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お客様がどのようにご覧になっているのか。

実は、演技者はこの事をよく熟知しておかなければなりません。

素晴らしい演技をしたいのであれば、舞台の位置取りは是非押さえておきたいところです。

それに、舞台の位置取りだけで役者の値打ちが分かりますので、話さずとも、どれほどの役者かを判断される世界でもある。

つまり、この事で舞台関係者から足元を見られる可能性がかなり高いのですよ😅

昔、私が新人の時、私のサスペンションライトの当たる範囲が皆さまに比べるととても大きかったことがありました。

それを不思議に思い、その意図を聞きに照明の先生におたずねすると、

と教えて下さいました。

そのやり取りを客席から静観していた演出のお師匠さんが、後で楽屋に来られて私に、

このように、こっ酷く叱られたことがあったのです。

自分の位置にこだわりがない。

これは、仮に正確な位置でいたとしても、当たる角度を頭に入れて自分の顔の何処に影が出来るかとか、周りの灯りもちゃんと計算して、どのように見せたいかということを知れということ。

ですから、そこに所作も当然必要になるのですが、姿勢、首の角度、体の向きなど全てを合わせて位置取りする。

このようなことがありましたので、位置取りにこだわりを持った意識付けをもって演技修得に取り組むようになったのです。

すると、しばらくしたある日、いつものように私は舞台袖から舞台上で演じる先生方の演技を観ていましたら、驚きの出来事に気がついたのです。

今まで全く気がつかなかったのですが、灯りに当たるために、かなり無理のある態勢で立っていたことに気がついたのです。

前から観ると自然な立ち居振る舞いであっても、横から観るととんでもなくきつい態勢で立っていまして、そのお姿に、ただただ、感心したのです。

とも思いましたし、そういう体勢で臨むということは、照明家の先生のこだわりを活かすことでもあるので、より一体感が生まれるのですね。

奥が深いでしょ……(笑)

というように舞台芸術は、一人で作っている訳ではないんですよね。

灯りがどこから来るのかをしっかりと確認して、どこに位置取りして勝負するのかということも必要になるのです。

最後に、劇場での位置取りの基本的なものを一つ二つ挙げてみます。

ですがその前に、お客様がご覧になられる「優先順位4つ」を前情報として記します。

お客様のご覧になる優先順位
1. 話し手を観る
2.動いている人を観る
3.動いている中で止まっている人を観る
4.聞き手を観る

上記の優先順位は位置によっても変わりますが、原則このような順番でご覧になります。

要するに聞き手は一番最後にご覧になられるのです。

ですが、見せ方によっては、聞き手を一番にご覧になっていただきたい場合もある。

そのような場合の、位置取りもたくさんあります。

例えば、話し手が聞き手の後ろにまわり、聞き手を見ながら話しかけると、お客様は聞き手の表情を観る確率が上がります。

また、聞き手の前を話し手が横切るということで聞き手を効果的にお見せするという方法もあるのです。

この場合、聞き手の前を横切るまでは話し手に注目されますが、聞き手の前を横切る瞬間から通り過ぎた後は、聞き手の方に目が行きやすくなるのですね。

この時に、聞き手が、話し手の方を追って見ると余計に聞き手にフォーカスされるのです。

これは、人の心理を利用してる動きにもなりますが、お客様は、話の内容が分からない、または自分の考えが合っているのかを知るためにどうするのかというと、聞き手の聞き方に注目して確認するといったことをするのです。

これは映画のカット割りでも多用している技法でして、話している途中までは話の手の顏を画面で映し、話している途中で、理解が出来た時、聞き手の顔に画面が切り替えるという手法ですね。

舞台ではこのように、位置取りと動きでそのように無意識に視点が移りやすいように誘導するのです。

言葉で説明すると、

って感じだとは思いますが、これを実際に目の前でお見せすると、まさしく魔法にかかったかのように、視点が見事に誘導されるのです。

このように、演技というのは見えない技術。

こういうところでも言えるのですね。

このような演技を身につければ、間違いなく演技への自己研鑽がしたくなるはず。

ですがこういう位置取りも、また動作表現もすぐに出来るものではありません。

何故なら、それは先ほども少し触れましたが、客席から普通に振舞って見える演技でも、舞台上ではかなり無理のある不自然な動きをしている場合もあるからです。

位置取りによっては、歩む足の運び方も変わってきます。

それが自然に出来るまでは、相当な反復練習が必要ですし、舞台上の所作は、ほぼ無意識の領域に落とし込まなければ、咄嗟の判断の時に、思わず所作ではない普段の動きになってしまうので、本当に難しいのです。

例えば、自分よりも共演者に目を向けていただきたい時は、出来るだけ自分が舞台奥に位置取りをすること。

また、共演者が話している時は、出来るだけ共演者の話している顔を客席にお見せしたいので、すぐに共演者よりも舞台前面に出てあげて、話を聞いてあげると、無理なく顔が前に向くといったホスピタリティのある演技も必要になるのです。

このような位置取りや動作、所作はまだまだたくさんありますので、これを一つ一つマスターするには相当な年月を要します。

そこにいるだけで表現できる究極の演技。

是非押さえておきたい技なのですが、残念ながらこういうところに演技があることを知らない演者が多いのも事実。

さらに難しいのは、こういう演技にさほど重要性を感じないのもあるのかもしれません。

しかしこれだけは断言できますが、この位置取りや動作、所作を知っている演技者と知らない演者がもし仮に一緒の舞台に立つことがあれば、それは間違いなく、知っている人間の方に目が行くのです。

位置取りや所作や動作は、無意識に与える『伝わる演技』なので印象的に観えるものなのです。

そして、そういう人はまるでオーラを纏ったような人に見えますので、そういう人が主役を張るのです。

普段でもオーラがある人には目が行きますよね。

このような演技を纏うとこのオーラが放たれることを知って欲しいのです。

お化粧して綺麗に着飾ることで綺麗に見せることも出来ますが、動きや所作が綺麗でなければ、洗練されたものにはなりません。

ですから、勝手神経質にならないためにも、この綺麗に見える所作を覚えることは、装飾品を纏うことよりもよほど強力なアイテムになるということも頭に入れていただければ。