「ローマは一日にして成らず」

俳優を志すのでしたらこの古事の言葉通りです。

演技の習得に簡単に出来る方法はありません。また仮に簡単であったものならば、それを習得する価値があるのかということです。

俳優では食べていけないといわれるこの背景には、演技を誤解してる人の多さがあるように思えてなりません。

演技は簡単に出来るものではなく、多くの俳優が素晴らしい演技の習得をしていたならば「芝居では食べていけない」という言葉は聞こえてこないのではないかと私は思っています。

演技にはそれだけの価値があると。

その演技の価値を下げてしまったがゆえに、『お芝居では食べていけない』という構図になってるように思えます。

これは私たちの責任です。

『俳優の演技は本当に素晴らしいもので多くの人に力を与えるものなのだよ』と後進の方々に示すことも伝えることも出来ていないからです。

ですので、私の講座やワークショップでは、演技指導をしているだけではなく、

俳優って実はとっても凄いことしている仕事なのですよ

ということもお伝えしているのです。

意識を高く持ち、私たちは凄いことをしている集団なのだと考えれば、必ず品質も上がり、徐々に価値を見出せる存在になる思いで現在活動しています。

しかしながら、私の講座は、ちょっと初心者の方にはどうも難しいというのがありまして、ワークショップの実践練習になるとお教えしている内容についていけなくて、かなり定着率が悪い時期も正直ありました。

私たちの劇団でも、20代が4人いるのですが、最初の頃は、私が何を言ってるのか全然わからなかったと一年経った今になってからですがようやく告白してくれましたことを受けて、もっと簡単に分かりやすくお教えすることを心掛けようと決意しました(笑)

そこで、まずは本ブログで分かりやすい演技練習のお話をさせてもらおうと思います。

ですので、演劇はしていないけど、演劇に興味がある方や、始めたばかりの方に読んでいただけると幸いです。

まず、演技練習についてですが、お約束事が一つあります。

それは、

間違っても良いので、思いっきり表現する

ことを心掛けて下さい。

探りながらやってもフィードバックがなかなか得られないからです。

恥ずかしいと思っても、はじけるようにされることをお約束ください。

そうするだけで、修正能力の高い人になれますので。

というのも、面白いことに自分に思っていることを実際にやってみると

笑っちゃうくらい出来ないのです

それが当たり前なのです。

ですので、出来ないで当たり前という気持ちでやりましょうね。

初心者向け演技練習の目次
1.息を使った演技練習
2.動作練習ー足の運び方
3.台詞で感情を誘発する感覚を養う練習

1.息を使った演技練習

息は心のスイッチになる重要な動作表現です。

ですが、ここではこの話はもっと慣れてからお話しします。

息ってどんな時にするか皆さんはご存知ですか?

あまりよく分かってないですよね。息は無意識にしている身体動作ですから、意識しないと分からないのですね。

詳しい説明はここでは省きますが、こう覚えて下さい。

息は感情が始まる時にするもの

と。

人間の喜怒哀楽の感情の表れ方は、

出来事があって→驚くことをして→息を吸う

つまり、喜怒哀楽の後には必ず息を吸うのです。

では、どこのタイミングで息を吸うのかというと

自分が反応した時

例えば、ある相手との会話中、あなたが怒ったとします。

この時、あなたは相手の言動に対して怒っているのではありません。

細かく言うと

あなたは相手の言動に対してどう感じたかによって怒っているのです。

つまり相手の言葉に怒る反応をするのではなく、相手の言葉の受け取り方によって反応するのです。

相手の言葉を受け取った時に、ある種の驚きがあります。

「そんなこと私に言うの!?」というような驚きです。

そこから怒りの感情が湧き上がるのです。

この怒りの感情が湧き上がる時に息を吸ってるのです。

怒り方は様々ですよね。

ジワジワ来るものもあれば、急に切れる感じのものもあります。

じわじわ来るモノでしたら、息はゆっくりと吸い、

急に切れるというものでしたら、息は一気に吸うのです。

この時のワンポイントアドバイスをすると

『息を無理に吸い込まされている』とイメージしてみてください。

そうすると、吸いたくもないのに吸わされた感じがしてきます。そしてこれ以上吸えないとなった時に怒りの爆発の頂点がくるのです。

このような動作を何回も反復練習すると、本当に怒りが込み上げてくる感覚が掴めて来るのですよ。

ここで、間違った演技方法もご紹介もします。

これは、大抵の人がやってしまう間違いかもしれませんが、

『怒る表現をしてしまう』

ということです。

これが何故間違いかというと、

人間の喜怒哀楽は自分で出そうとして表れるものではないからです。

感情は湧き上がるもの

ですので、湧き上がった表現が求められるのですね。

怒る表現をするということは、怒る感情を出すということです。

この「出すという感覚」と「湧き起る感覚」は全く違う表現なのです。

怒りの感情を出す表現は、「私は怒ってますよ」という印象を見る側に与えますが、

怒りの感情が湧き出る表現は、「私は怒ってませんよとしておきながら、怒りの感情が湧き起ってしまう」という印象を見る側に与えるのです。

ですので、感情は湧き起るということを意識して演技を作ると自然な演技を得られることができるのですね。

実はこれだけで、多くの俳優からアドバンテージを取れます。

何故かというと……

このことを知っている方が少ないからです。

感情を出すという手法で演技をされている俳優がそれだけ多いということかもしれません。

「感情を出す表現」は自然な表現ではなく、「作られた表現」だと無意識に観る側が感じている。

「作られた表現」をすることで観客の感情移入を難しくしている。

つまり、「作られた表現」は

お客さんを味方につけることが出来ない

ということになるのです。

ですから、自然な感情を表したいのであれば、感情を誘発させる練習をしましょう。

あなたが相手と話をしていた時に、相手の言動に驚き息を吸わされる。もうこれ以上吸えないというところが怒りの頂点となる。

怒った時の感情表現

この流れを是非お試しください。

若い時から、覚えておくとかなり有利になりますよ(笑)

では次のページで、舞台での動き方についてお話しします。

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