今回はテクニカルな話をします。

これは劇団員の横顔のスケッチですが、私たちはこのような稽古をしています。

まず横に向きになって首を上げ下げしているのを、前から演技練習する人に見てもらいます。

例えば、首をゆっくりと上げたら、あなたは、

「どういう印象を持ちますか?」

という質問をします。

この時、大抵の方が「う~ん……」となります。

その時に、

「前方の見えるものに心奪われているっていう感覚に見える人っていますか?」って聞くと

「そう見えます‼」っていう人が出てくるのです。

そうすると、次に私はこうお伝えするのですね。

『そう見えたのであれば、あなたはこうして首を上げることによって見ているものに心が奪われているという表現が出来るようになりますよ』

と。

このような感覚の持ち主だからこそ、その表現が出来るということなのです。

勿論、これはすぐにできるわけではありませんが、何回か練習していくうちに、

『わぁ!心奪われてる時ってこんな感じになるよね‼」って

不思議と身体の感覚から感情を教えてくれるような不思議な感覚が経験できるようになるのです。

この時に、ほっぺの奥の方が痺れる感覚であったり、頭の後ろらへんがジーンときたりする人もいます。

そしてもっと不思議なことを言うと、この痺れるような感覚が出ている表現者を見ていると、

「心が動いている」ように見えるのです。

人によっては痺れる感覚から自然と目を輝かせる人もいます。

このような自然に湧き上がる情動は、観客に無意識に伝わるのです。

科学的根拠はありませんが、誰かこれを実験して欲しいくらいです(笑)

お客さんがジーンときたときは演技者もジーンときている

のですね。こういう感覚が無意識に伝わるから劇場全体が共感し一つになるということなのです。

このように、動作を実際に見てみて、自分にはこう見えるということをまず知るということが大切です。

そうしていくと、これまた不思議なことですが、ちょっとした動作の動きで、

「今のはこう見えるな」「今のは使えるな」とか

意識するだけで見えてくるようになるのですよ。

面白いでしょ(笑)

このような表現を覚えると、実はとっても印象度が上がります。

あの時のシーンが好きだな…

ってなるのです。

それは、大抵ですが、

お客様に共感頂けたところ

なのですね。

ですから、この印象度の上がる演技の時に、

「奇麗に見える姿勢」を覚えるとこれが武器になるのです。

これは普段でも使えますよ(笑)

女性が奇麗に見える動作や男性が魅力的に見える動作

これを覚えることも演技者として必要になります。

写真のように静止した時よりも動いている時の

流動美

の方が圧倒的に印象度が上がります。

何故なら、

流動美の方がふとした瞬間にしか見られない貴重なものだから

これを知っているか知らないかで俳優の印象度は大きく変わります。

しかも奇麗に魅せる動作は人によって違うのです。

首の角度や、姿勢や足の位置は人によって違うのです。

そういう自分にしかできない演技を身につけるのは実は結構面白いのです

演劇って面白いんすよ。

奇麗に魅せるなら、断然動きですから‼(笑)

最後に、真面目な話を(笑)

先ほどの首を上げる動作ですが、

あれは、遠くを見るという芝居の時に効果的なのですよ。

例えば、

どちらかが片思いの男女のシーン。お互いが肩を並べて砂浜に座っている。そして、沈んでいく夕陽を女性が眺めている。その横で男性が女性の横顔を見ている。

書いててこっぱずかしくなりますが…(笑)

どちらが片思いかって、これだけで分かりますよね。

こういうシーンって思い描くことは簡単ですよね。

このようにふとした仕草が、とても印象に残るという経験はリアルで誰にでもあるのではないでしょうか?

お芝居はそれをデフォルメするのです。

その時に、首を少し上げた女性の横顔がとても印象に残ったならば最高の演技ですよね。

実は、女性の首を少し上げる姿勢は奇麗に魅せる一つのポイントでもあるのです。

ですので、状況も遠くを見ているからばっちり分かるし、奇麗に見えるし、印象度も上がる。

一石三鳥の表現が出来るのです(笑)

最後も少し茶化してしまいましたが、こういうことを書くのはちょっと恥ずかしかったので、ご勘弁を‼

最後までご覧いただきましてありがとうございました。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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