
私は若い頃から演劇に違和感がありました。
じゃあ、何故してるんだといういうことですが…(笑)
それは、その思いがずっとあったので、自分の思う通りの演劇を作ってみたいなと思ったのが、劇団ブルアを作った経緯でもあります。
まず、若い方々に演技の基礎をしっかりと持っていただき、舞台上の所作を徹底して、表現美を追究する環境をということで、実践の演技をお教えしてます。
演技というのは一人前になるのも10年くらいは普通にかかりますし、深みが求められます。
ですが、今、演劇の舞台でこのことをしっかりと理解している人は残念ながら少ないように思います。
何故そのことが言えるかというと、それは・・・・・・
今の演劇はほぼ間違いなく、需要と供給のバランスが逆さまになっているからです。
これはどういうことかと言いますと、簡単に言えば、舞台を観たい人よりも舞台に立ちたい人の方が多いからということ。
このおかしな現象が起きているから違和感を感じているのです。
ですのでここの問題を解決できれば、私は演劇がもっと元気になるのではないかと真剣に考えているのです。
ではこの問題をどのように解決できるのでしょう?
それは、舞台の質を上げていくしか方法がないように思います。
昨今では、観劇料金が5000円以上する所もたくさん出てきました。
この頃の物価高から考えると止むを得ないことは重々承知しているのですが、このチケット料金の高騰は明らかに今の事情を踏まえると高いハードルのようにも感じます。
勿論、芸術に価値はつけられませんが、それでも、明らかに芸術的な要素が欠如した作品も中にはあって、そのような理由からもあってチケットが高すぎると思う人はやっぱり多いと思うんです。
お客様の観劇に際しましてはチケットを買うだけでなく、わざわざスケジュールを空けて、時間を作って来てくださっている。
それに交通費もあるのです。
お客様はチケット料金だけの金額だけでなく、色々なコストがかかって劇場に来られる。
そう考えると、それ以上の価値を提供することが求められて本来は当然なのです。
商売で考えるのはどうかとは思いますが、例えば品物であれば、良い商品を作ってらっしゃるところは当然、品質だけでなくコストも削減して、出来るだけカスタマーにリーズナブルな価格を提供するといった相当な企業努力をしていらっしゃいますよね。
それは、私たち演劇の世界でもやっぱり必要だと思うのです。
演劇で一番大切なのは何でしょう?
やはり役者という人間力ではないでしょうか。
こんなことを私が言うのも畏れ多いことではありますが、やっぱり舞台に上がるなら舞台に上がるに相応しい方が上がるのが普通のことだと思います。
その舞台に上がる人というのは、舞台で輝ける技術をお持ちの方でなければならないと思うのです。
それが演技ということになるのですが、このおかしな現象によって、演技とはどういうものかということを知らずに舞台に上がっている方がいる現状があるように思えます。
もちろん、これは私たちにとっても強い戒めであります。
斯く言う私もまだまだ道半ばの人間で、演技の何たるかはまだまだ知っているということではございません。
ですので、これは誰かを否定しようとかそういうものでは全くありません。
このことが欠如するとおそらく演劇は元気にならないと思い、畏れながら発信させていただいた次第でございます。
では、私の思う俳優とは?・・・ですが、
それは芝居観をしっかりと持つ
ということ。
自分の指針で演劇に対峙し向き合うことでインスピレーションを常に獲得しやすい状態を作れる人を指しています。
日々の演技練習をコツコツ積み重ねることにより、より洗練された稽古の取組みが出来るようになるのです。
演技には「観客に伝わる技術」と「自分の心を動かせる技術」とがあります。
前述のものは所作に当たり、セリフ表現や身体動作表現から、お客様の心に伝わる技術で、
「こう動けば、お客様にこうお感じいただける」
というものがあるのです。
また動作だけではなく舞台機構を活かした位置取りでも表現出来たりというのもあり、このような観客にお見せする表現技術だけでも膨大にあるのですが、そういった「見えない演技」を若いうちから知ることがとてもとても重要なのです。
若い人がそういった技術が重要には思えない、または知らないという現状なのは、今や、そのような「見えない演技」をお教えしているところが少ないのが主な原因のように思います。
ただ、こちらの演技は所作をしっかりと覚えて反復練習していけば段々と自分の引き出しとして、使えるようになるかと思いますので、それほど難しいものではありません。
ですが、後述したもう一つの演技「自分の心を動かせる技術」はとても難しく、何故難しいのかというと、自分と向き合い自分の感覚を研ぎ澄ます作業になるからです。
自分が役の人物と同じ境遇のようにお客様にお見せするには、役の人物のように心を動かせる必要がどうしても必要になるのです。
普段の私たちであれば、同情することは出来ても、人の立場になって物事を考え、心震わせることは難しいですよね。
ですが俳優はそこをしっかりとコントロールをして、役の人物の感情を自分の感情として心を動かす必要があるのです。
ここの心を動かすことの認識が間違っている方が多く、感情をコントロールしようとするといった間違った演技をなさっている方も残念ながらお見受けします。
本来の感情というものは、自分ではコントロールできないものが殆どで、寧ろ自分がコントロールできるのは、その感情を必死に抑え込もうとする動機であるべきなのですね。
涙が自然と溢れ出てくるからそれを必死にこらえようとしているということです。
喜怒哀楽全てにおいてそうなのです。
この演技修得が実は必要であって、それを理解して舞台に立っている人はどれくらいおられるのか・・・・・・
そういうのが今の演劇への違和感に繋がっているのです。
演技は技術です。
ですからその技術をまず身につけることが大切なことではないでしょうか。
自分なりにその演技術を試行錯誤することも大事ですが、舞台の所作はやはり実戦で培ったものでなければ、なかなか演技修得は叶いません。
毎日のように舞台に立てる環境であればまだしも、年2,3回の出演であれば、そういった演技と出会うことはまずありません。
何故なら、演技というのは「見えない技術」だからです。
演技を学ばれている方の共通点は、もっと早くから学べば良かったということです。
ですが、私からするとそれにも違和感があって、その人その人が丁度、その時期に学んだ方が良いですよというタイミングで来られているのだと思います。
ですので、私は演技を修得するのに早い遅いはなく、今、学びたいと思えたからこそが大切なのであって、そういう自分のタイミングで出会えることが、最高に良い自分の魅力を引き出してくれるきっかけなのだと私自身は確信しております。
人の魅力は、全てにおいて自らの経験からによって滲み出てくるもの。
ですから、今までの経験があったからこそ、今の自分があるのですよね。
その自分が更なる魅力的な人間に進化しようとしている訳ですから、是非楽しんで進化していただきたいのです。
これも自分を信じる考え方です。
演技を学んでいると必ずぶつかるのは、
自分を信じるということ
なのです。
自分を信じるというのは口では簡単に言えますが、それを身体にまで染み込ませるのは本当に難しいのです。
身体で自分を信じることが出来るから舞台で魅力的な人になれるのです。
演技修得は自分を信じる作業。
ですから、自信を取り戻したい方にもこの演技練習というのはとても重要になってくるのです。
嘘みたいな話ですけど、本当の俳優は自信に満ち溢れた存在であり、それは一貫した練習方法で為されます。
俳優になるということはそういうことだと思います。
もしもこの話に共感して下さったら、是非私たちと一緒に俳優養成講座で学びませんか?
お問合せ、見学お待ちしております。
目からウロコの演技レッスンになることをお約束します。

さいとうつかさ
劇団ブルア 代表
劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。さらに、自身のBlog『さいとうつかさの演技力会話力Blog』は1000万PVを超え、多くの方々から支持を得ております。