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演劇を教えている現場でのこと。

演劇台本は劇的な要素が必ず起こるので、普通の出来事が展開されることは有り得ないと指導時にお教えしています。

ですので、物語の展開、登場人物の会話の展開には必ず、普通とは違う転換点や、普通に話が流れていても、途中、流れが変わるポイントが必ずあります。

会話ひとつをとってもそうです。

例えば、登場人物Aが登場人物Bに話しかけているとします。

そのAが話している内容に、Bが応えるのですが、その応える内容は

普通であればこんな応え方しないよね?

というものが演劇台本には必ずあるということなのです。

この状況で、この立場の方ならこのように応えるはず

というような、普通では考えられない応え方を、台本上ではしている。

といったことがあるのです。

ですが、演劇ワークショップを受講なさってる方の中で、台本をスラスラ読めてしまって、あんまりひっからないというご意見を頂戴することがあります。

それは、話の展開をすんなり理解するあまりに、

ということになっているのかもしれません。

ですが、これは、役者あるあるなんですよね。 

普通に考えたらこう答えるのに、なんでこういう風に受け答えしているんだろう…

言われてみればそれに気がつくというものです。

しかし、こういうことに気がつかなければ本当はダメなのです。

もしそういうことに引っかからずに普通に読んだ解釈で演技をすればどうなるのかと言いますと、

のです。

つまり、そのような演技をしていると、観客はお芝居の世界に生きている人物とは捉えず、このお芝居はこういう話なんですよと説明している人に見えるのです。

このような芝居をしていることを

と言います。

役者は台本を見ているので、結末が分かってしまっているのです。

ですが本来のリアルに生きている私たちは、この先どうなるかは誰にも分からないものですよね。

ですから、そういう先の見えない行動をしているのが普通なのにもかかわらず、次の展開が分かっている芝居行動を無意識に行ってしまうのです。

ですから、そのような演技を観るお客様からすれば、何かリアリティーを感じない、演じている役者の動機のようなものが見えて、純粋に作品の世界に入り込めなくなるのです。

純粋に物語の世界に入っていただくためには、お客様がこの作品に対してどのように観るのかという感覚を大切にして作品作りをすることが最も肝心なことなのです。

そして、そのお客様の見る感覚と一番近い感覚は、役者の一番最初に台本を読んだ時の感覚ですので、台本は初見の読んだ時の感覚が最も大切なのです。

初見はまず話の大筋の内容だけ理解するというのは、あまりお薦めできません。

初見で読んだ時の感覚は出来るだけ、記憶に頼らず、ノートに取って、常に見返すくらいが丁度良いのです。

常に一番最初の感覚をもって稽古に挑めば、間違いなく観客に共感していただけることでしょう。

最初に読んだ感覚を研ぎ澄ませれば、必ず、たくさんのところで引っかかることが出来ますから。

何故なら、台本を最初に読んだ時は、この話が自分にとって面白いかどうかも分からないのですから。

どこが面白いんだろうとという目付で話の展開を見ていけば、普通とは少し違ったものが必ず引っ掛かってくるでしょう。

ましてや、それが疑いの眼差しで読んでいけば、普通の話の展開ではない疑問点が必ず現われます。

そういう風に視点を変えることが何よりも自分の芝居観を養うことに繋がるので、このことを是非覚えていただければ幸いです。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。さらに、自身のBlog『さいとうつかさの演技力会話力Blog』は1000万PVを超え、多くの方々から支持を得ております。

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