
入門にしてはかなり高度な内容の動作練習なのですが、
演技の魅力を最初にお伝えした方が覚え甲斐がありますよね。
ですので、最初はこういうこともできるんだと頭に入れておくだけでも良いです。
まず、
目は口程に物を言う
とよく言われます。
お芝居では、
目は口以上に物を言う(笑)
ということを覚えておいてください。
それだけ、視線の表現は言葉で表すよりも強烈なインパクトを与えるのです。
そして、この方法は、舞台仕様の方法ではありますが、
普段の私たちの会話でもたくさん使えますので、
是非普段から意識して使ってみて下されば、
目は口以上に物を言う技術を習得できる
ようになります。
では早速その方法を
相手の話を真剣に聞く時の視線
これ滅茶苦茶重要です(笑)
普段の生活の中で、あなたが一番見られている時ってどのような時かご存知ですか?
それは、会話している時、相手があなたに話しかけている時です。
勿論、気になる人を目で追っている人もいますが、それは眺めているというレベルですよね。
何かの情報を得ようとしている訳ではありません。
しかし、相手があなたと話している時は別(笑)
相手は、自分の話が理解できているかどうかを見るために、あなたの動向を注意深く見ています。
ですので、その注意深く見ている時に、相手を安心させる動向をすれば、相手は当然喜びます。
例えば、相手に真剣に話している時、自分の言ってることを分かってもらいたいと誰もが思いますよね。
分かってもらえなくても良いって言ってても分かってもらえた方が良いですよね(笑)
ですから、相手に分かってもらえている動向をしてもらえれば、とても安心できますよね。
これは不思議なことに、言葉で理解しましたと言われても「なんか腑に落ちない」というものがあるのですね。
でも、自分が話している時に「この人、真剣に聞いてくれているな」というような動向が見受けられたら、理解してもらえたと素直に感じるのですね。
つまり、人間は相手の言葉の内容よりも相手の動機に注目している場合が殆どなのですね。
口では色々言えても、動機は注視すると表れてくるものです。それを相手は話している段階で、相手の聞き方を注意深く見ているのです。
ということは、
あなたの言うことをしっかり聞いてます‼
という動作をすれば、相手は安心できるわけです。
その安心のさせ方をお教えします(笑)
息を止めてどこか一点を見つめて聞く
これで、相手は安心して話が出来るようになります。
人は集中している時、極力動きがなくなります。
出来るだけ、聞くことに集中したいからです。
ここで息を止めるのがポイントで、息を止めると身体の動きも止まるからより聞ける体制を自然に作っているのです。
そして目線を一点に集中させる原理も同じです。動きを止めるからです。
こうすることで、相手は無意識に「自分の話を最優先で聞いてくれているな」と感じるのです。
この後に、「分かった」と言ってあげると、
相手は心底、分かってくれたんだと感じるわけです。
これだけで良いんです(笑)
これだけで、真剣に聞いているという仕草が出来ているのです。
しかし、こんな簡単なことでしたら誰でもできますよね。
演技ってそんなに簡単に出来ちゃうんだと(笑)
ですので、ここから応用編を(笑)
相手をより一段と安心させる話の聞き方(応用編)
息を止めて、一点を見つめて聞いている時に、
相手の話に展開があれば、それに合わせて別の違うところに目をやり、それからまた一点を見つめる
これは、相手にとってとっても嬉しさ倍増の仕草なのです(笑)
真剣に聞いてもらえてるだけではなく、自分の話に想いを巡らせてくれている‼
と感じるのです。
こうして、話の展開ごとに目線を変えて一点を見つめている仕草を見ると
相手はもう大満足ですね‼(笑)
仮に理解してもらえなくても、真剣に話を聞き考えて下さったという誠意が見えるので、
結果がどうであれ、満足できるのです。
ですから、例えば、断らなければいけないと最初から分かっている話であっても、このように相手に対してお話を聞いてあげると、断られたとしても、
悪い気はしない
のです。
これが本来の丁重な断り方ですね。
人間関係はとても大切です。断り方ひとつで、関係の糸が切れてしまう場合は結構あります。
その時に、真剣に聞いてお断りするという『おもてなし』の精神は必要ですよね。
ただ、これを聞いた時に、
『そんなテクニックで聞いてるふりをしてるなんて相手に失礼じゃないですか』
と思われる方もいるかもしれませんね(笑)
しかしこのテクニックは何も相手に見せるためのものだけではないのです。
こういう仕草、動作をすることで『本当に真剣に話がすっと入ってくるようになる』
のです。
私たちは、他人の話を真剣に行く時、意識的に集中して聞きますが、
例え集中しても聞けない時は聞けない時ってありますよね。
例えば、同じ話を何回もされると、何回もされているので、「ああ、またこの話って」なるのですね(笑)
そうすると、いつもとは少し違ったニュアンスの言葉を入れられても、それを気に留めることもなくスルーすることって結構あるのです(笑)
こういう時に限って、聞いてなかったことが仇になり叱られてしまうってことは、人生の中で何度か皆様もご経験されていると思います。
本人は真剣に聞こうと思ってます‼でも人間ですから、抜ける時は抜ける‼(笑)
ですから、強い意識で集中しようと思っても気合いだと言っても、出来ないことは出来ないこともあるのですね。
でも、この先ほどの動作を実践して慣れてくると
自然と他人の話をしっかりと聞けるとようになるのです。
これは、身体の動作から無意識に動かしている能力があるのではと思えるのです。
こうすれば、自然と、普通に相手の内容が入ってきやすくなるのです。
しかし、それは一回や二回の練習ではなりません。
身体動作で何回も反復して、そうして得られた段々と理解していく流れと身体の動きがマッチングしていくような感覚がそうさせているように思います。
演技入門の話ではすでになくなっているくらい難しい内容になりましたね(笑)
ですから演技というのはこう思ってください。
演技とは観客に見せるだけの技術だけではなく、自分のあらゆる能力を引き出す技術でもある
これが一番言いたかったのです。
今回は視線の話を一つだけしか出しませんでしたが、
他にもたくさんあるのです。
また、舞台は大小さまざまですのので、息を止めて一点を見るだけという演技では、大きい劇場では通用しませんので、そのやり方にも様々な方法はあります。
例えば、大きな劇場で、演じるのであれば、敢えて最初に動きをつけて『止まった』という動作を際立たせるといった方法を取ります。そうすることで、遠くからご覧になられている観客にも、『止まっているということを印象付ける』手法もあるのです。息も止めていると分かるように、その前にしっかりと息を吸っている動作をみせ、それから止めると息を止めているのが表現が安易に伝わるのです。
劇場ではこういったテクニックを多様に使いますが、まずは普段の生活でもこういう練習をしていますと他人の話をしっかりと聞けて、なおかつ誰からも慕われる素晴らしい技術になりますので、是非お試し頂ければと思います。
最後までご覧くださいましてありがとうございました。

劇団Blue Earth Theater Company代表
さいとうつかさ
劇団道化座に14年間所属し日本全国、海外で公演。現在は役者の勉強会「いわゆるえんげきの会」と当劇団の代表を務めております。ステージ出演回数は400回以上と実践で培った演出と演技指導が強み。劇団以外でも、演技指導、演劇ワークショップを行なう。スタニスラフスキーシステムを独自にアレンジした実践型メゾッド『ゆるえんメソッド』は今までにはない演技練習法として支持を得ております。特長は「ダメ出しではなく褒め出し」「自分を変えないで本来の自分をみつける」という考えで、演技向上だけではなく「自信を深める」演技レッスンを行なっております。
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