心が楽しくなる方法はとてもシンプルです。

それは、

人のお役に立てることをすること

美味しいものを食べたり、素敵な人と共に過ごすことも勿論楽しく過ごせることですが、

自分が人のお役に立てた時の喜びは格別で、

笑顔にできる人になれたなら最高の気分になります。

舞台での俳優もそうではないでしょうか。

お客様に感動を

つまり自分の表現によって、感動し、共感を得ることで満足をしている。

劇場の万雷の拍手は、まさにそれの象徴で、この上ない幸せを感じます。

お金を頂けて幸せも分かち合える。俳優業はとても幸せな職業だと思います。

しかし、人の役に立ちたいがどうしても出来ない人がいる。やりたくても、出来ないと。

特に心が疲れて人との接点に不安を感じる人は、今私が申しあげたことはかえって苦痛になるだけなのかもしれません。

特に辛い思いをして生活されている方は、どうしても自分の心の中へ目が行きますので、それどころではないのかもしれません。

そこで、今回は演劇で少し変わったお話をさせて頂きたいなと思っています。

自分の感情をコントロールする方法

感情全てがコントロールできるわけがありませんが、ある程度感情をコントロールできる方法があると私は考えています。

大きく分けて二つのことをすれば、コントロールできるのではないかと。

その二つとは…

  1. 考え方の癖を変えることで感情を変えること
  2. 演技の練習で自然に感情をコントロールすること

です。

1の考え方の癖を変える方法は、習慣を変えることで悪い感情から良い感情に変えていくという方法です。

これは、とっても簡単ではありますが、なかなか習慣化するのが難しいのです。

出来るだけ良い方向に目を向ける癖をつけること

これは言葉から気をつけないといけないレベルで、

ネガティブな言葉を発しないために、ポジティブな言葉を言い続けて良い方に目を向ける習慣をつけること。

人間は見た方へ、または意識した方へ向かっていくものだと思っています。

つまり、もし仮に今、あなたがとっても辛い思いをしていたならば、それはあなたの目を向けてきたことが原因で今の状態にあるということなのです。

例えば、辛いことがあったら弱音を吐いて良いのだよとか、たまには愚痴を言わないととか、ネガティブなことを発しても良いという環境を作ってしまうと、その時の一時的な気持ちは治まるかもしれませんが、ネガティブな言葉が自分の心に刻印されて、そのネガティブになる延長線上の出来事に自ら向かっている状況を作ってしまうのです。

それと、これにはもう一つ意味があって、本当は今ある状況は自分が望んでいる状況なのかもしれないということなのですね。自分の意思ではなく、自分の潜在的に望んでいることが現状になって現れてしまっているのだということです。

こういうことを言うと、今とても苦しい思いをされてらっしゃる方は、とんでもないと思われるかもしれませんが、今の状況下でも自分にとって何か良いことがあるのではないかと考えてみると分かりやすいですね。その何か良いことがあるがために今の状況を手放さないということが、もしかしたらあるのではないかと考えるのですね。

これ以上ここでは深く書きませんが、今いるところは、自分の思い描いた世界の結果だと思えば、なるほどそうかもしれないなというのが私の今までの経験上での感想です。

ですから、悪いことを口にするということは悪い方へ目を向けているということですので、人間は見た方向に向かいますよということ。自転車の運転と同じで、見た方へ自然と身体が動き、そこへ行くのです。悪い方へ目が行くとネガティブな感情になるので、そうならないために良い方向に見る習慣をつけて、感情をコントロールしましょうということです。

次に、2ですが、私が今回一番申し上げたかったことです。

それが、

演技の練習で感情をコントロールすることが出来る

というものです。

感情の表現で俳優が練習する方法の一つ

身体動作から感情を誘発させる

という技術練習があります。

これは、身体のある動作が感情を動かすトリガーとなり自然に感情が湧き起るというとても不思議な技法です。

私たち俳優は感情表現をする時に、「感情を出そう」とする表現ではいけません。

俳優が劇中にこれをしてしまうと、

「私は今悲しんでます!」「私は今怒ってます‼」「私は今楽しんでいます!」

というわざとらしい俳優の動機が見えてしまって役の人物の動機が全く表せない状態になるので、

役の人物の動機を表すために、役の人物と同じ動機で動く身体の動きを再現して、自然と感情が湧き起っているといった感情を誘発させる高等技術が求められるのです。

つまり喜怒哀楽の全てには、その感情が動き出すための引き金(トリガー)があって、そのトリガーを何度も模倣することにより、徐々に感覚を掴んでいくという練習があるのです。

例えば、感情が動く時、どの感情であってもある共通した動作があるのをご存知でしょうか?

