演劇は違う人になれるから面白い。

まるで違う人生を歩めていてその疑似体験が出来ているかのようで面白いということはあります。

ただ、演技をする場合において、この考えではなかなか上手く行かなかったりします。

それが表題の通り

役の人物を介して自分を表現する

ということ。

つまり、飽くまでも違う人ではなくて

自分自身であることが大切だからであります。

違う人になろうとすると、違う人になろうとする動機がどうしても出てきてしまうので、

動機は無意識に観客に感じられてしまうので「あの人お芝居お芝居してるよね!」ってすぐにばれてしまうのです。

バレるだけなら良いのですが、そういう演技を見てしまうとなかなか肝心の作品の世界に入り込めなくなってしまうのですね。

ですので、演技は飽くまでも自分自身として表現することに徹することがとっても大切なのです。

演技を追究していくためには自分自身を深く掘り下げていくのですが、そうしていくと役の人物と自分の共通するところがみえてくる。

その共通する部分がとても大切で、これが実は、人間すべての心の奥底にあり、それを集合的無意識と心理学者ユングは言っておられます。

その心の奥底にあるものを表現し、劇場全体を共感させ、心の浄化を促していくのです。

この心の奥底にある集合的無意識の中のものは、当然ですが、無意識なので私たちには分かりません。だから、分からないものを引っ張り出して表現することは出来ませんよね。

ではどうすれば、その心の奥底にある共通したものを引き出し表現するのかというと、役の人物のことを考え抜きその考え抜いた動機からくる動きを模倣したりすると時にふとアイデアが下りてきたりするのです。

これは当に神がかり的なことで、こういうひらめき、つまり自分の力以外のところで何かが働いているのですね。

私たちはこれを他力が働いていると言います。

他力とは阿弥陀如来のお力。

そういう崇高なお力を味方に出来るからこそ共感を得られる演技と成し得るのです。

ですから演技はとても崇高な業だと思っています。

世の中で、演技という言葉を聞くと……

例えば、

「あの人、普段演技してるよね?」

という様に、まるで演技は嘘のような扱い方をされていますが、上記のことがご理解いただければ決してそういうものではないということがお分かりになるはずです。

しかし、そういうことが言われているということは演技に対して誤解されている人が多いということなのですね。

実際に今演劇をしている方の中にもこのように思われている方は多いのかなとも思います。

本当の演技とは人の心を動かすとても崇高な技術です。その技術を使って人を満足させる俳優はとても素晴らしい職業です。

ですので、今実際に演劇をされておられる方にはこのことをまず頭の片隅にでもおいていただけるだけで、今の演劇の環境はずいぶんと変わることだと思ってます。

最後までご覧いただきまして誠に有難うございました。

末尾になりましたが本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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