演技は見えないもの

ここで、この話が来たか!っと思われる方もおられるかもしれません。私のブログでは何回かお話しさせている内容で、この話が一番変わったお話だと思います。

演技というのは見えないものです。ですから、当然お客様には見えないものなのです。そしてここにもう一つ付け加えると、この演技の習得は、実はそんなに簡単ではないのです。つまりこの技術を習得すれば、ワンランク上の演技を習得できるというお話なのです。勿論、この演技を習得されてる方もおられると思いますので「そうだそうだ」とご覧いただければ(笑)

なぜこの演技の習得は難しいのかというと・・・・・見えないからです(笑)

人間は見えないものは「ないもの」となりますよね。ないものですから、そこに技術があるということは有り得ないんです。でも、「演技は見えないもの」と最初から考えていれば、どうでしょうか。すると不思議なことに見えてくるようになるのです。ですから、

演技習得に必要な考えとは『今の自分には見えない』と考えるのが肝心‼

これがないと本当にずっと見えません。・・・・・だってないんですもの(笑) 

もっと言いますと、凄い技術が見える人は凄い技術をお持ちになる方でもあるのです。ですので、まだまだ見えていない凄い技術があると考えて演技に精進することがとてもとても重要なのです。この理屈が分からないと、いつまで経っても鮮やかな演技が出来ません。

臨場感溢れる演技というのは、今まさにここで生きているという表現でなくてはなりません。その時に、どれだけ作品の世界に本気でいられるかが生命線であり、生きた表現でなければ、観客に物語の世界へ誘うことは難しくなるのです。ですから、そういう世界を誘うために日々演技練習を務めることが何よりも重要なのです。

さらに申し上げると「自分でこれを学びたい」とか「こういう練習をしたい」とか最初からあまり決めつけない方が良いのですね。何故かというと、本当は学ぶべきことは、今の自分に見えていないものであって、見えていないものを習得するには、色んな学びの中から得られる点と点のつなぎ合わせからはじめて見えてくるものなのです。ですから何からでも学ぶという風に考えどんな環境でも自分にとってベストなんだと身を置くことが大切なのです。つまり今、目の前にあることがいつも学ぶものであって、「学びたいことはそこじゃないんだよな・・・・・」とか「そこはもう何回も聞いているからな・・・・・」とか考えている人は、特に要注意で、もしそのように思ってしまっている自分がいたら、そうやって見えない技術を余計に見えない「死角を作っている」と心得ることがこれまた肝心なのです。

まぁこれを言いかえるとですね。もし仮にお教えしている人が何回も何回も同じことを話しているのであればです。そのお教えしている人が自分の言ったことを忘れているから何回も言ってることが問題なのではなくて、受け取る側の問題で正確に届いていないのだと考えていただきたいのです(笑)

言葉は飽くまでも伝達手段であって、言葉の受け取りには色々とあります。その受け取り方が偏った考え方によるものだと・・・・・毎回同じことを言われる確率は必然的に上がるのです

つまり、盲点があるからいつまでも同じことを言われたりするのです。これはホスピタリティーのあるコミュニケーションの観点から言うと、改善しないと不都合が生じる場合もあります。理解する姿勢、乃至は出来ないなりに頑張っている姿を見せていれば大丈夫ですけども、もしそうでなければ「何回言ったら分かるんだ!」「何回同じダメ出しさせているんだ」と、普通はなります(笑) そこで我を張って自ら道を閉ざせば、成長の道も閉ざされてしまう。ですから自分を良い環境に身を置きたいのであれば、出会う人出会う人に、自分をお導きになる観音様だと頭に入れておいた方が良いのですね。

今回のワンランク上の演技習得の心得の話、ご理解いただけましたでしょうか。この話は、どの仕事にも当てはまるのかもしれませんね。選り好みせず、今、目の前の仕事を全力でするのです。その際『今目の前の仕事は自分にとってどんな成長のためにあるのか?』と定義して取り組む事。これがワンランク上の習得法なのです。

最後に、演技はどうして自分の為にするものなのかをご説明をさせていただきます。

私の考える演技とは・・・・・

演技という技術は自分の感情を誘発させるためのもの

私たちの演技練習法では、身体動作から感情を誘発させる技術と言っております。

この技術は演技術の土台にあって、そこから組み立てられるものなのです。ですから、

演技によって自分の心を動かす

のですね。言いかえると、

演技は自分の心を動かす技術でもあるのです

その心が動いたありのままをお客様にお見せするだけなのです。

心が動けば伝わる。ここを踏まえればやがては、

「思えば伝わる」という究極の演技が出来上がるのです

ここを俳優として探究してみませんかというのが今回のお話です。ただ、この自分の心を動かす演技術は残念ながら、先ほども申し上げたとおり「見えない技術」なのです。ですので、この演技習得には上記の「演技は見えないものと心得よ」というのがないと掴めない不思議な技術なのです。見ても分からない、実際にやってみて掴む技術ばかりです。しかし、ここを知ることが実はとっても楽しい作業でもあるということをあまり知られていません。この楽しさをお教え出来れば良いのですが、文章の限界を感じます。もしよろしければ、練習風景の動画があります。良かったらそちらも併せて最後にご覧いただければと思います。30秒ほどの動画もあります。

如何ですか。この話を聞くと随分演技のイメージが違ってきたのではないでしょうか。演技というのは、自分の心を動かす技で、紛れもなく本物の情動を湧き上がらせる技術なのです。決して演技は嘘めいたものではないということがお分かりいただけたかと思います。

またこの演技は、とても崇高な技術だと私は思っております。

演技は今の社会に生きるための最重要スキル

ではないかとも思います。この演技を駆使すれば、感情のコントロールにも勿論一役買えますし、ここを科学的に証明していただければ、きっと色んな分野で活かせる技術でもあると確信しています。

演劇の分野にだけでなく、身体から動かして感情を誘発させるということだけにでもフォーカスして色々と研究していただければ、きっと教育や医療にもお役立ていただけるノウハウに繋がると確信しています。教育に関しましては、現在私どもも、0歳から15歳までを対象にした知育教室をしておりまして、今後も大きく取り組んでまいります。また、この技術を教育だけではなく、福祉や医療でも、もしもご関心がございましたら、お気軽にお声をかけていただければ嬉しく思います。

演劇がもっと身近にお感じいただければ・・・

最後までご覧いただきまして誠に有難うございました。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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