リアリティーのある演技は、例えば、自分が普段行っていることを忠実に再現できれば、それはリアリティのある演技になりうることが出来ます。
しかし、リアリティのある演技とは、一つ頭に入れておかなければならないことがあって、その演技をしようと思った時点で、リアリティーは失われるということを理解しなければならないのです。
これ少し難しいですよね。この説明はめっちゃ難しいのですけど・・・(笑)
普段の私たちの行動はほぼほぼ無意識に動いたりすることが出来ます。車の運転もそうですよね。友達と話しながらドライブしてたらいつの間にか到着してたってことは普通にあることです。
その他にも、私たちはオートパイロットモードで生きていることが多く、動機とはまた違った動きが出来るので、とても人間は素晴らしい器用な性質があるのです。
ここで、少し考えていただきたいのが、そのオートパイロットモードの行動を「するぞ!」と思ってやってますかというとどうでしょう??
やってませんよね(笑) それではオートではありませんよね。つまり無意識で動かせる領域なのです。
そしてここからがとても重要な話なのですが、
人間の動作の大半が無意識によるものから動いている
のです。このことが先ほどのリアリティーを失う演技の要因になっているのです。
つまり現実の私たちの動作は、手をこう動かそうとかこうして話そうとは思ってはいないのです。
自然にというか、勝手に動いているので、この時、演技でこう動かそうとか、こうして話そうとか考えるとそれだけで、リアリティーが失われてしまうのです。
この話は深いでしょ!
つまりこれを演技指導レベルで説明すると、自然に動作が行われているものは役の人物の動機から動いたもの。意図的に動作が行われているものは演技者の動機から動いたものと定義されるのです。
これを聞いて、こう思われる人がいるかもしれません。
思ってるだけなんだからバレないんじゃないですか?
と。しかし残念ですが、これはバレバレになります。何故なら、ここでも人間の本能的な部分の話になるのですが、
人間は、相手の動機を無意識に感じとることが出来る
という凄い能力があるのです。もちろん個人差がありますが、感覚の鋭い人は相当細かく相手の動機を読み取ることが出来るのです。
つまり、相手の動機を無意識に感じている訳ですから、おかしいと意識して感じるのではなく、
何か違和感があるな・・・
という程度で感じるわけなのです。そしてこの感覚が実はリアリティーを損なう大きな原因となってしまうのです。
普段の人との会話でも、胡散臭い人いるでしょ?それ・・・無意識に違和感を感じているのです(笑)
そういう違和感のある人の言うことを信じて聞く人がいるかというと・・・皆無ですよね(笑)
つまり、どこかリアリティーのない演技は作品の世界に誘うことはおろか、信用のおける存在にもなれないのです。
ですので、リアリティーのある演技は滅茶苦茶重要なのです。
そしてリアリティーのある演技は、役の人物の動機から動いたものでなければならず、役者の動機で行ったものはどうしても「うさん臭く」感じるのです(笑)
だから、人間は恥ずかしいのが伝わったり、緊張が伝わったり、気難しい空気が伝染したりするのです。凄い技術を私たちは普段から備えているのです。
それを演技に置き換えてする訳ですから、演技は難しいに決まっているのです。
人間は普段ほぼ無意識に動いています。その無意識を意識的に動かしていれば、その動かそうとする意図が伝わり、本来の無意識の動作で伝わる動作を妨げてしまうわけです。
もう難しすぎますね(笑)
でもこういうと分かりやすいかも知れません。
例えば、感情です。普段私たちは感情を出そうとしていますでしょうか?・・・もちろんそんなことはありませんよね。良い感情であればわざと出そうとすることもありますが、涙が出るような感情であったり、怒りが沸々と出てくるようなものは、誰しも込み上げてくるものです。つまり出そうと思ってなくても溢れ出てくるような感覚です。
ここで演技になった時、悲しいからと言って悲しい感情を出して泣いてしまったらどうでしょう???
おそらくですが、ああ悲しいから泣いている表現をしているんだなと、誰しもが感じるはずです。しかし、本当のリアリティーのある演技を身につけている人であれば、役の人物としての動機から動くことを念頭に置いていますので、泣くことを堪えるということを表現するのです。堪えているけれど、とめどなく涙が溢れ出てしまう。本人の意図とは反して・・・と、こういう表現になることが演技では求められるのです。ですから、どうすれば、人間は涙が出るのかとか感情が湧き上がるのかを俳優はその方法を知っておかなければならず、その方法を駆使して、尚且つ、役の人物の動機でそれを表すことが求められるのです。
このことを私たちの俳優養成講座では、
身体動作から感情を誘発させる技術
と言っています。これは、演技だけにはとどまらず、普段の感情コントロールにも大きくいかせる技術なので、多くの方々に知っていただきたい技術でもあるのです。
特に感情コントロールは現代社会の中では大きな鍵になるものでありますので、気持ちが沈みがちな方がこの方法を取りれいてくれたならば、素晴らしい効果が発揮されますので、是非この練習方法をお試しいただきたいとも思っています。
こういう演劇エクセサイズが社会に取り入れていただけることを切に願うのであります。
話は戻りますが、実は感情の出発点は、身体動作から始まっている訳なのです。こういう技術を分かって、演技練習に取り組まないといけないのですが・・・現状ではどうでしょう・・・
さて、こういう本物の演技を取得するためにこのリアリティーのある演技のお話をさせていただきました。
最後になりますが、次のページで、このことだけ、どうしても若い俳優志望者にお伝えさせていただきたいことがあります。