具体的な例を交えて、理論的にお話してみますね。

まず、あなたが誰かと会話をしているとします。この時、どんな時でも自分から話しかける時は、一番最初に、話をする前に何か発想を抱いたような「何か思い出した」「何か閃いた」「違う意識に行った」という表現を入れるようにするのです。

つまり、話すことが当たり前ではなく、「自分の思い着いた発想により話している」という普段の私たちの会話表現に繋がるからです。この時の表現が、息を吸うという動作になります。

何かを思い出した時、閃いた時、違う意識になった時、これらの心の動きがあった場合、人は大小の驚きが生じ、無意識に息を吸うので、そういう息の吸い方をすると観ている側の人も「何かを心の変化があったのだ」と無意識に感じるのですね。

この驚きのタイミングは、色々ありますが、例えば、相手の話を理解して自分がどう感じたかというところであります。つまり相手の言葉にある種の驚きが生じ、その時に無意識に息を吸っているということです。

相手の言葉に喜びのサプライズがあれば、その時の息の吸い方は笑顔になって息を吸っているということは容易に想像できるかと思います。この動作をイメージし何回も模倣すると、本当にそういう気持ちになったりするのですね。

これは体と心が連動していることが分かる素晴らしい気づきを得られる練習になります。このように、普段我々の無意識による動作を意識して練習すると、感情が湧き上がる感覚が掴めるようになるのです。

ですから、それを役の人物の動機に照らし合わせてみて、「相手のこの言葉で、驚いて喜ぶんだ」と決めて、その言葉が来た時に、息を吸うと決めれば、自然な感情表現が生まれるようになるのです。

私たちは誰もが常に心が動いていてその心の動きに則って話をしています。ですから、そういう心の動きを丁寧に表現できると、臨場感のある自然な演技表現が獲得されるわけです。

台詞は、話している内容や感情を伝えるツールではありません。台詞は話している言葉を使って自分の動機が伝わるツールなのです。

話し始めだからと言って、そこからいきなり役の人物の人生が始まっているわけではありません。物語上、そこから始まっているだけのことなのですよね。ですから、話し始める前の動機から表現しないと一番最初の台詞がリアリティのあるものとはなりえないのです。

そしてさらにいうと、そのような息をすることで「おそらくこの前はこういう状況だったのかもしれないな」と、

「お客様に想像していだける余地を作る」表現にも繋がっている

のですね。この「お客様に想像の余地がある表現」というのは、これも以前のブログで何回も出しておりますが、簡単に言うと

お客様は次の展開が読めない方が注意して話を聞いていただける

というわけで、つまりお客様の方から話に入っていただける状態になるのです。普段の会話でもそうですが、最後が何を言うのか大体分かる人の話は最後まで聞いてられないのですよね(笑) だから、この展開はどうなるのだろうと思わせる話し方って重要なのです。

そしてこのことは、こうも言えるわけです。それは…

のです。ここまで話すと、もう初心者の『域』を超えた話になってしまいましたね(笑) 

というように、話し出す時ではなく、心が動く動機から『息』を吸うことを心がければ、素敵な表現が出来ます。相手の台詞を受けてからの台詞の発し方もこの原理と同じで、違うところは、相手の話している内容のどこかの部分に気持ちが動くのですがその気持ちが動く時に『息』を吸うことなのです。

そして、このような動作を起こすことによって自然に感情のスイッチも入ってくるようになります。

ただ、この感情のスイッチは普段の動作の反復練習が必要です。役の人物の動機から出てくる息を何回も練習を重ねると、役の人物から湧き起こる感情が感覚的に分かってくるのです。これが役の人物から情動を教えてもらう感覚なのです。

こういう感覚でお芝居できるようになると自然と次々と感情が誘発されて、自分だけでなく相手の感情まで誘発される現象が起きるのです。

このようなことを知っていくと、今よりもっともっとお芝居の面白さ、素晴らしさがお分かりになるのだと思います。

お役立ていただければ……

また今回ご紹介しました みお を引き続き応援賜ります様よろしくお願いします‼

photographer soichoro kishimoto
photographer soichoro kishimoto

最後までご覧いただきましてありがとうございました。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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「《演劇ワンポイントレッスン⑦》 台詞の話し方」への3件のフィードバック

  1. お忙しいなか失礼致します。演技のお話の問い合わせでは無くごめんなさい。少し前に、井出美空さんのポストカードを送って戴いた者です。家に飾ったお写真をどちらにお返ししたら良いのかわからなくて、こちらにお問い合わせさせて頂いています。
    お写真のデータはありますが、どちらに送信致しましょうか?それともプリントした形で郵送にてお返ししたら宜しいのでしょうか?教えて戴ければと思います。クロライヒョンです。宜しくお願い申し上げます。

    1. グラキアリス さま

      おはようございます!!
      この度はとらちゃんの生物発見記録の
      くろらいひょんの絵のご応募
      誠に有難うございます。

      またいつも仲良くして下さいまして
      ありがとうございます。

      今からグラキアリス さまのところに
      メールをお送りしますので、
      そのメールの返信に
      飾っていただいたお写真とニックネームを
      書いてお送りいただけますでしょうか。

      よろしくお願いします。

      劇団ブルア
      さいとうつかさ

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