2.立ち位置で見てもらう方向性を作る

例えば、大きな舞台で二人が会話をしているといます。この時舞台の上下(左右)端に離れて会話をするとどうなるかというと…お客様は会話をしている間、ずっと首を大きく振って話をしている人の顔を見ますので結構大変なのですね(笑) ですので、会話をしている時は、出来るだけ方向性が合うようところで話をするとお客様に親切になります。

例えば、上手側で話をしているならば、聞き手も上手側に寄って、出来るだけ観客が首を振らないようにしてあげること。こうすると、話し手の顔も聞き手も顔もさほど首を動かさずに済むのですね。どうしても離れて会話をしなければいけない場合は、

も、実は必要になってくるのです。話し終わった後に聞き手の顔を見るとすでにリアクションが終わっていて、聞き手の演技が見ていただけないことが結構あるのです。これを防止するために、台詞は普通に反応しますが、動作を若干ずらして、話し終わった後に聞き手のこちら側を見た時に丁度そのリアクションを見せるということもするのですね。

このようにお客様時間で、お芝居は進めていかないといけないので、極めて冷静に計算して舞台に立たないといけないのです。普段生きている感覚ではなくて、舞台の感覚は凄く計算されたものが多いのです。後は、舞台で自分を見せたい時は、前に出て、終わったらさりげなく後ろに下がるということもあります。この時に、前に出てくる動機、後ろに下がる動機がなければ、自分をアピールしてただけだなと無意識にお客様に感じてしまわれる可能性もあるので注意しましょう。役者の動機をみせると作品に集中できなくなりますからこれは本当に要注意です。

位置取りの原則としては何を見せたいのかという効果的な役割もあるので、役者のプランでここで喋りたいけど、全体の絵として成立するのかというところまでは考えないといけません。それで演出の意向と擦り合わせていくのですが、演出が言わなくても位置取りの良い俳優がいると、稽古の雰囲気が格段に良くなります。俳優の位置取りが悪いと演出は「そんなことまで言わないといけないのか?」となってしまう場合もあったりしますから…(笑)

という様に、舞台の基本知識以外にも演技で効果的に魅せる方法がたくさんあって、こういったものは気持ちだけでは絶対に出来ません。一度自分の心と身体の仕組みを知るために分解してプラモデルのように組み合わせる作業が演技練習にはいるのです。このことが分かれば、演技をより効果的に魅せたいとなるので、立ち位置などにもこだわりが出てくるのです。

こういう客観的な視点を持つことが演技の幅を広げる方法になるので、若い世代の俳優の方々には、いち早くそのことに気がついて取り組んでいただければ、より魅力的な人になれると思います。

世の中には奇麗は人は沢山いますが、奇麗な動きをするという意識の人はまだ少ないのかなと思います。鏡に映る静止画よりも、ちょっとした仕草や、姿勢に人は心奪われるものです。写真のことはあまりよく分かりませんが、私は「躍動感のある写真」にとても惹かれます。その一瞬を捉えた写真の技術は、私たちの演技のこだわりとかなりの近いのではないかと勝手に想像しています。写真であっても、まるでその被写体が動いているように見えてそこから思いを馳せるものがあるからです。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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