
只今、私さいとうが主催する演劇のワークショップ「いわゆるえんげきの会」では台本の読み方をお教えしています。
台本の読み方ってあるの?
って驚かれる方も多いかも知れません。
台本は役者各々で考えてくるものだと思われる方が殆どだと思います。
しかしながら、私が育ったプロの現場では、教わりはしなかったものの、台本を読む時の「こだわり」が先輩方には色々とあり、そこにはある共通した部分が多くありましたので、それらの考え方を自分に取り入れた結果、その読み方に注目されるようになりました。
その一つに、台本には全く書かれていないのに、誰もがなるほどと思える読み方をするので、注目が集まるのでした。
私自身は、自分の役の演技の答えは台本にはないと思っており、常に自分の心の中にあると、周りの人にお伝えしていました。
そして、この自分の演技の答えの導き方を色々な人にお教えするようになりました。
私の台本の読み方。それは、
台本を読むには技術がいる
ということ。
ここをご理解いただけないと、私の台本の読み方はご理解いただけないのです。
つまり役者目線でどのように役に対峙するか、このこだわりを出すための技術なのです。
その技術というのは、自分の中に一つの法則があり、
それを私は「芝居観」と呼んでいます
この芝居観を養えば、自ずと台本を楽しく読むことが出来ますということに繋がるのです。
自分の役をどう演じるか?
これを考えることが役者にとって至福の喜び。
ですが、その「どう演じるか」を本当に楽しんで実践しているのかと言われればどうでしょう。
現状は決してそうではない方も多いので、その役者のこだわりを伝授したくなったわけです。
そのこだわりを持つためには、まずは芝居観を養い、自分がお芝居に対してどのように取り組むのかという支柱を作ることがなによりも肝心だと思う訳なのです。
そこで今回は私の芝居観を養うための方法についてお話しさせていただければと思います。
ですが、最初にお伝えしたいことがありまして、それは何かと言いますと、この台本の読み方は必ず実践しないと自分のものにはならないということです。
ですので、参考程度にお読みいただけると幸いです。
まず、最初に芝居観を養うために、お芝居というのがどういうものかを理解しないといけません。
そこでお芝居の定義づけをします。
ここで言うお芝居は私のジャンルの新劇でお話しさせていただきますね。
最初に、①お芝居は芸術でなければなりません。
芸術というのはそれを見て、何かせ人の心を動かすもの。さらに言うと、人の成長に大きく影響を及ぼすものとします。
人の心を動かすということは、共感力を持っていただくことに繋がりますので、人の本来の本能的な繋がりを大切にするという意味合いが含まれます。
昨今では核家族から個人主義になり、団体の重要性が薄れているように思います。
しかしながら、人と人が協力できる環境は私たちにとって生きやすい社会になり、そこには共感性が何よりも欠かせません。
その共感性を養うものが芸術でありますので、そこをまず演劇でも定義付けたいのです。
次に②演劇は絵画のようにです。
劇場にはプロセニアム・アーチという舞台前に大きな額縁があります。
客席から見ると大きな絵画のようになっているというわけです。
シーンの一つひとつが当に絵画になるように。
そうすることでお客様の心により深い印象を持っていただく。
こうすることで、お客様の思いを大切にすることが求められます。
舞台機構で言うとまだまだあるのですが、今度は内容面での定義づけをします。
まず、お芝居というのは③劇的な要素が必ず存在します。
お芝居は主人公の葛藤を表現するものであって、葛藤を境に主人公の進む道が大きく変化するということです。
つまり主人公の葛藤が大きければ大きいほど、進む道は大きく変わり、180度変化するほどになれば、より劇的なシーンとなるということです。
悲劇であれば、最初がとても幸せで葛藤を境に奈落に突き落とされるような末路に。
また、喜劇であれば、どん底の生活から葛藤を境に大きな生きる喜びを含む希望を掴むといった道にとなるわけです。
そしてもう一つあるのが、
④ストーリーの展開性が意外な方がより、感情移入がしやすい
ということ。
これは人は驚いた方が、胸襟を開くので、演者と観客の打ち解け度具合が格段に上がりやすくなるのです。
これはサプライズ効果と同じですよね。
プレゼントを渡す時に、意外な方が感情が大きくなり、より共感性が増すのですね。
といった具合に、他にも、まだまだありますが、主にこうした、上記の4つの定義を視点に台本を読んでいくと、普通に読んでいる時と違って、格段に見え方が変わるのですね。
この視点を変える方法が役者の技術であって、ここを理解しない限り、なかなか台本を読み解くことは困難だったりするのです。
ここまで書くと、なんとなくお分かりいただけるかと思いますが、人は自分の視点でモノを考えるようになっていますので、定義づけして物事を考えることは実は非常に重要なのです。
これは普段の私たちの生活でもとても大切なことではないでしょうか。
相手の立場になってものを考えることが日々できれば、その人は多くの方々と良好な関係を築けることに繋がりますが、自分だけの見方で物事を考えるだけでは関係性において支障をきたすことは容易に想像できますよね。
自分が自然と一体になって、「空」のような状態になれば、それが最強ではありますが、なかなかそのような悟りの境地には到達できませんので(笑)
人間関係を考えるのであれば、このあたりをしっかりと踏まえて考えたいところであります。
最後に、これが最も言いたかったことですが、台本を読むことは、様々な視点で読むことが出来ます。
自分の役の立場。相手の役の立場。そして先ほど挙げた舞台機構や内容面での定義から見た視点もあります。
この立場を理解することはなかなか困難ではありますが、暫くこれら様々な視点で、取り組んでいくと、頭の中で勝手に紐づけて新しいアイデアが生まれたりするのです。
いわゆる「ひらめき」が起きるのです。
このひらめきはインスピレーションのことですが、実はこの演劇にはインスピレーションで生まれたものが極めて芸術性が高く、最も共感を生むアイデアだということが言いたいのです。
計算通りにお芝居を作っても芸術性は生まれません。
不完全ながらも調和が働くピース。
つまりインスピレーションが生まれた時に初めて劇場全体に大きな息吹が芽生えるのです。
この息吹がカタルシスとなって、人間の浄化を劇的に促します。
ここに演劇の醍醐味があると私はひそかに思っています。
これこそ和の精神です。
正しい台本の読み方は『和の精神に通づる』
ですので、多くの方々にこの読み方を実践で学んでいただきたい。
演劇ワークショップ「いわゆるえんげきの会」は毎月第3,4日曜日に兵庫県の西宮市で開催しています。
ご関心がございましたら、只今台本の読み方を練習してますので、是非お越しください。

さいとうつかさ
劇団ブルア 代表
劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。