答えは、

「息を吸う」という無意識の動作

です。

これは、感情の前に驚くという動作があるので、その驚くという動作が息を吸うという身体動作になるわけです。

つまり、

息は全ての感情を動かすトリガーになっているのです

怒る時も悲しい時も笑う時も全てのトリガーになっているのです。

楽しい時の息の吸い方。悲しい時の息の吸い方がそれぞれにあり、それを模倣して何回も何回も練習して、徐々にその感覚を掴んでいくと、不思議に意図通りの感情が湧き起るような感覚になるのです。

信じられない話のようですが、このように感情を誘発させる表現をすると、自然と身体動作や言葉がひとりでに動き出し、身体もその感情通りに、セリフも自然と抑揚のついたものになるのですね。

この技術を普段でも使うことが出来るということなのです。

例えば、音楽も良いでしょう。

この音楽を聴けば元気が出るという風に決めておけば、それが一種の気持ちの引き金にはなるかと思います。しかし、音楽を聴いたところで気分が乗らない場合があるので、ここで少し神がかり的な不思議な力を入れるために身体動作から感情を誘発させるテクニックを使うのです。

つまり、音楽を聴き、ここの部分で喜びの息を大きくすると決めれば、より喜びの感情が誘発されるようになるのですね。

しかし、これは一回や二回でなるものではありません。何回も反復練習して感覚を呼び起こす作業がいるのです。ですので、一人ですると続かなくなる可能性があるので、こういった練習を仲間と出来るようになり、感覚が研ぎ澄まされるようになれば、すぐに気分転換が出来るようになります。

今は、息だけのお話でしたが、実は他にも感情を誘発させる身体動作のテクニックがあります。

今回の息の話は汎用性のある動作ですので、すぐにお試しできますし、効果もすぐに現れるという優れた動作になるので、是非お試し下さいね。

この息は普段無意識にしていますよね。苦しいからそろそろ吸おうとかしてないはずです(笑)

ですから、こういった無意識の動作で色々自分をコントロールさせることも出来るのです。

例えば、人の話を聞く時、息を止めて聞いてみて下さい。きっといつもより話の内容が頭に入ってきます。

何故そうなるかというと、人間真剣に考えている時は、息が止まっているからです。

それに嬉しいことがもう一つありまして、息を止めて聞くと話し手が喜ぶという得点もつきます(笑)

これはどういうことかというと、

息を止めて聞いていると「とっても集中して聞いてくれている」ということが話し手に無意識に伝わるからです。

不思議でしょ。

聞き上手は合いの手が上手いとかそういう感じで思われるかもしれませんが、一番の聞き上手は相手の話を息を止めて聞くだけで良いのです(笑)

この話をするとまた違う話になるのでこれくらいに(笑)

まとめると、感情をコントロールする場合はポジティブな感情の方が良いという話で言うと、まず、ネガティブな感情に行く癖を直すということ。それと、ネガティブな感情になった時に、感情の切替えをするためにポジティブな感情を誘発させるという演技術のご紹介をしました。

最後に、具体的に楽しくなる感情を誘発させる方法を。

まず、自分がウキウキするような音楽を聴きます、その時に想像力を働かしてここで楽しいという気持ちを爆発させるというイメージをしてみて下さい。その爆発させる時に思いっきり息を吸い込むのです。それに目を見開いて、口元は笑顔になれば、かなり楽しい気分が誘発されるようになります。

最初は、とってもバカバカしい作業で一回くらいでは効果が出ないのですが、これを何回練習していけば、

段々と顔つきから変わってきます‼

つまり、ネガティブなことを考えないような顔つきになるということです。

最後までご覧いただきましてありがとうございました。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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