今回はあまり知られていない舞台裏の話をさせて頂きます。
舞台ってどうやって作っていると思いますか?
限られた時間の中で、大道具の建て込み、照明のつり込み、音響の音出しセッティングを行っています。
その他にも、小道具のセッティング、楽屋作り、会場受付の準備など
多様なお仕事があります。
舞台作りの責任者は舞台監督と言います。
この方が、当日のタイムスケジュールを一括して管理して
舞台づくりの進捗をみてディレクションを行っています。
私、演出の仕事は舞台にまつわる全ての決定権があり、舞台づくりの時は、全体を見ているのがお仕事です。
ですので、決め事、現場でのトラブルの解決など
すぐに顔が出せるようにしています。
ざっくり言うとこんな感じです。
今回は2021年9月5日(日)に、私が外部演出させて頂きました、
兵庫県加古川市の劇団ここからの公演
『樫の木坂四姉妹』
の舞台裏を少しご紹介いたします。
では具体的に舞台裏を写真でご覧ください。
屋台の仕込み
家屋になっている高い台のことを舞台専門用語で『屋台』(やたい)と言います。
屋台の構成は足場となる箱馬(はこうま)に、平台(ひらだい)という約1820㎜×910㎜の台を載せている簡易構造です。
舞台は安全に作るのも大切なのですが、公演が終われば素早く片付けられるようにするための工夫が施されており、
しっかりしてすぐにばらせるという、大道具さんの職人技があるのです。
平台の寸法も上記の三六(さぶろく)の他に、三九(さんきゅう)、六六(ろくろく)など
尺貫法の三尺(さんじゃく)という910mmの倍数を基準に作られていて、日本家屋ベースのスケールで今も作られているのですよ。
ですので、大道具を作ってらっしゃる職人さんは尺貫法で話されます。
世間の大工の職人さんはミリ単位で話をされますが、舞台の職人さんは尺単位で話をしますので、少し変わった世界に見えるかもしれませんね。
釘一本でも言い方はそれぞれで、
38㎜(さんぱち)という人もいれば、インチ半(いんちはん)と寸法は同じなのですが、違う言い方をされていて現場でも様々なのです。
寸法の呼び方で普段、この方がどこメインでお仕事されているかが分かったりもするので面白いですね。
屋台奥に壁が立っています。パネルと言います。写真の場合パネルは全部独立して立っているのですが、
裏に人形たて(にんぎょうたて)という道具を使って立てています。
直角三角形に組んだ木材で出来た道具です。
この道具を使ってパネル裏面からパネルと地面のそれぞれに固定しパネルが前に倒れこまないようにします。
パネルが稼働する場合は地面側に鎮という「おもり」を使う場合が多く、
固定する場合は、地面に直接人形たてを釘で打ち付けたりもします。
ただし、この頃は舞台床面釘打ち禁止のところが殆どなので
平台のような木の素材でできたところにしか
釘打ちできないようになっているようです。
ただ、平台も釘打ち禁止のところが勿論あるので
現場作業全般は劇場管理責任者の指示に従って作業しましょう
話は少しそれましたが、
釘打ちして完全に動かない状態を舞台用語では殺す「ころす」と言います。
ちょっと怖いでしょ(笑)
でも、ここまで分かれば、少し舞台通になった気分でしょ(笑)
私は道具さんではないので、あまり詳しくはないのですが、他にもたくさんの職人技があったり舞台用語があるので結構面白いですよ。
もう一つご紹介すると
先ほどの話に出てきた「おもり」で使っていた鎮(しず)。
これは本来、舞台には欠かせない装置で使われているものなのです。
何だかお分かりになりますでしょうか?
正解は「綱場」という舞台のセットや幕などを吊り込むバトン操作する場所がありまして、そこで使用する「おもり」なのです。
バトンの昇降は、普段我々がよく乗っているエレベーターのカウンターウェイトとほぼ同じ原理で、
吊り込む重量が重ければ、バトンをあげるのが大変重くなります。
そこで、引き上げる方の動力に鎮(しず)を載せれば重量バランスのつり合いが取れて、
吊り込んだ重たい装置でも楽々引き上げることが出来るという具合なのです。
ただ、これは劇場関係者の方の仕事なので劇場利用者の方はあまり関係はありませんが
この作業はとても注意が必要で、
バラシをする際に、吊りものセットを吊った状態で鎮の増減でつり合いバランスを取っていたならば、
吊りものセットをバトンから外した時に鎮の増減を元に戻しておかないと
空バトンになるので、バランスが変わり、うっかり操作すると大事故に繋がるそうです。
綱場は劇場管理者以外立ち入り禁止ですので、
劇場管理者以外は触ってはいけません。
その他にも
現場は安全第一ですから、どんなに小さな規模の劇場でもどんな状況でも
何事も劇場管理者に確認をするというのを徹底をしましょう。
もし現場作業を手伝うことがありましたら、
現場管理の責任者の指示の下で行いましょう。
このことだけは劇場を利用する際には絶対に守ってください。
では次のページで照明を見てみましょう。