またまた変なことを書きます(笑)

皆様は『ゾーン』という言葉を耳にしたことはありますでしょうか?

異常に集中力が増して自分の感覚が研ぎ澄まされていく感覚に入った時に

『ゾーン』に入ると言われています。

これは日常の生活ではあまり経験のないことですが、

極限状態にある真剣勝負をしている時に起きる現象だと思っています。

例えば、野球ではバッターがピッチャーの投げたボールを打つ時に「ボールが止まって見える」と云われた名選手がおられましたね。

F1ドライバーも驚異的な追い上げで逆転優勝をした時に回想録でレース中に『神を見た』と云われた名ドライバーもおられます。

このようにアスリートの方々がよく言われていますが、

お芝居でもこのゾーンというのはあります。

お芝居もお客さんの息であったり、目を感じたりするときがあるのです。

さぁ、変な話になってきましたね~(笑)

今回はこのお芝居のゾーンについてお話しいたします。

緊張しないとゾーンに入れない

たまにこういうことを言われる方がいらっしゃいます。

『私あんまり舞台って緊張しないんですよ』

と。

心臓に毛が生えていると俗に言いますか、度胸満点の方のように思います。

しかし、一方で熟練の俳優でこういうことを言われる方もおられます。

『舞台は知れば知るほど怖くなり年々緊張が増してくる』

と。

だからと言って、その方が本番中、びくびくして足が震えているというのは一度も見たことがありません(笑)

いつも堂々とされて最後はしっかりと持ってくる素晴らしい俳優で、その尊敬する大先輩が、そのように言われてまして、本番前のコンセントレーションは声が掛けられないほどのオーラがありましたね。

このようにベテランの方の仰ったことを他のベテランの俳優の方々も仰っておられます。

緊張しない方が良いの?それともした方が良いの?どっちが良いの?

という話ではありませんが、

私は、緊張した方が良いと思っています。

何故かというと、

『ゾーン』に入りやすくなるからです。

お芝居をしている時にこのゾーンに入ると、失敗したことがないからなのです。

まぁ、失敗を失敗だと気がついていない人なだけかもしれませんが……(笑)

緊張しないとゾーンに入れないのです。私の場合。

ではどうして、緊張しないとゾーンに入れないかということですが、

緊張するということは観客をしっかりと意識できているから

ということに尽きます。

簡単に言ってしまうと、お客様の目が怖いから緊張しているのです。

ここまでの話だと、じゃあダメじゃないと思われるかもしれませんが(笑)

この緊張が実は「背水の陣」の状況を作ってくれるのです。

失敗したら終わり

こう思うと、物事の取り組み方が変わってくるのです。

どう変わってくるのか?

それは、お客様の情報をもっとたくさん取り入れ普段からの練習や本番に備えるようになるのです。

例えば、本番前ですと、客席モニターを見て、どのようなお客様がお越しになっているのかをチェックする。

日本も地方によって変わります。だから場所とか、後は、年齢層はどうかとか、女性が多いか男性が多いかとか、どこら辺に客席の空きがあるのかとか、細かいことですが服装とかも見ます(笑)

このような情報で何が分かるかと言えば…

それは企業秘密です(笑)

まぁ、それは冗談ですが、一つ紹介すると、例えばどこら辺に客席の空きがあるかでどんな情報が取れるかというと、

客席最前列に空席が目立つと、一般的に壁が出来ると言われます。

例えば、面白いんだけど、ここで笑っていいものかどうかというのはこの壁の影響が実は大きかったりします。

客席が近いと当然ですが、演技者との距離も近くなります。すると、演技者の息づかいであったりとかが遠い客席よりも遥かに分かりやすいので、お客様も反応がしやすいのです。

まるで自分に話しかけられている感じにもなりますし、話に入っていきやすいのです。しかしながら逆もあって、あまりにダイレクトに来るのでお客様が恥ずかしくなって目を合わせずに下を向かれる方も中にはおられます。そのようなお客様はもう少し後ろの席に座る方が良いかも知れませんが…(笑)

