舞台は『上手』と『下手』という表現で方向付けをしています。
上手(かみて)はお客様から見て右側
下手(しもて)はお客様から見て左側
を指します。この上手下手で今回は説明します。まず歩き出しは厳密なルールはありませんが、
こうしたらそう見えるよ
ということは知っておいた方が良いと思うので、簡単なものをお教えします。
まず、歩きだしなのですが、これは男性と女性でも変わってきます。
例えば下手から上手に移動する時に、
男性は左足からで女性は右足から
歩み出すとより男性らしく、または女性らしく見えます。
なんのこっちゃですよね(笑)
でも次のように言えば、おそらくわかるかと思います。
下手から上手に向かって歩く。これはつまり客席から見て左から右に行くのですが、
例えば、男性の場合は左足から行くとより男性らしく見える歩き方になると言いました。想像してみて下さいね。左から右に歩く時、男性の右側をお客様は観ています。それで、左足から一歩目を踏み出すとお客様から見れば、身体が開いた状態に見えますよね。
一歩目に体が開いていると「大きな印象を与える」ことが出来るのです
つまり一歩目が大きな印象を与えることが出来るのです。
一方、女性の場合、下手から上手に向かって右足から歩み出すと客席から見れば、身体が閉じて見えますよね。
一歩目に体が閉じていると「細い印象を与える」ことが出来るのです
小さくではないのです。大きく見せる方法と細く見せる方法がこの歩き方でも出来るのですね。この進み出しの印象を他にもたくさん知っていると様々な表現に役立ちます。
例えば、客席から見て一歩目が身体の開いた状態である時の表現は、
位の高い人を演じる場合や偉そうな人を演じる場合に使うと効果的なのです
一方。客席から見て一歩目が身体の閉じた状態である時の表現は、
スマートな人を演じる場合や不安そうな人を演じる場合、何かを秘めている、或いは隠している人を演じる場合に使うと効果的なのです
このように、
歩きだしの一歩目がとても印象に残るので、これらの歩み方を駆使すれば、より厚みのある表現が出来るかと思います
他にも、足音でも、歩く時のリズムでも表現できることはまたまだたくさんあります。しかしながら、これらの表現は実際にレッスンでご覧いただかないと分かり難いと思いますので詳しい説明を省きますが、ヒールで歩く音や、階段の昇降の音でも、「出来る人」や「インテリな人」を表現することが出来るのです。この音を聞けば、
確かにそう聞こえる‼
これは講座とかでお教えしていて面白いと言われます(笑)
このようにたかが、歩くことではあるのですが、歩み出し方法だけで随分と印象が変わるので、普段でも是非お試し下さい。
相手から見て一歩目が開いていると大きな印象に見え、閉じていると細くスマートな印象に見えるのですよ(笑)
とっても簡単でしょ。まずはこれを意識して、洗練された一歩を踏み出しましょう。洗練された歩き方になれば、一目置かれる存在になりますよ。歩き方ってそれだけ好印象を与えられる表現ツールなのです。
最後までご覧いただきましてありがとうございました。
さいとうつかさ
劇団ブルア 代表
劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。