普段の会話で一番気をつけたいことと言われれば、皆様それぞれ色んなご意見があるかと思われます。ですので、気をつけるという観点ではなく、こうすれば好感を持っていただきやすいですよというお話を致します。

言葉よりも動作の方が「伝わる」

会話で好感を持っていただくためにはどうすれば良いのか……?それは

お相手第一主義

の考え方で接するということです。私たちは関心を寄せてくださる方に関心を寄せます。そのために、必要なのが、

私はあなたに関心を寄せてますよ

という姿勢で臨むのですね。こうするとお相手は、

自分のことを優先してくれてるんだな

と感じるようになりますよね。このように、お感じ頂けるように会話に臨めば、好感を得られる確率は上がります。

それで、ここからがお芝居の話を交えますが、この方法は言葉ではなく、身体動作で表すことが何よりも大事なのですね。これを演技の観点で言うと、

言葉は「伝える」に適していますが「伝わる」にはあまり適していない

のです。

「伝わる」ためには動作で表すほうが良い

のです。

この理由は凄く説明が難しいのですが、人は会話の時に言葉を受け取ろうとするのではなく言葉の奥にある動機を受け取ろうとしますよね。例えば、誰かから説明を受けているとします。淡々と、相手が話している説明は意外に頭に入ってきやすいのですが、怒って感情的に説明されると説明の内容が入ってこなくなるってことありますよね(笑) 怒られながらの説明だと、内容よりも…

「怒ってるな~」、「怒らせてしまたな~」って

なりますよね(笑) この時パニックになって人の話が聞けなくなる人もいますよね。それは相手の動機を感じ取っているからです。怒鳴るというようなあからさまな表現であれば、感じ取るまでもありませんが、仮に静かに淡々と怒ってても、「言葉ではこう言ってるけど…裏では…」と無意識に感じ取ってしまうのですよね。そのような思惑がある時は当然ですが相手の話よりも動機の方が気になるのです。

では、無意識に感じ取っているのはどうやっているか?ですが、それが身体動作から感じ取っているということなのです。例えば、怒っている人は自分の情動が起こる前に「吸いたくない息を吸わされているような」息の吸い方をしています(笑) これは実際に目の前で実演すると簡単に「そんな感じあるある」とご理解いただけるのですが(笑) 文章だとなかなかこのあたりの説明が難しいですね(笑) まぁ、このあたりの説明をすると、話が長くなってしまうので、またあらためますが(笑) つまり、このように人間の情動全てに、無意識に動機が感じ取れる人間共通の身体動作があると思っていただければ分かりやすいですね。「この身体動作を使えば、殆どの方に無意識に伝わる」ということなのです。

では話を戻しますが、今回、相手に好感を持ってもらいたいと思うならば、この身体動作を覚えていただきたいのです。「好感を持ってもらうために、お相手を最優先にしている」という身体動作の表現とは、お相手が何かアクションを取ったら、どんな時でも『息を止めること』 ここでも息を止めるのか(笑) そう思われている方、いつもご覧いただきありがとうございます‼当分、「息を止める表現」シリーズをします(笑) 何故息を止めるのか?

それは、お相手の方に「細心の注意を払っていますよ」という表現になっているからなのです。

例えば、お相手が「話し出した時」「座った時」「立ちががった時」「誰かに話をし出した時」。このように全ての動きに対して『息を止める』のです。ただ、息を止めるだけだとお相手に気づかれにくいので、今回はもう少し高度な技術もご紹介します。それは…

自分が理解した時には息を思いっきり吸う

それだけか…(笑) これは、息を思いっきり吸うと、自然にその前は息を止めていたんだなと分かりやすくなるのです。つまり「さっきまで息を止めてましたよ」という補足動作です(笑) この技術を身につけると、俳優としてかなり将来有望となるのではないでしょうか(笑)

どうして、このようにするのかというと、相手の一つ一つの動作に「改まる」という気持ちが込められているからです。「どうぞ、お座り下さい」と言われたら(あ、こちらに座るのですね)「失礼します」と応える。というシーンでありましたら、「どうぞ、お座りください」と言われた時の(ど)のところで既に息を止めて、(あ、こちらに座るのですね)と理解した時点で息を吸い、それから「失礼します」と。(息を止めるところは、話し出しだけではなく、部屋に案内された時の身振り手振りでも反応して良いです)

細かいでしょ(笑)

これくらいしないとダメなのです。人間って無意識で、こんな細かいところまで感じているのです。この時、「どうぞ、お座り下さい」と言われた時に、もし仮に息を吸わずに「失礼します」と言って座ったら、「あなたに言われなくても座りますよ。椅子があるのだから」というように思われる可能性もあるのです(笑) つまり、自分が言ったことを当然のように聞かれたと思ってしまう怖れがあるのです。こういう無意識な動作をしてしまうと、いくら素晴らしい敬語を駆使しても全て逆効果に取られてしまいます。

慇懃無礼だな(笑)

と本当に上辺だけになってしまうのです。ですから、

「相手の動き出しに息を止めて、理解した時に思いっきり息を吸う」

というのをこれから意識して取り組まれれば、お相手は、自分の対応に真摯に向き合って下さっていると好感を持つようになるのです。

もう一度、申し上げます。

「お相手が話し出したら、息を止める。話が理解出来たら、息を思いっきり吸う」

「お相手が、動き出したらそれに注視するかのように、息を止める。動いた理由が分かれば息を分かりやすく吸う」

こうすることで、お相手が自分のことを大切に感じていただける。ちょっとした動作のホスピタリティなのです。

ただ、この話をするとたまにこういうことをお尋ねになる方がいらっしゃいます。『その時、息を吸ったは良いけど、吐く時はどうすれば良いの?』と。吐く時も、実はこんな表現が出来るのです。

「納得しました」または「ありがとうございます」という表現になる。

あらたまった時は、息を静かに吐く。お友達の時は、オーバー目に吐いても問題はありません(笑) 「納得」は分かりますけど、「ありがとうございました」は何故そうなるの?? その答えはお辞儀をした時に分かります。お辞儀をする時に、吸う人はいないからです(笑) 心から感謝する人は、特に全部息を吐きだすことが望ましいのです。

その方が、誠心誠意を伝えているということが「伝わる」のです。精いっぱいとか言う時も、息のないところで言わないと精一杯に聞こえないのです。息をたっぷり吸って「精一杯です!」と言っても、

まだまだ余力あるだろ

と相手は感じます(笑)

というように、本来、このような動作は心から動いていれば自然に動くことではあるのですが、無意識の動作は予期せぬところに自分の意図とは違ったものになることもあるので、人間関係の思い方は「言葉よりも動作に出るものですよ」ということを演技の観点から申しあげたかった次第でございます。

最後までご覧いただきましてありがとうございました。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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