
一番上の写真は劇団ブルアの新しいメンバーです。2019年設立の劇団ブルアは昨年度まで創設期でした。この間、コロナ禍もあり、約一年半公演活動を見送るといった、決して満足のいく演劇活動が出来ませんでした。それでも約6年間で7公演出来たこと。これは良かったかなと思います。
今年度からの劇団ブルアは「始動期」
一昨年から始めました俳優養成講座がきっかけで、素晴らしい方々が劇団ブルアに入団しました。鈴木茂夫さんと二酔恭太朗さんと天海りくさんです。二酔恭太朗さんは俳優養成講座の第一期の卒業生。鈴木茂夫さんと天海りくさんは俳優養成講座の第二期の卒業生です。ブルアメソッドを継承して下さる方が今年から3人も増え、本年度からは本格的に演劇活動が出来るようになりそうです。鈴木さんは、味のある役どころを。二酔さんは、二枚目の主役級の役を。そして天海さんは正統派のヒロインの役を期待しており、今から劇団の今後の戦略の幅がもの凄く広がってきたように思います。
今後のブルアに思うこと
ブルアの俳優陣、女優陣は全員主人公が出来るタイプの演技者ですので、これからは新劇だけのジャンルにとらわれず、時代劇や子供向けのお芝居、ミュージカルなど様々な公演にチャレンジしていければと思っております。
今後の劇団での取組み
年間5本を目指し、地域に演劇が定着するように、演劇学校を設立して、様々なところで実験的な演劇活動も試みたいです。海外のように、俳優の実践の演技を研究する教育機関を作り、年間数十人が演技研鑽できる環境を提供し、俳優力の品質の向上を目指す。そして、若者の地域への定着も目指す。こうした本気の取組みで、地域に根付いた文化活動を展開したい。そのためには私たちの演技の向上も絶対で、劇団員には意識を高く持ち、劇団員にもこの研究機関に積極参加してもらい、演技研鑽に取り組める環境を作ります。
海外の発展した演劇事情
今から100年程前のモスクワ芸術座第一スタジオのような公演をするだけではない俳優を養成する教育機関が昔からありました。これは近代演技メソッドの第一人者スタニスラフスキーが作った機関です。スタニスラフスキーとはメソッドといわれる演技法で、この演技法が世界スタンダードとも言われております。この演技法は色んなところで学ばれてますが、何れの機関も演技理論を実践する場であり、こうした演技に特化した研究をしている場が実は演劇の発展に大きく貢献していたのです。アメリカもニューヨークの演劇スクールでスタニスラフスキーシステムを採用し、演劇だけでなく映画界にも多大な繁栄をもたらしてます。ですが、日本ではこのことがあまり知られておりません。俳優力を磨くことで、世界では様々なジャンルで発展している。日本でも、東京の有名劇団に研究所があるのは海外の例に倣ってのことだと思います。つまり、演技練習に特化した研究機関が必要なのです。私の場合はもう何十年も前ですが、海外である演劇の研究機関の方々とお知り合いになり、色々とお話を伺うことが出来たので、こういう情報を知り得たのでした。この話を伺った時に、私は日本にもこういう機関があれば、きっと演劇はもっと世の中に受け入れてもらえるはずだと、そのころからおぼろげに考えていたのでした。
常識を覆す演技の練習
海外の演劇の研究機関は相当お金をかけてやっておりますが、私にはそういうことは出来ません。ですので、私が見聞きした方法で私なりにアレンジした方法で練習してみたいのです。例えば、世代の全く違ったベテラン俳優との演技探究です。ベテラン俳優と一緒にいるだけで学びがあるという環境は思っている以上に素晴らしい効果を生みます。内容はこれ以上ここでは申し上げられませんが、今までにはない演技練習環境を提供することで、若き俳優を育てるといった取り組みを真似てみたいのです。
若者の定着で地域への貢献
