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演技修得が何故難しいのは、

「演技というのは見えない技術」

だからです。

もう本当にこの一言に尽きます。

見えない技術はどこに技術があるかかが分からない。

存在自体がないものを身につけるのは不可能だからです。

ですから、まず演技を修得するために技を見つける能力が必要になるのです。

そうすると、段々とスコトーマ(盲点)がなくなり、目の前に現れるようになります。

ではこのスコトーマをどのようになくしていくのか・・・・・・?

今回はこの話をさせていただきます。

まず演技というのは基本的にセリフであっても動作であっても反復練習で身につけることが出来ます。

ですので、

というセリフ表現であったり動作表現を覚えることで演技の上達が見込めます。

ですが、それはあくまでも、それが技術ですとお教えすれば、分かるものであって、技術が分からなければ、教わる方だけでなく教える側も何を教えて良いか分からない状態になるのです。

芸事は盗んで覚えろという言葉が言われます。

これは教える側からすると、教えようのないものであるからというのが一番の理由ではありますが、演技に対してどれほどの価値を見出せるかというところにもかかってくるからでもあるのです。

自分の中で演技術の価値がそれほどでもなければ、当然取りに行こうという気持ちも薄れます。

ですので、盗む側がどうしても欲しいと思えるようなものでなければ、得られないものでもあるわけです。

理屈で言うと少し難しく思われるかもしれませんが、簡単に言うと、尊敬している先輩方の演技をどれだけ素晴らしいものかと捉えれれている人にしか、価値は見いだせず、その技術を我が物にしたいという欲求がなければ、素晴らしい演技というのは見えないものにどうやらなっているようなのです。

演技は真似事から始めるのはそういう意味でもとても大切で、細かな模倣を反復練習することで、段々と演技が見えてくるという寸法なのです。

ですがここで落とし穴があり、それは何かというと、演技というのはいくら真似をしていても、人によってはその演技が成立しないということがあるのです。

簡単に言うと、同じ動きをしていても

ということもあるのです。

というよりも、殆どがそういう場合になるのです。

ここが演技を自分のものにするところの難しさでもあり、逆にシンプルなことでもあるのです。

それはどういうことかと言いますと、結局のところ、自分の演技がこれで良いんだと心の底から納得できたものであれば、どんな動きでも表現として成立するということなのです。

つまり、先輩の素晴らしい演技を真似して、その真似した表現が自分の中でしっくりと着て動けることが出来た時に初めて自分の演技となるのです。

ですが、これは言葉では簡単に聞こえますが、実際にやるとなると難しい。

何故なら、自分自身を納得させるのは難しいからです。

人の動きを真似る。

そうすると、どうしても最初は合わない感覚が出てきます。

ですがその気持ち悪さを段々とやっていくと、あるところで、その気持ち悪さがなくなり、自分に丁度良い感じの動作になるのです。

ただ、ここで注意しなければいけないことが一つあって、その動作自体に自分の感情が誘発されたものがなければ、その動作は偽物の演技になる可能性が出てくるのです。

これは気持ち悪くないと思い込むだけでは難しく、動作の連動性や、セリフの言い難さに現れてきます。

この時にセリフが言い難いからといって、言いやすく練習すると、その違和感が残ったままの表現となり偽物の演技を貫くことがあるので、この感情の誘発される感覚がもし仮になければ、その感情を起こすメカニズムが間違っている。

つまり、動作を真似できていると思っていても、根本的なところが真似できていない可能性があるということです。

そうなるとどこが問題になるかというと、ここでまたふりだしに戻るのですが、先輩の演技の見方が悪いということになるのです。

人間は物事をありのままに見ることが出来なくなっているのです。

この自覚から「ありのままを見るために」疑いの目で観察していけば、一方向から見るにとどまらず、色んな視点から物事が見られるようになり、スコトーマを消していくことに繋がるのです。

こうして観察し模倣していくと、人間というのは分かったような気になっているだけで、実は全然分かっていないということに気がつきます。

ここに気がつけると、演技がより一層素晴らしい価値に感じるわけなのです。

そして実はこのことが最も大切なことであり、演技というのは本当に素晴らしいと思えるからこそ、身につけたくて身につけたくて仕方がなくなるのです。

演技というのは、覚えたら出来るだけのものではないということがお分かりいただけましたでしょうか。

普通の感覚ですと、演技はとても細かく小さなもので、その一つ一つは全く重要だとは感じないものです。

ですが、その演技が何層も何層も重ね合わさると、強大な指向性を持ったエネルギーに変化するのです。

そして観客はその自分に向けられたエネルギーをもろに受け取り、心を動かすことに繋がるのです。

観客一人ひとりの心が動けば、その劇場全体が大きな息吹となり、その大きなエネルギーを受け取ることとなる。

そして、エネルギーが更なる思考エネルギーとなり、新たな創造の世界を切り開くという相乗効果が生まれるのです。

この一連の流れを知った人間だけが、実は素晴らしい演技を身につけることのできる資格を有しているのだと思います。

全てはこのためにあると考えた創作物ほど強大なエネルギーを持つものはありません。

俳優も、そういったこだわりを持って演技修得に励む事。

それが指向性を生み、演技一つひとつに全てが繋がる意識を持っていただければと願います。

この一連の流れが自分の感覚を信じる作業だと分かますから。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。さらに、自身のBlog『さいとうつかさの演技力会話力Blog』は1000万PVを超え、多くの方々から支持を得ております。

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