しいのは、劇場を出たあと、全ての景色が綺麗に見えるということなのです。
全てのものに愛でるといった感情があることに気がついて欲しい
のです。
心の浄化はそういう素晴らしい効果があるのです。
さらに言うとこの心の浄化によって愛でる心は、自分の気分をよくすることだけに留まらず、周りにも即座に良い影響を与えるので、知らず知らず、ついていることが起きるのです。
物事をよく見るということは、それだけで良いエネルギーを放っているということです。
これが一番最初に書いた思考はエネルギーだということなのです。
普段からめい想など、自分と向き合うことをされてらっしゃる方ならこの心の浄化は自分の周りと良好関係を築けるとても素晴らしいことであることは認識されておられると思いますが、劇場へお越し頂ければ、その効果が意図せず瞬時に劇的に得られるのですよ。
芸術にはそういった力があるのです。
ただ、残念なことに、この素晴らしい効果は、あまり知られておりません。
目に見えないエネルギーが信じられないという方のお気持ちもよく分かりますが、だからと言ってそういった力に意味がないというのは私ども一演劇人からしてみればとても残念な気がします。
何故なら、私はそのような強大なエネルギーに助けられ、また恩恵をいただけた一人だからです。
信じられないような話かもしれませんが、今量子力学でも、こういった話が出来てきているということも言われてます。
もしそうなった時に、演劇がフォーカスされるのは間違いのないことだと思います。
また演劇は、今後のAIのコミュニケーション技術においても大切な役割を果たすものと確信しております。
もし、この話にご関心がありましたら、是非ご連絡ください。
いつもでこちらの技術を提供する用意が出来ております。
最後に、一つ。
演技というのは観客のためだけにあるのではなく、演技者自身のためにもあるのです。
何故なら、演技というものは自分の五感からすべて始まり、その感情が体を伝って表現に至るのです。
つまり、感情こそが体とのコミュニケーションツールになっているのです。
この感情がまがい物であれば、身体は間違いなく反応しません。
真にこの感情であるというものにしか体は反応しないのです。
ですから、演技というのは自分に嘘をつかない技術とも言えるのではないでしょうか。
このことを広く知っていただければ、演劇というのは実はもの凄いことなんだと理解される方も増えるのではないでしょうか。
ですがこのことについて、少しずつではありますが、ご関心をお寄せいただけているようにも思います。
それは、私にとってとても幸せなことです。
演劇をもっと身近に。
さいとうつかさ
劇団ブルア 代表
劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。さらに、自身のBlog『さいとうつかさの演技力会話力Blog』は1000万PVを超え、多くの方々から支持を得ております。