自分のことを大切にすると行動力が上がる

私のとある演劇ワークショップに今まで演劇をしたことがない女性が来られた話をさせていただきます。その方は、私たちが行っている演技方法「スタニスラフスキー・メソッド」に共感して参加されました。彼女は、闘病生活を送っていて、会社を辞めて治療に専念する傍ら、私たちの門を叩いてくれました。

「私は、自分の思う通りに生きてみたい」

この言葉が、私の心に刺さりました。人は死の恐怖に直面すると生きることの意味を知るのか・・・ そのあたりはよく分からないのですが、彼女の行動力は本当に素晴らしいものがあります。演技の練習は体力勝負なところもあるので、とても心配なのですが、それでも自分のできる範囲でなされている。その姿がとても眩しく、こちらとしても自然と熱が入ります。

そして、練習を重ねてきたある日。

『身体を動かして感情を誘発させる』

この練習をしていた時に、彼女は急に涙を流しました。そして・・・

「今、初めて分かりました。今ようやく見えたような気がします」

そう彼女は言って、「今まで何をしてきたんだろう」と言葉を続けました。私はその彼女の涙を見て、この方は今まで相当な辛い思いをされたんだなと初めて知りました。身体を動かして感情を誘発する練習が彼女の琴線に触れて吐露する想い。それが周りの参加者に伝わる。涙を流しながら練習をともに出来たこと。これは今でも大切な思い出です。どうして辛いか分かってあげられないのですが、寄り添うことが出来たのはせめてもの救いでした。

彼女が言ったその言葉

今、初めて分かった。

これは『初めて、自分の心の声が聞けた』ということではないでしょうか。

今、ようやく見えてたような気がする。

これは『私が今、何がしたかったのかが分かったような気がする』ということではないでしょうか。

そのあたりは定かではありません。でも、彼女の中で、自分自身を受け入れて、その傷を癒し、そこから前を見た。そのように見えました。

「自分を置き去りにしないで」

そういうことを申し上げて、感極まる方々は今までも多くおられましたが、どうしてその言葉がその方たちの心に響いたのかは今まで分かりませんでした。

でも、彼女のその言葉でそういうことなのか・・・と

「教えるということ」は『教わるということ』

私は今のこの仕事に感謝しました。自分の心には細心の注意を。

自分の心に真心のこもった手紙を出してあげていただければ。そう願います。

最後までご覧くださいまして、ありがとうございます。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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