もう一つは、前に座る方は劇場の中で一番楽しんでみて下さる方の可能性も大きいのです。つまりポジティブなお客様が多いから、受ける反応もとても良かったりします。

講習会の時とかで、義務で受けられるものは前に座りたがらないですよね(笑)

でも面白かったら前に座るのは楽しみです。電車の先頭の前の窓に張り付いている子供がそうですよね。

そのように、ポジティブなお客様がいると、劇場の空気はとっても良くなるのです。

という様に、様々な情報を入れて、自分の演技プランを当日のお客様に合わせるのです。

このように考えてお芝居をしていくとどうなるかというと、

お客様の反応が死活問題になるので、細心の注意で受信する感覚を研ぎ澄ますようになるのです。

計算通りにいくと、段々と自分だけではなく、周りの雰囲気も変わってくるのです。

野球で言うと、ピッチャーがノーヒットノーランで試合を進めているといった感じでしょうか。

野球を知らない方はすみません(笑)

要は、失敗できないではなく、

失敗したくないという雰囲気になるのです。

そうなってくると俳優陣もそうですけど、スタッフさんの雰囲気も段々とそういう感じになってくるのが分かるのです。

灯りがじわっとついてくる感じだとか、音の入り方が非常にデリケートな入り方だとかが…

こういう雰囲気でお芝居をするとまるでみんなが次の人に

バトンを渡している

という感覚になるのです。

バトンを渡す時に、

「次はお前、頼んだぞ」

という声が聞こえるかのような感覚が至る所からくるのです。

すると、次にこういうことが伝わってくるのです。

それが、

「お客様もこの舞台の成功を望んでいる」

というものです。

つまり、客席と舞台、劇場が一つになってこの舞台を成功させたいという大きな力が働くようになるのです。

何故だか分かるのです。

このシーンをお客様も大切に見届けたいという気持ちが…

この時に、

「ゾーン」に入る

のです。

自分だけの自信からだけではなく、自分以外の他力、つまり阿弥陀如来のお力が働いているような感覚になるのです。

そのお力の一つ

1秒が1.2秒くらいに感じる

普通であれば、この時間にたくさんのタスクはこなせないはず。だけど、この時だけは時間ゆっくりに感じるので出来るような気がする…

それだけではなく、お客様の顔も、見えるはずのない照明さんや音響さんの息づかいや、舞台袖からスタッフとキャストが見守っている姿が感じられるのです。

照明がつく時にする独特の音『ジー、ボワ~ン』という音も「今日はここでするんだ。そうだね。ここだとばっちりだ」と妙に冷静になってたりする自分がいるのです。

こうして主役は全員からバトンを受けて勝負し、成功を劇場みんなで分かち合う。

こうしたことが演劇の世界でもあるのです。

このようなゾーンを経験できれば、間違いなくお芝居は成功します。

だからゾーンはとっても大切なのです。

緊張は背水の陣で臨めるので、もう行くしかないわけです。ここで逃げ道ばかり探しているとゾーンは現れません。

また、

自分の力だけで出来ると考えていたら、このゾーンは絶対に現れません。

自分は世の中の一人で調和の中に生きているのです。

自分一人の手柄だと思えば調和は成し得ません。

何故調和が必要なのか?

それは、このゾーンに入る前にどうなったかを考えればすぐに分かります。

客席も舞台も一つになったのです。

ここに何かが欠けてはいけません。どういうわけかその時に一つになったということは神がかりなことです。

その神がかり的なものは、調和が成し得たから起きたからなのですね。

心理学者ユングのいう「集合的無意識」

私はここに紐づくものだと考えております。

どこか私たちには大元で繋がっているのではないかと思える現象が劇場では起きている

最後までご覧くださいましてありがとうございました。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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