今回は以前のブログ記事『演技練習の話』

練習前に精神統一を行う深呼吸を使った心のスクリーニング

のお話をしましたが、

この精神統一が何故、練習前に必要なのかをもっと具体的にお話ししようと思います。

まず、この「精神統一を行う深呼吸を使った心のスクリーニング」とはという簡単な説明をしますと、

深呼吸をしている時に「一つのことに集中しましょう」ということで、無心になるのはなかなか難しいので、何か自分の今思っている事を一つだけ集中して他の雑念を取り払うという作業をしているのです。

例えば、その日、腰が痛い場合は腰の痛みの部分に意識を集中して息を吸い、その痛みのところに息を吹きかけるように「治まれ治まれ」と念じながら息を吐く。

この痛みに関してはなかなか直ぐには治らないのですが、これを段々とやっていくと

『なんだか少しマシになったかな?』

という感覚になるのです。

とっても不思議なので、信じがたいとは思われますが(笑)

ただ、すぐにこのやり方、変化を感じるものもあります。

これは何回かご紹介しているものですが、

自分の身体の中に流れている血を想像して息を吸い、息を吐く時に手足の指先まで行き渡って流れているのを想像する

これをすると本当にそう感じるという方が多いです。

手足が少し暖かくなったという人が大半で、中には脈打つ感覚まで感じたという人もいる

のです。ですから、冷え性の方に是非この方法を知っていただきたいのですが、

この深呼吸。少し普通の深呼吸と違って、

立った状態でやってしまうと、クラクラッとなって倒れてしまうこともあるので危険ですから一人ではやらないでください!

普通の深呼吸だとそこまではないのですが、一点に集中して深呼吸をすると、他の感覚がまるでなくなるような感じになり、よくフラフラする方がいるので、誰かと一緒にやるか、もしどうしても一人でする場合は、普通の呼吸で、座りながらやられることをお薦めします。

というように、普段慣れないことは十分注意して行うことが肝心です。

ただ、これをし終わった後は、頭がすっきりして、まるでめい想をしたかのようなクリアな気持ちになれるので、団体でやられるのであれば朝の体操の後とかはお薦めです。マインドフルネスと似ていますよね。

人間は1.5秒に一回妄想をしていると言われています。つまり私たちの脳は常に何かを考えていて、その考えたことが具現化していく。つまり現実に反映されるとも言われます。

言いかえれば、今の自分の状態は、自分の思ったことや考えから作られたものだと言えるのです。

この話は潜在意識の話に繋がりますので、そう簡単なお話ではありませんが、日ごろの私たちの思い方が、今の自分を作り上げていることはもう殆どの方に知られていることと思います。

ですので、このことを考えれば、

不平不満のような『ネガティブな発言』は怖いのですね。

先ほどの説明でいくと、不平不満を言ってしまう環境は自分が作っているのですよね。

ということは、不平不満を言うこと自体、未来に同じ不平不満が出ることが現れるという理屈になりかねないからです。

しかも、妄想の殆どがネガティブな想像が多く、その妄想が潜在意識に届いてしまうと、その妄想通りの状況を自分の脳がセッティングしてしまうのだそうです。

ついていない人はとことんついていない

こういう人の人間観察をしていると、

まぁ見事にネガティブなことばかり言っていますね(笑)

中にはネガティブなことを言ったすぐそのあとに言った通りのネガティブなことが起こったという漫画みたいなこともみたことがあります。

ですので、お芝居では、ついていない人を演じる時に、ことごとく不運が続くという風にするのは、

常套手段だったりする

のです。

では、ポジティブに言葉を替えよう‼

とすれば良いのかというと……

これも、実は微妙なのですね。

勿論、ポジティブな言葉を発することは良いのですが、

いくらポジティブなことを話して言い聞かせても、

「本当に自分はそう思ってないよな。ここでネガティブな自分と戦ってしまうよな」

となってしまって、ポジティブな心も自分の中では嘘くさくなってしまうのですよね(笑)

じゃぁ、どうしようもないじゃない!?

