お芝居を観ていると、

演技してるな~

って感じる人をよく見かけます。

これは無意識に俳優(自分)の動機が伝わてしまっているのです。

これはとても真面目な方に多いようで、

とっても素直な方だからそれが無意識に伝わってしまっているのです。

もっと感情を出さなきゃ‼

もっと声を出さなきゃ‼

もっと一生懸命やらなきゃ‼

こういう役者の動機がどうしても伝わってしまい、お客様を作品の世界へと誘うことが出来なくなってしまっているのです。

お客様は、

「頑張ってたんだけどね‼」

とは思いますが、まだまだだなと思ってしまう残念な結果になってしまうこともあるのです。

せっかく頑張って演じているのに…

今回はこの話を簡単にさせてもらいます。

さてこの問題ですが、簡単に言うと、

役の人物の動機が表現しきれていないということ

なのです。

もう少し突っ込んだお話をすると…

役の人物だったらこうだろうなというアプローチまでは良いのですが、

その出力の仕方がどうもいけないのです。

これは、過去の私のブログでもよく書いていることなのですが、

役の人物の感情が分かっても、その出し方に問題があるから

お客様に役の人物の動機として捉えてもらえなくて、役者の動機として捉えられてしまうのですね。

その問題が先ほどからいう「出力」だということです。

感情は出すのではなく湧き上がるもの

ここを理解しないと、いつまで経っても役者の動機が見えてしまって、

演技しているなという俳優で終わってしまうのです。

ここを分かるためには、

役の人物の感情が分かったならば、その感情はどのような動機から生まれたものなのかを知る必要があります。

そして、その動機が理解できたならば次に、

その動機を表す動作を模倣することするのです。

例えば、一番分かりやすいのは怒りの感情の表現の仕方ですが、相手の言動にある種の驚きが発生して、その捉え方で怒りが芽生えるということにします。この時の動作の動きをテクニカルで説明すると、驚いた時は人間息を吸います。そして怒りの感情がふつふつと芽生える時にですが、この時に息を「吸いたくもないのに吸わされている」というイメージで体に取り込んでみるのです。最初はこんなことで怒りが湧き起るのかと眉唾物ですが、これを段々と練習を重ねていくと本当に怒りが込み上げてくるような感覚が芽生えてくるのです。

そして、驚くことに、こういう動作をしていると、不思議と相手の言動が『スッと』入ってきて、本当に腹立たしく思えてくるようになるのです。

勿論、筋書きのあるドラマで、当然内容も分かってますから、本当に怒れと言われてもなかなか無理だよなと思うかもしれません。

しかし、このような感情を誘発させる動作をすると、本人がそういう気持ちの感覚に分かるばかりか、

相手役の人も、

「この人、本当に怒ってる‼」

って無意識に感じるのです。

不思議なお話ですよね(笑)

でも本当なのです。

つまり、本当に感情が湧き起っている人の動作を完全に模倣すれば、

本当にそのような感情のような感覚になる

ということで、それを模倣しただけで見ている人も

「この人、本当に感情が湧き起っている」

と、無意識に感じるのです。

こういう無意識の力が周りの人にも動かせていくのです。

演劇の力って実は結構凄いのです(笑)

最後に、役者の意図も声に表れるというお話ですが、上記のお話をご理解いただければもうお分かりかも知れませんが、

例えば、大きい舞台の時、声を張らなければ聞こえないということがあります。

この時、声を張らなければと考えると、もう役者の動機ですよね。

ですからこれでは、目の前で作品の中に生きている役の人物のリアリティが失われるので、当然お客様を作品に誘うことは出来ません。

学芸会で子供に声が聞こえないから大きい声で出しなさいというと怒鳴ってしまう子供がいると思いますが、大袈裟ですがそういう感じのイメージです。

では、普通に話して声が聞こえるようにしないといけないのですが、どうすれば良いのか……

それは、日ごろの発声練習にかかってくるのです。

腹式呼吸での発声がしっかりできていると小さな声でも届く

ですから、普段の基礎練習はとても必要なのです。

腹式呼吸の発声の仕方は実はとっても簡単です。

ここで説明すると間違えて解釈され声帯を傷める可能性がありますので控えますが、とっても簡単な方法があります。

この方法で日々練習していけば、小さい声でもしっかりと届く声になるのですよ。

つまり、しっかりと日ごろ練習しておかなければ、役者の意図は見えやすくなるのです。

芝居の稽古だけで芝居が出来ると思ってはいけません(笑)

声が原因で、リアリティを失う表現になっているかもしれませんよ。

大きな声を出そうとする人は、話す前に絶対に息をしますよね。

でも、普段の会話は話す前に絶対に息を吸っているかと言われれば、そんなことはないのです。

どこで息を吸うか…ここが分からないからリアリティがないのです。

どこで吸うか…

それは気持ちが動いた時です。

何かを感じた時です。

相手の台詞があるとします。その時にどこで自分の気持ちが動くのか。そこが分かったらそこで息を吸うのです。

そうすると、自然に声は出ますし、自分の思った以上の表現になることもあるのです。

その時、実は無意識に気持ちが動いているのです。

無意識に気持ちが動くから、台詞も話しやすくなる。

台詞を立てようとしなくても自然に立つ。いや想像をはるかに超えた音域で話す場合もあるのです。

こうして、自分の無意識の領域の無限なるパワーを感じれば、自分は凄いことをしているのだと感じるようになるはずです。

自分の実力を知っているという風に考えるのは、おかしな話かもしれません。

自分の潜在的な能力は意識下の自分では分かっていないのですから。

ですので、私たちの演技の追究は本当の自分を見つけているような感覚でとても面白いのですね。

もし自分に自信がないとお考えの方がおられましたら、このお芝居の演技法を知って頂くとおそらくとても驚かれることと思います。

自分の無限の可能性を知る旅。

最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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