昨今では、公的な劇場の閉鎖が後を絶ちません。文化芸術は段々と地域の皆様から離れていっているように思います。ですが、それは社会が悪いわけではありません。20年ほど前から、劇場や公演施設の閉鎖は普通にありました。こういう負の波は普通に予想されてましたが、その間、私たち演劇人はその波を食い止める手立てがなかったと考えると、今以上に抜本的な対策を考えなければ、今後さらに需要がない公の劇場は老朽化を理由にどんどん姿を消していくでしょう。そうなると、若者はより都市部に活動を求めることとなり、地方の過疎化は、より一層進むのではないでしょうか。若者の定着は政治にも色濃く反映され、都市と地方の行政に対するニーズもまるっきり変わるのではないでしょうか。選挙にも多大な影響があるので、民意が反映されにくい状態にもなっている。ですから地方への人口の分散が今後日本をよくする鍵のようにも思うのです。文化芸術はここに必ず力になれると思っており、そのためには、まず自分たちの足場を固めることが急務だと考えております。俳優力を身につけること。このことが演劇の品質をあげることは、先ほども書きましたが、世界の例を見ても明らかです。ですので、こういう取り組みを本気で行うことが私たち演劇人一人ひとりの使命だと思います。巨額の資金で有名人や著名人を招き入れ、演劇を学ぶことも良いでしょう。ですが、そういう取り組みは実は30年前から既にあり、結果が出せていないところをみると、一時は人が集まるかもしれませんが、実際に地域に貢献しているかどうかはよく分かりません。それだけ、今の演劇は社会にとって存在を問われているものだと感じます。
脱演劇ごっこ
自分たちがやりたいだけの芝居からは卒業しよう。世の中の人のための演劇を作ろう。それは都市部でなくても良い。都市部よりも観客動員数が少なくても、世の中の人に愛される団体を目指したい。知り合いばかりの客席ではなく、純粋にお芝居を観たいというお客様を増やしたい。そのためには、演劇の品質を向上させ、毎度まいど、お客様に観に来て良かったと言われる作品を提供したい。出演者がお客様を呼ぶという今の常識を完全に変えたいのです。呼ばなくても、劇場に足をお運びいただける演劇を目指したい。
演技指導には限りがある
演技の習得には少なくとも10年はかかります。つまり今お教えしている人が大成するならば、それは10年後です。私の演劇指導のリミットは後10年ほどではないかと思います。演技の指導はとてつもなく根気が要ります。私の先生方も段々と指導が年齢と共に甘くなっている印象がありました。それだけ、一人ひとりの演技動作を見るのはかなりの労力を要します。私はこの2,3年で、少なくとも100人は教えたい。そうでなければ、本気で今の演劇環境が変わるとは思いません。昔から教わる素晴らしい演技所作を復活させたいのです。時代が変わり、昔の所作が時代遅れになったのではないのです。演劇は自由に作りすぎて、今や何が演劇の魅力なのかが分からなくなってきている。昔の所作がどうして大切なのかもわからない。そういう中、音響機材や照明機材や装置は進歩して、みせ方もたくさんのアレンジが出来たのですが、肝心の人間の体を使った生の表現が非常に弱くなってきている。これではいずれ、役者もAIロボットに打って変わる時代がくるでしょう。人間には物凄い力が備わっている。こういうところで勝負して舞台に立っている強い人間を育てたい。今の指導ペースでは残念ながら劇的に環境を変えることは難しいように思います。それだけ、今では常識的に無理だと思える行動をしなければいけないと思っております。ですから、私自身は物凄く焦っているのです。Blogや、SNSでの発信、スペースでの発信で頑張ってるのはそのためです。今の愛弟子たちがこの思いを知るのは、10年後だと思います。だから今、分からなくても良いと言っています。ですが、今教わっている演技を修得するのは物凄く時間がかかるということだけは、心に刻んで欲しい。この演劇の環境を変えるには思った時から十数年かかるということを実感して欲しい。そうすれば、みんなで力を合わせて演劇の世界を変えることが出来るのだろうと思います。今の劇団のメンバーが今後大きく動く始動期になると思います。

さいとうつかさ
劇団ブルア 代表
劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。
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