ってことなのですが、ここでもう一手間入れると、ポジティブを素直に受け入れる方法があるのです。

それは、

普段から良いふうに物事を捉えるということ

例え悪い出来事が起きても、悪いだけで終わらさずに、出来るだけ良い感情に持っていく習慣を身につけると上手くいきます。

例えば、急いでいる時に、自分の信号が赤ばっかりの時がある。

この場合だと、ついてないなと思うだけなら、誰でも思いますが、その後で、これは急いで行くと事故起こすかもしれないぞということを気付かせてくれているのだと考えるようにすると、この習慣は意外に簡単につきます。

もっと言うと、普段普通に起きていることは実は感謝することばかりなんだと考えれば、もっと良いふうにモノを見ることが出来ます。

例えば、車で道を走っている時でも、奇麗な道を走らせてもらってることだけでも有難いよねと考えれば、運転で腹を立てることもなくなります。それを税金払ってるんだから当たり前だと考えれば、やはり周りへの見え方も当然変わってくるでしょう。

しかし、そのような考え方が自分に不利益をもたらしていることには目が行かないのかもしれません。

自分の機嫌は自分でとる

こうしないと、なんでもかんでも周りのせいにしていたら

精神衛生はかなり悪くなります

そのような心の状態をずーっと放っておくと、潜在意識にまで届いてしまって、その潜在意識は、

『自分はこういう境遇を望んでいるんだな』とどんどん精神衛生の悪い状況を自分の目の前に現わす脳の思考にさせることになるでしょう。

思わないようにしようとしても思っていることには変わりがない。でも最初から思いの存在を知らなければそれを思うことすらない。

昔からこのようなことは言われています。

人間は都合の良いようにものを考えていますよね(笑)

実際にはあるのに、自分の意識にあることばかりを見ているので、意識の及ばないところは見ていないのです。

これを考えると、

悪いことを見ないようにすることの方が賢明なのですよね。

悪いことがあってもその存在にさえ気がつかなければ、あること自体も分からないので悪いことに心を捕らわれることはありません。

つまり良いふうに物事を考えるということは、

悪い方向へ目を向けない作業

なのですね。

だけど、どうしても無意識に悪い方向へ目を向けてしまう(笑)

分かります‼(笑)

この時に、先ほど申し上げた悪い方へ見ないで良い方へ見ようと考えるのはよくありませんので、

悪いことでも、よく見える習慣で、悪いことが起こっていないという風に錯覚させるような感じにする(笑)

そうすると悪い方向に見ていないわけです(笑)

このように、どうしようもなく悪いことが起きたならばそれは仕方がありませんが、ちょっとぐらいの悪いことでしたら、こんなもんで済んでよかったなと思うくらいが丁度良いので、そのような考え方の癖をつけて、常に良いものを見ているという風に感じれば素敵ですよね。

元から良いものを見ていれば、良い感情が生まれるわけですから、とってもシンプルに物事を考えることが出来ます。

でも、悪いものを見て良いふうに考えなきゃってするとそこで葛藤が生まれて、自分の進むべき方向性がぶれて、本来考えたいことが考えられなくなることもある。

つまり、

人間って余計なことを考えているから、シンプルな問題でも考えられなくなっている

これが本当に多いのです。

現在演技をお教えしている時は、ここを本当に気をつけてまして、

教える人の考えで接しても教わる人にはその考えは絶対に分からないのです。

「何回言ったら分かるんだ!」とか「そんなこと考えれば分かるでしょ?」って言われても、当事者は色んなことを考えている訳ですから、答えを自分で導けるわけがないのです。

「今回のことを守れば前言われたことは守れなくなるのでどうすれば良いですか?」

こういう質問が来るということは、教えている人の考えと教わる人の考え方は明らかにずれているのです。そしてこれは当たり前のことでもあるのです。

ですから、こういう時は私もこうだったよなという話からして、寄り添う立場でゴールに向かうことが求められるのです。

ですので、指導者はそういうところをしっかりと分かっておかないと、いつまで経っても後進の方々は育たなくなるのだと思います。

ただ、今は、お教えするところもビジネスでやっているところも多いので、それで需要と供給のバランスは良いのかもしれませんが、本当に良いものを作っていくことを考えるならば、守破離の精神は必要なのではないかと思います。

さて、いよいよ本題に戻りますが(笑)

どうして、このような精神統一を練習前にするのか…

上記のお話でもう何となくお分かりいただけたかもしれませんが、

技術は情報がたくさんあると頭が混乱してしまって上手く習得できなくなる

「大体今こんな感じでやってたよね」となってしまうので、本質にまでたどり着けないのです。

そうではなく、「今日はこれをやる!」という風にシンプルに決めれば、

答えも出来たか出来なかったかがシンプルに出るのです。

演技は一つ一つ熟していけば簡単に習得できる。

ですので、この精神統一を毎回行っている訳です。

物事をシンプルにすることの重要性。

行動的ではない人にとって、このことはとても重要だと思います。

「やる前から色々考えるから出来なくなっている」

最後までご覧いただきましてありがとうございました。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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