『表現しようとしない演技』

毎度のことながらおかしなことを言ってるかと思います(笑)

しかし私はこれを大真面目でお伝えしたいことでして…

この表現しない演技こそが、

臨場感を出す演技法

つまりリアリティのある演技に見えると考えております。

これはどういうことなのか?

それを今回は動画を交えてお話しさせていただきます。

演劇は劇場全体を一体化させることが最も大切

この話は以前のブログでもご紹介していますが、とっても大切なことですので、何回も申し上げます。

お芝居は、舞台だけがとても良い雰囲気であっても、客席にそれが伝わらなければ、全く意味がなく、つまらない舞台作品となります。

それは当たり前のことですが(笑)

ですので、

舞台作品はお客様と私たち作り手が共に作り上げ、ともに感動を分かち合うことが素晴らしいのですね。

この大きな感動が、劇場全体を一つにし、大きな力となってカタルシス、つまり心の浄化が成されて、素晴らしい体験が出来るようになるという訳です。

これがお芝居の醍醐味で、お芝居を観に行った後に、

「ポーっとした、とても居心地の良い感覚」

のような心の中にあった様々な雑念が取り払われて、今から何でも出来そうなくらいの「やってやる!」というようなポジティブな気持ちに掻き立ててくれる素晴らしい作用が演劇では働くのです。

これを、「心が洗われる」と表現される方もいらっしゃいますね。

そのように、感動をするだけではない、

強く生きる糧を得られるような

心の状態に出来ることが演劇の一番の魅力だと思います。

このようにお芝居をみんなで育むことが出来る芝居が出来ればこそ、素晴らしい作品となるわけで、そのためには、お客様にどうしてもお芝居の世界の中に入ってもらうことが必要なのです。

お客様がお芝居の世界に入っていただくためには、

ここが一番重要なポイントなのですが、

お客様が作品の中に入っていただきやすくする俳優の演技術がとても重要なのですね。

お客様を物語の中へ誘う演技

が求められる訳なのです。

この物語の中へ誘うための演技というのが、今回の「表現しようとしない演技」がとても重要な役割を果たすのです。

では、どうしてこの「表現しようとしない演技」が重要なのか…?

それは、

「思ったことは無意識に伝わってしまう」から

なのです。

簡単に言うと、演技者、つまり俳優が「表現しよう」とするとその動機が無意識に現れてお客様に伝わってしまうのです。

物語の登場人物の動機であれば、作品の世界に自然と入っていけるのですが、ここで俳優、つまり演技者の動機が見えてしまうと興ざめしてしまい、

物語の中に入りづらくなる

のですね。

人間は普段生活している時に、誰かに何かを見せようという意識では動いていません。しかし、お芝居になってしまうとどうしても分かってもらいたいがゆえに、分かりやすく表現しようとしてしまうのですね。

これだと俳優の親切心が動機になって現れて、かえって物語の世界に誘えなくなるのです。

昔風に言えば、「表現するな」「演技に頼るな」ということですね。

ですから、演技者はこれをしっかりと踏まえて、演技をしなければいけないのです。

俳優は「演技しようとしてはいけない」ということを

実は私たちの普段の動作は殆どが無意識に行っています。

そして、どうやら人間はその無意識な動作を無意識の感じ取っているから「動機が伝わる」ようになっているようになっているようなのです。

ですから、私たち俳優は「伝わる演技」を習得するのであれば、

この無意識の動作をコントロールできれば、伝わる演技を習得できるようになるのです。

ただ、ここで難しいのは、無意識に行っている動作は当然ですが、

無意識の動作なので意識的には動かせないのですね(笑)

無意識の動作を意識的に動かせているのでしたら、それは既に意識的な動作だからです(笑)

ですから、私たち俳優はまず、

無意識の動作を意識化して、その動きをまず模倣すること

が求められるのです。

そして、この動きを何回も何回も練習して、自然に動けるようになるまで身体に覚え込ませるのです。

これはどういうことかというと、

無意識の動作を意識化して模倣し、それを身体に覚え込ませ、もう一度無意識下にその動作を入れる

というような、とてつもない手間のいる作業をすることが求められるのです。

私たちは作品の成り行きを台本を見ているがゆえに、もう分かってしまっています。ですから、成り行き上でリアルな感情を引き出すことは非常に困難なのです。

ですから、

感情を誘発させる切欠で、感情を誘発させる演技を出力する

ということが求められるのです。

相手の台詞で感情が動く時、相手の台詞も用意して話している訳ですから、聞き手の感情の動き方も用意しなければいけないという考え方ですね。

よく、現場で、

「もっとセリフを聞きなさい!」

と演出や先輩俳優さんに言われたことがある方も多いとは思うのですが、

一度分かってしまった話の流れの中で、まともに相手の台詞を臨場感を持って聞くことは、本当に出来るのでしょうか(笑)

必ず、もう分かってしまった中で見てしまっているので、

必ず盲点は出てくるのです。

初めて聞くセリフならともかく、何十回も聞かされている台詞に新鮮に心を動かせることは出来ないのですね。

ですから、相手が初めて話すことを用意してるのであれば、こちらは初めてその話を聞くんだと用意することが、

「セリフをしっかりと聞きなさい」というダメ出しの対処法なのですよ。

面白いでしょ(笑)

話を戻しますが、

このように、俳優の動機が伝わらないように、無意識の動作を感情を動かす切欠の時に

「無意識の動作を出力する」だけ

にするのです。

この無意識の動作をすることにより、役者の「表現しようとする動機」を消すことに繋がるのですね。

ややこしいですね(笑)

最後に動画を載せますので、

これをご覧になられると一発でお分かりになられる思います。

伝わる演技はこういうところから作られるというお話

伝える演技でお客様を置き去りにしないように、しっかりと「伝わる演技」を駆使できる素晴らしい俳優さんになっていただければと思います。

偉そうなことを申し上げて申し訳ございません。

ただ、演劇の世界をより良くするために、素晴らしい俳優が現れることを切に願っております。

そのお役立てになるかどうか分かりませんが、

今まで400回ほどの舞台経験で実践的に培ってきた技術の話をこれからもお伝えできればと思っております。

最後までご覧いただきましてありがとうございました。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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